AIへの指示は「〜しないで」より「こうして」——肯定形で望む形を渡す
AI / 実践メソッド

AIへの指示は「〜しないで」より「こうして」——肯定形で望む形を渡す

AIに「専門用語を使わないで」と頼んでも、堅いまま返ってくる。禁止形の指示は「では何を書くか」が抜けるからです。望む形を肯定形で伝えると出力が安定します。ChatGPTとClaudeの公式ガイドが共通ですすめる、指示の言い換えをまとめました。

「専門用語を使わないで」。そう頼んだのに、AIの返事は相変わらず堅いまま。

こういう「言ったのに直らない」は、よく起きます。

原因は、AIの物わかりが悪いからではありません。指示が「禁止」だけで、「では、どうしてほしいか」が抜けているのです。

「するな」より「こうして」

公式ガイドが、そろって同じことをすすめています。

Claudeを作るAnthropicの案内には、「してほしくないことより、してほしいことを伝える」とはっきり書いてあります。例として、「マークダウンを使わないで」ではなく「なめらかな文章で書いて」と頼むよう示しています。

ChatGPTを作るOpenAIの案内も、「どんな応答がほしいかを具体的に指示する」ことをすすめています。

やることは同じです。禁止で閉じず、望む形を言葉にする。それだけで、AIは目指す先が分かります。

「〜しないで」だと、行き先が残らない

なぜ肯定形が効くのか。禁止形の指示を思い浮かべてください。

「専門用語を使わないで」と言われたAIは、避ける言葉は分かります。でも、代わりにどんな文体で書けばいいかは、宙ぶらりんのままです。

「かたい表現はやめて」も同じ。やめた先には、無数の書き方が残ります。AIはそのどれかを推測で選びます。だから、狙いと外れます。

AIへの指示を禁止形と肯定形で比べた図。左は「専門用語を使わないで」という禁止形で、望む文体が示されないためAIが何を書けばいいか迷っている。右は「小学生にもわかる言葉で、たとえ話を1つ入れて説明して」という肯定形で、目指す出力がはっきりしているためAIが迷わず書ける。肯定形は行き先を示すことを表している
図1: 禁止形は行き先を示さない。肯定形は、目指す1点を渡す(当サイト作成)

見てのとおり、禁止形は「行き先」を残しません。肯定形は、目指す1点を渡します。差は、そこだけです。

禁止を「こうして」に言い換える

コツは、「〜しないで」と書きそうになったら、その裏を1文で言い直すことです。

Before(禁止形): 議事録を要約して。長くしないで。 After(肯定形): 議事録を、決定事項と次にやることだけ、箇条書き5行で要約して。

Before(禁止形): この企画のたたき台を書いて。ありきたりにしないで。 After(肯定形): この企画のたたき台を、切り口を3案、それぞれ一言の見出しつきで出して。

どちらも、禁止していた中身は同じです。ただ「代わりに何を」を足しただけで、返ってくるものが具体的になります。

メールの下書きなら、「堅くしないで」より「取引先へのお願いを、丁寧だけどやわらかい口調で、3段落で」。望む形を渡すほど、手直しが減ります。

それでも外れるとき

肯定形にしても狙いと違うなら、指定がまだ曖昧なことが多いです。「やさしく」「簡潔に」は、人によって幅があります。「小学生に説明するように」「200字以内で」と、測れる形に置き換えてください。

言葉で伝えきれないときは、望む形の例を1つ見せるのが早道です。「この見出しの感じで、あと3本」と手本を渡すと、AIはそれをまねます。

一方で、禁止がどうしても要る場面もあります。「社名は出さないで」のような、越えてはいけない一線です。その場合も、禁止と一緒に「代わりに『担当者』と書いて」と逃げ道を添えると、AIは迷いません。

望む形を、言葉にして渡す

AIへの指示は、ダメ出しのリストではありません。目指す1点を、手渡す作業です。

「しないで」を「こうして」に変える。たったこれだけで、「言ったのに直らない」の多くが消えます。

指示と素材の分け方は「区切り」で分けるに、答えの形をそろえる話は「形」を先に指定するにまとめました。基本の頼み方はAIへの頼み方の基本からどうぞ。

今日いちばん言うことを聞かなかった指示を1つ、「代わりに何を」を足して打ち直してみてください。返事が、ぐっと素直になります。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 「〜しないで」と書いたら、その裏の「代わりに何を?」を1文足す
  2. 望む文体・長さ・形を具体的に指定する(「3行で」「やさしい言葉で」)
  3. 直したい所は、禁止ではなく「こう直して」と手本の方向を示す
  4. それでも外れたら、望む形の例を1つ見せて「この形で」と頼む

出典・参考

  1. Anthropic(公式)Prompting best practices ——「Tell Claude what to do instead of what not to do(してほしくないことより、してほしいことを伝える)」と、望む振る舞いを明示的に指示するよう説く指針(例:「Do not use markdown」ではなく「compose your response of smoothly flowing prose paragraphs」・2026年7月時点)platform.claude.com
  2. OpenAI(公式)Prompt engineering ——「Provide guidance to the model on how to generate the response you want(どんな応答がほしいかを具体的に指示する)」と、望む出力を明示的に指定するよう説く指針(2026年7月時点)developers.openai.com

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。