AIの文体・トーンを先に指定する——硬い返事も馴れ馴れしい返事も直る
ChatGPTやClaudeの返事が、硬すぎたり馴れ馴れしすぎたりして、結局書き直す。そんなときは「どんな声で書くか」を先に伝えると、一発で使える文章に近づきます。ChatGPT・Claude公式ガイドをもとに、そのまま添えられるトーンの指定例をまとめました。
取引先へのお礼メールをAIに頼む。返ってきたのは、丁寧だけれど、どこか他人行儀でよそゆきの文章。
逆に「もっとくだけて」と頼むと、今度は馴れ馴れしすぎて、そのままでは送れない。
結局、自分で書き直す。原因は、AIに「どんな声で書くか」を伝えていないことかもしれません。
なぜ「声・文体」を先に伝えると、書き直しが減るのか
AIは、あなたがどんな声色で書いてほしいかを知りません。
だから、あたりさわりのない平均的な文体を選びます。丁寧すぎたり、素っ気なかったり。その場にちょうど合うことは、そう多くありません。
そこで効くのが、トーンの指定です。「丁寧に」「くだけた口調で」「端的に」。書き出す前に、望む声を一言そえるだけです。
これは公式ガイドもすすめるやり方です。ChatGPTを作るOpenAIの公式ガイドは、AIへの指示についてこう説明しています。
「返答を作るときにどうふるまうかを大枠で伝えるもので、トーンや目的、良い返答の例を含む」。
同じガイドは、AIの設定として「目的・伝え方・全体の狙い」を最初に決めることも挙げています。この「伝え方」が、声・文体にあたります。
Claudeを作るAnthropicの公式ガイドも、出力の「形式・トーン・構成」を、こちらから寄せられるものとして挙げています。
どちらも、執筆時点(2026年8月)に公開されている公式ガイドの内容です。ChatGPTとClaudeは、日本からも使えます。
「役割」「宛先」「形」との違い
似た指定に、役割・宛先・形があります。声・文体は、そのどれとも別ものです。
- 役割は、AIを「誰にするか」。話し手の設定です → AIに役割を与える
- 宛先は、答えを「誰に届けるか」。読み手の設定です → 誰に向けてを伝える
- 形は、答えを「どの形にするか」。表・箇条書き・文字数です → 答えの形を指定する
- 声・文体は、「どんな調子で書くか」。この記事の話です
役割を決めても、声までは決まりません。「編集者」に頼んでも、丁寧にも辛口にも書けます。だから、声は声で、別に伝えます。
声を指定しないときと、指定したとき
下の図が、声を指定しないときと、先に指定したときの違いです。
見てのとおり、変わるのは中身ではなく「声が場に合うか」です。
同じ用事で、声なしと声ありを比べてみます。
Before:「取引先へのお礼メールを書いて」
これだと、丁寧だけれど他人行儀な文か、逆にくだけすぎた文に振れます。どちらに転ぶかは、そのときしだいです。
After:「取引先へのお礼メールを書いて。丁寧に、でも堅くなりすぎず、少し温かみのある文体で」
同じ依頼でも、後者はそのまま送れる文に近づきます。違いは、声を一言そえたかどうかだけです。
声は、いくつかの軸で選ぶ
「どんな声か」は、いきなり言葉にしづらいものです。次の軸で考えると選びやすくなります。
- フォーマルか、カジュアルか
- 硬いか、やわらかいか
- 専門的か、やさしくかみ砕くか
- 淡々とか、温かみを込めてか
この軸のどこに置きたいかを、一言にします。「カジュアルで、やわらかく」「専門的だけど、淡々と」のように、2つ足すと輪郭がはっきりします。
まずは自分の用途に合う調子を一つ選んで、指示の末尾にそえてみてください。
今日から使う、声の足し方
声の指定は、次の3つで使うと外しにくくなります。
- 調子を一語決める:「丁寧に」「くだけた口調で」「端的に」「やわらかく」
- 強さを対で伝える:「丁寧に、でも堅くなりすぎず」と、行きすぎの歯止めもそえる
- 近い文章を1つ見せる:「この文体で書いて」と、手本を1本渡す
3つ目が、いちばん確実です。うまく言葉にできない声も、見本を見せれば伝わります。公式ガイドも、望む返答の例を見せる方法を挙げています。
言葉で足すなら、対で伝えるのがコツです。「フランクに」だけだと馴れ馴れしくなりがち。「フランクに、でも失礼にならない範囲で」と歯止めをそえると、ちょうどよく収まります。
指示の基本の型はAIへの頼み方の基本にまとめています。声の指定は、その末尾に一言足すだけで足ります。
うまくいかないとき・向かない場面
一度で決まらなければ、その場で言い直す
一発で決まらなくても大丈夫です。硬いと感じたら「もう少しやわらかく」、砕けすぎなら「もう少し丁寧に」。
返ってきた文を見て、少しずつ寄せていくのがコツです。一度で完璧を狙わなくていい。
声を変えても、中身は変わらない
一つ、勘違いしやすい点があります。声の指定は、文章の調子を整える手です。中身が正しくなるわけではありません。
「自信たっぷりの口調で」と頼めば、堂々とした文にはなります。けれど、そこに書かれた事実や数字が合っているかは、別の話です。大事な情報は、声に関係なく確かめてください。
なお、AIの答え方はモデルやバージョンで変わります。同じ指定でも返りが違ったら、言い方を少し調整してみてください。
声を指定しないほうがいい場面
自分用のメモや下書きには、声の指定はいりません。読むのが自分なら、そのまま書かせたほうが早い。
アイデアを広げたいときも、声を固めすぎないほうがいい。調子をきつく縛ると、返ってくる案が浅くなることがあります。声の指定が効くのは、人に渡す文章を仕上げるときです。
最後に
AIの返事が場違いに感じるとき、原因はAIの性能だけとは限りません。どんな声で書くかを、伝えていないだけのことも多い。
先に決めるのは一つ。「どんな調子で書くか」です。丁寧か、くだけているか。硬いか、やわらかいか。相手と場面を思い浮かべて、末尾に一言そえるだけです。
役割・宛先・形の指定と重ねれば、狙いにさらに近づきます。AIを日々の仕事にどう取り入れるかは、AI活用の記事もどうぞ。
まずは次にAIへ頼むとき、末尾に「丁寧に、でも堅すぎず」と一言足すところから試してみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 頼む前に「どんな声で書くか」を一言決める(丁寧/くだけて/端的)
- 強さを対で伝える(「丁寧に、でも堅くなりすぎず」)
- 近い文章を1つ見せて「この文体で書いて」と頼む
- 硬い・馴れ馴れしいと感じたら、その場で言い直す
- 声を変えても中身の正しさは別。事実は確かめる
出典・参考
- OpenAI(公式)Prompt engineering ガイド — AIへの指示(instructions)が返答のふるまいを決め、その中に「トーン」を含むと明記(「The instructions parameter gives the model high-level instructions on how it should behave while generating a response, including tone, goals, and examples of correct responses.」)。開発者メッセージの構成要素としても「Identity: Describe the purpose, communication style, and high-level goals of the assistant.」と、伝え方(communication style)の指定を挙げている(2026年8月時点)developers.openai.com
- Anthropic(公式)Prompting best practices — 出力の『形式・トーン・構成』をこちらから寄せられる出力属性として挙げている(「Examples are one of the most reliable ways to steer Claude's output format, tone, and structure.」)。役割の一文でもふるまいとトーンが寄る(「Setting a role in the system prompt focuses Claude's behavior and tone for your use case.」)(2026年8月時点)platform.claude.com
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。