新しい習慣、どこにくっつけるか迷わなくていい—効いたのは「くり返した回数」だった
新しい習慣を『何に紐づけるか』で悩んでいませんか。成人192人の無作為化比較試験では、既存の日課に紐づけても決まった時刻に紐づけても、定着への差はありませんでした。効いたのは合図の種類より、くり返した回数。迷いを手放して続けるコツをまとめます。
「朝コーヒーを淹れたら、そのついでにスクワット」。習慣術の本でよく見る、既存の行動に新しい習慣をくっつけるやり方です。
でも、くっつけ先を歯みがきにするか、朝8時にするかで、そんなに悩む必要はないかもしれません。
どこにくっつけるかより、もっと効くものがあると分かってきました。
「日課の後」と「決まった時刻」に差はなかった
ドイツの研究チームが、2021年にひとつの比較試験を行いました(Kellerら, 2021)。
18歳から77歳までの成人192人を、くじ引きで2つのグループに分けています。参加者はまず、増やしたい食行動を1つ選びました。
そのうえで、片方は「既存の日課の後に行う」と計画し、もう片方は「決まった時刻に行う」と計画します。そして84日間、毎日アンケートに答え、行動したかどうかと「自動性」を記録しました。自動性とは、考えなくても行動が出てくる度合いのことです。
結果はこうでした。どちらのグループも、自動性と実践が増えていきました。ただし2つのグループのあいだに、差は出ませんでした。
つまり、合図が「日課の後」でも「決まった時刻」でも、定着の度合いは同じくらいだったのです。
見てのとおり、2本のルートは同じ場所に着きます。効いたのは、合図の種類ではありませんでした。
カギは「くり返した回数」だった
では、何が定着を左右したのか。
この研究では、行動をくり返し実践したことが、自動性を予測するカギでした。合図の置き方より、単純に何回やったかが効いていた、という整理です。
自動性が頭打ち(ピーク)に達するまでの日数は、中央値で59日でした。だいたい2か月です。
この「くり返すほど自動になる」流れは、別の研究とも重なります。日常の行動を12週間追った2010年の研究でも、定着には繰り返しが要ると報告されました。平均でおよそ2か月、中央値で66日です(Lallyら, 2010)。ここでも効いていたのは、合図の工夫より積み重ねのほうでした。
ここは注意が必要です。これは日常の食行動1種類を対象にした研究で、自動性は本人の自己申告で測っています。ひとつの比較試験なので、すべての習慣や全員に当てはまるとは限りません。
それでも「合図の種類より、くり返しの回数」という傾向が観察されたのは、悩みがちな私たちに効くヒントです。
会社員の毎日に置き換える
この結果は、忙しい人ほど気がラクになります。
「既存の習慣にくっつけないと定着しない」と聞くと、ちょうどいい既存習慣を探すところで止まってしまいがちです。でも、その探しものは必須ではありませんでした。
大事なのは、どちらでもいいので毎日ほぼ必ず出る合図を選び、そこでくり返すこと。朝の歯みがきの後でも、昼の12時でも、続けやすいほうでかまいません。
会社員なら、こんな置き方が崩れにくいでしょう。
- 昼食のあとに、水を1杯飲む
- 出社してPCを開いたら、今日やることを3つ書く
- 帰宅して手を洗ったら、明日の服を出す
合図をどう決めるかは習慣化の歩き方でも扱っています。何日くらいで根づくのかは習慣は21日では身につかないを、いつ・どこでやるかの決め方はif-thenプランニングをどうぞ。
今日からの手順
手順は3つです。最初の設定に5分ほど、あとは毎日1〜5分です。
- 続けたい行動を1つだけ選ぶ。「野菜を1品足す」のように小さく削る
- 合図を1つ決める。「昼食のあと」でも「毎朝8時」でも、続けやすいほうでいい
- できた日をカレンダーに1マス塗る。まず2か月、同じ合図でくり返す
ここで一番やってはいけないのは、合図選びで悩んで着手が遅れることです。
くっつけ先は、あとから変えてもかまいません。まずは1つ決めて、今日から回数を1つ増やす。効いたのは合図の完璧さではなく、積み上げた回数のほうでした。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 続けたい行動を1つだけ選ぶ。「野菜を1品足す」のように小さく削る
- 合図を1つ決める。「昼食のあと」でも「毎朝8時」でも、続けやすいほうでいい
- 決めた合図が毎日ほぼ必ず起きるか確認する。週末に消える合図は避ける
- できた日をカレンダーに1マス塗る。回数が積み上がるのを見えるようにする
- 合図選びで悩んで止まらない。まず2か月、同じ合図でくり返す
出典・参考
- Keller, J., Kwasnicka, D., Klaiber, P., Sichert, L., Lally, P., & Fleig, L. (2021) Habit formation following routine-based versus time-based cue planning: A randomized controlled trial. British Journal of Health Psychology, 26(3), 807-824.bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com
- Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010) How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998-1009.onlinelibrary.wiley.com
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。