まとまった運動の時間がなくても——座りっぱなしを「2分の歩き」で区切ると、食後血糖の増加がやわらいだ
朝から夕方まで、席をほとんど立たない。運動したほうがいいのは分かっていても、まとまった時間が取れない。ある実験では、5時間座り続けるより、20分ごとに2分だけ歩いた人のほうが、食後血糖の増加分が約24%少なくなりました。1日を見た小さな実験の範囲を確かめつつ、今日から席でできる形にまとめました。
朝から夕方まで、気づけば一度も席を立っていない。
会議もオンライン、資料づくりもPC。トイレ以外は、ほぼ座りっぱなし。
運動したほうがいいのは分かっているけれど、まとまった時間が取れない。
実は、体に効くのは運動の「長さ」だけではないかもしれません。
座り続ける時間を、こまめに区切る。それだけを調べた実験があります。
この実験が調べたこと
2012年、オーストラリアの研究チームが、ある実験をしました。
対象は、太りぎみ・肥満の成人19人。平均53.8歳です。
一人ひとりに、3つの過ごし方を、日を変えて試してもらいました。
- 5時間ずっと座って過ごす
- 20分ごとに立ち、2分だけ軽く歩く
- 20分ごとに立ち、2分だけ中強度で歩く
歩いた時間は、どちらの条件も合計28分(2分×14回)です。
実験の前には、糖と脂質を含むテスト飲料を飲みます。その後の5時間、血糖とインスリンの動きを測りました。
測ったのは食後の「増加分」。つまり、食べたあとにどれだけ数値が上がったか、です。
「まとまった時間」で運動しようとすると続かない
「健康のために運動を」と言われると、まとまった枠を思い浮かべます。
ジムに1時間、朝のランニング30分。でも、平日にその枠を作るのは難しい。
仕事に追われる日ほど、運動は後回しになります。
この実験が示したのは、別の道でした。歩いたのは1回たった2分。合計でも28分です。
それでも、はっきり差が出ました。
座りっぱなしに比べ、軽く歩いた条件では、食後血糖の増加分が24.1%少なくなっています。
中強度で歩いた条件では29.6%少なくなりました。食後インスリンの増加分も、どちらの条件でも約23%減っています。
下の図は、座りっぱなしと「2分の歩き」を並べたものです。
見てのとおり、まとまって運動しなくても、2分ずつ挟むだけで数字は動いています。
ただし、これは1日だけを見た小さな実験です。人数は19人で、区切る間隔も「20分ごと」の1パターンだけを試しています。
著者自身「この結果を長期の効果には広げられない」と明記しています。あくまで「1日の実験で、食後の指標が下がった」という範囲の話です。
ただ、似た実験は数多く行われています。
42の研究をまとめた2019年の解析でも、向きは同じでした。座る時間を体の動きで区切ると、食後の血糖やインスリンの上がり方がおだやかになる。効果は、体格が大きい人ほど大きく出ていました。
1本の小さな実験というより、方向はくり返し確かめられている。そう考えてよさそうです。
今日から、席で「2分」を挟む
やることは1つ。20〜30分に一度、席を立って少し歩くだけです。
特別な道具も、着替えもいりません。まずは、すでにある用事に歩きをひも付けます。
- コピーやプリントは、1回ずつ取りに行く
- 飲み物は給湯室まで。水筒を置かず注ぎに行く
- トイレは1つ遠いフロアを使う
- オンライン会議の1つは、立って参加する
- 電話は歩きながら受ける
覚えておこうとすると、集中した日ほど忘れます。だから、立つきっかけは仕組みに任せます。
30分ごとにタイマーを鳴らし、鳴ったら立つ。スマートウォッチの「スタンドの通知」でも代わりになります。
在宅なら、もっと刻めます。数分の家事——洗濯物を移す、食器を1枚洗う——を挟めば、自然に立てます。
まずは午前中に2〜3回、席を立つところから始めてください。
うまくいかないとき・向いていない人
続かない一番の理由は、歩く長さを欲張ることです。
実験でも1回はたった2分でした。10分歩こうと意気込むと、かえって腰が重くなります。長さより回数、と割り切ってください。
次の人には、この記事はそのまま当てはまりません。
- 立ち仕事や、もともとよく動く仕事の人。前提の「座りっぱなし」にあたらない
- 膝や腰に痛みがある人。無理に回数を増やさない
- 血糖を管理中の人・持病のある人。生活の変え方は、先に主治医へ相談を
そして、これは1日の実験で「食後の指標が下がった」という報告です。病気を防ぐ、体重が落ちる、といった約束ではありません。
過度に期待せず、「座りっぱなしを減らす小さな習慣」として気軽に取り入れてください。
体を動かす小さな工夫は、健康の柱でもいくつか扱っています。午後に眠気で集中が切れるなら、午後の短い昼寝の使い方と組み合わせるのもいいでしょう。
まとまった運動の時間は、今日は取れなくていい。
まずは次の休憩で、いつもより1つ遠い場所まで歩いてみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 20〜30分に一度、席を立って少し歩くと決める。長さは1回2分でよい
- コピー・プリントは1回ずつ取りに行く。まとめない
- 飲み物は給湯室まで注ぎに行く。デスクに水筒を置かない
- 30分ごとにタイマーやスマートウォッチの通知を鳴らし、鳴ったら立つ
- 血糖を管理中の人・持病のある人は、生活の変え方を先に主治医へ相談する
出典・参考
- Dunstan, D. W., Kingwell, B. A., Larsen, R., Healy, G. N., Cerin, E., Hamilton, M. T., Shaw, J. E., Bertovic, D. A., Zimmet, P. Z., Salmon, J., & Owen, N. (2012) Breaking Up Prolonged Sitting Reduces Postprandial Glucose and Insulin Responses. Diabetes Care, 35(5), 976-983.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Loh, R., Stamatakis, E., Folkerts, D., Allgrove, J. E., & Moir, H. J. (2019) Effects of Interrupting Prolonged Sitting with Physical Activity Breaks on Blood Glucose, Insulin and Triacylglycerol Measures: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Medicine, 50(2), 295-330.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。