AIには案を3つ出させる——1つ目で決めず、並べて選ぶ
AI / Research Digest

AIには案を3つ出させる——1つ目で決めず、並べて選ぶ

AIに頼むと案が1つだけ返ってきて、そのイマイチな案を延々と直してしまう。最初から「違う案を3つ、長所短所つきで」と頼むと、並べて選べるようになります。OpenAIの公式ガイドと研究をもとに、今日試せる頼み方をまとめました。

「企画を考えて」「告知文を書いて」とAIに頼む。返ってくるのは、たいてい1つの案です。

読むと、悪くはない。でも、どこかしっくり来ない。

そのまま、その1案をああでもないと直し続ける。気づけば30分。最初の案に縛られたまま、時間だけが過ぎていきます。

なぜ「まず複数」なのか

コツはひとつです。最初の1案で決めない。先に、方向の違う案をまとめて出させる。

理由はシンプルです。案が1つしかないと、それが良いか悪いか、比べる相手がいません。だから判断できず、その1案を延々といじることになります。

OpenAIの公式ガイドも、同じことをすすめています。選択肢がほしいなら、そう言えばいい、と。「このレポートの見せ方を2通り出して」のように、一言足すだけです。

研究の裏づけもあります。AIの国際会議ICLR 2023で、Googleの研究者が報告した「自己整合性(self-consistency)」です。

この研究は、AIに1本道の答えだけを出させるのではなく、複数の考え方を出させて、いちばん食い違いの少ない答えを選ぶ方法を試しました。算数の文章題(GSM8K)では、正答率が17.9%向上したと報告されています。

ただし、これは答えが1つに決まる問題での結果です。企画や言い回しのように、正解が1つでない相談にそのまま当てはまるわけではありません。それでも「1つ目の答えで決めない」という考え方は共通します。

下の図が、頼み方による違いです。

頼み方の違いを示す図。左は『1案だけ頼む』で、出てきた1案をしっくり来ずに直し続け、比べる相手がいない。右は『3案を出させる』で、案A・案B・案Cを長所短所つきで出させ、並べて比べて1つ選ぶ。1案を直し続けるより、複数の案から選ぶほうが決めやすいことを示す。
図1: 1案を直し続けるより、複数案を並べて選ぶほうが決めやすい(当サイト作成)

見てのとおり、違いは能力ではありません。案が1つか、並べて選べるか、です。

そのまま使えるプロンプト

やることは、頼むときに一言そえるだけです。手順は2つに分かれます。

まず、複数を出させる。

新商品の告知文について、方向性の違う案を3つ出して。それぞれに長所と短所を一言ずつ添えて。

次に、軸を渡して選ばせる。

重視するのは「読んで3秒で伝わること」。この軸で3案を比べて、1つおすすめして。理由も教えて。

軸(何を優先するか)を先に渡すのがコツです。速さ・正確さ・親しみやすさのどれを取るかで、選ぶ案は変わります。

場面ごとに、こんな使い方ができます。

  • 会社員なら。会議の議題を「立場の違う3案」で出させる。抜けていた論点が見つかる。
  • 個人開発者なら。機能の名前を「毛色の違う5案+短所つき」で。相談相手がいなくても選べる。
  • 学生なら。レポートの構成を「切り口の違う3案」で。書き出す前に方向が決まる。

ChatGPT・Claude・Geminiなど、普段使いのチャットAIでそのまま試せます(執筆時点の2026年8月・日本から利用可)。

今日から試す3ステップ

やることは3つです。追加のひと言は数秒、選ぶところまで入れても数分で終わります。

  1. 3案を頼む:「〜について、方向性の違う案を3つ出して」と頼む。
  2. 長所短所を添えさせる:「それぞれに長所と短所を一言ずつ」と続ける。良し悪しを自分で言わせるのが狙いです。
  3. 軸を決めて選ばせる:「重視するのは〇〇。その軸で比べて1つ選んで」と頼む。

大事なのは、1案目で会話を終えないことです。並べて、初めて選べます。

うまくいかないとき・向いていない場面

似た案ばかり返るときは、方向がばらけていません。「前提を変えて」「もっと毛色の違う方向で」と振り直すと、離れた案が出てきます。

案を出させすぎると、今度は選べなくなります。比べやすいのは3つ前後です。多すぎたら「まず上位3つに絞って」と頼みます。

向いていない相談もあります。答えが1つに決まる事実の確認(計算・仕様のチェック)では、複数案は要りません。この頼み方が効くのは、正解が1つでない判断や、言い回し・企画などの創作です。

選んだ案が本当に良いかは、決めたあとにもう一度確かめると安心です。答えを見直させる頼み方はAIの一発回答は詰めが甘いにまとめました。案を出させる前に前提を渡しておくと、最初から筋の良い案がそろいます(「前提」を先に渡す)。

まとめ

AIの最初の1案が物足りないのは、力不足とは限りません。並べる相手がいないだけかもしれない。

頼み方は短くていい。「違う案を3つ、長所短所つきで」。それだけで、直す作業が、選ぶ作業に変わります。

AIとの付き合い方はAI活用の柱にまとめています。次にAIへ頼むとき、1案で終えずに「3つ出して」と足すところから試してみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 「〜について、方向性の違う案を3つ出して」と頼む
  2. 「それぞれに長所と短所を一言ずつ添えて」と続ける
  3. 「重視するのは〇〇。その軸で比べて1つおすすめして」と選ばせる
  4. 似た案ばかりなら「前提を変えて、もっと違う方向で」と振り直す
  5. 答えが1つに決まる事実の確認には使わず、判断や創作に使う

出典・参考

  1. OpenAI Academy 公式プロンプトガイド(Ask for options: If you want choices, just say so.=選択肢がほしいなら、そう言えばいい。例「このレポートの見せ方を2通り出して」)academy.openai.com
  2. Wang et al. (2022) Self-Consistency Improves Chain of Thought Reasoning in Language Models(ICLR 2023・Googleの研究者。1本道の答えだけを取るのではなく、複数の考え方を出させて食い違いの少ない答えを選ぶと、算数の文章題GSM8Kで正答率が17.9%向上したと報告)arxiv.org
  3. Anthropic 公式プロンプトガイド(Research and information gathering/複雑な調べ物では develop several competing hypotheses=競合する複数の仮説を立てるよう勧めている)platform.claude.com

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。