月曜・1日・誕生日の直後は、なぜか始めやすい—6,082人の実験が支える「フレッシュスタート効果」
Habits / Research Digest

月曜・1日・誕生日の直後は、なぜか始めやすい—6,082人の実験が支える「フレッシュスタート効果」

「来月から本気を出す」が毎回流れて三日坊主。実はやる気は月初・月曜・誕生日など区切りの直後に上がりやすいと研究は示します。この「フレッシュスタート効果」を使い、新年度や月曜など身近な区切りから「いつ始めるか」を設計する方法をまとめました。

「来月の1日から本気を出す」。そう決めたのに、気づけば月の半ばで熱が冷めている。

始めるタイミングを、私たちはなんとなく「やる気が出た日」に任せがちです。

でも研究は、逆のことを言っています。始めやすい日は、あらかじめ決まっているのです。

研究が示すこと

「いつ始めるか」を調べた研究が2つあります。順に見ていきます。

ひとつ目は、2014年に経営学の学術誌『Management Science』(第60巻10号2563〜2582ページ)で報告された研究です。ダイらは、実際に記録された行動データを3種類調べました。

まず、Googleでの「ダイエット」の検索。週の初め・月の初め・年の初め、それに休日や学期の始まりの直後に増えていました。

次に、大学のジムの利用。週・月・学期・新学年の始まり、そして誕生日の直後に増えました。

さらに、目標達成を後押しするサービスへの申し込みも、こうした区切りの後に増えていました。

著者らはこう解釈します。時間の区切りは、心の中に新しい「会計期間」を作る。過去の失敗を前の期間へ切り離し、大きな視点で自分を見直させる。それが意欲的な行動を後押しする、というわけです。

ただし限界があります。この3つは主に「観察」のデータです。区切りと行動の増加が同時に起きたことは示せても、区切りが原因だと単独で強く言い切ることはできません。

そこで2つ目の研究が、その因果を実験で確かめにいきました。2021年、『Organizational Behavior and Human Decision Processes』第167巻の報告です。

大学の職員6,082人に、退職後に向けた積立の増額を案内します。増額を「今すぐ」始めるか、「将来の指定日から」始めるかを選べる形です。

このとき、将来の増額日を「誕生日」や「春の初日」などの区切りに紐づけて示すと、その将来時点で増額を選ぶ人が増えました。

しかも、「今すぐ増額」を選ぶ人は減りませんでした。案内の後8か月間の積立額も増えています。

観察データで見えた傾向が、実験でも再現された。区切りに紐づける一手が、実際に行動を動かしたわけです。

この2つを1枚にまとめると、下の図のようになります。

横軸に時間、縦軸にやる気と行動をとった概念図。月曜・月初・誕生日・4月の新年度・年初という時間の区切りごとに、線が直後に大きく立ち上がり、その後ゆるやかに下がることを繰り返し示している
図1: 区切りの直後にやる気は立ち上がり、その後ゆるやかに下がる(当サイト作成)

見てのとおり、区切りの直後にやる気が立ち上がり、その後はゆるやかに下がっていきます。

区切りは、身近にたくさんある

区切りは、生活のあちこちにあります。

4月の新年度、期の変わり目、月初、毎週の月曜、そして誕生日。使える「始めやすい日」がそろっています。

たとえば会社員なら、4月の異動や期初は絶好の開始日です。「新しい部署に移った週から、朝の15分を勉強にあてる」と決めておく。

個人開発者なら、月初がわかりやすい。「7月1日から、平日は毎朝ひとつコミットする」のように、月の頭を開始日に選びます。

誕生日も強い区切りです。年に一度、自分だけの「元日」として使えます。

今日からの手順

手順は3つです。最初の設定に5分ほど。あとは開始日が来たら始めるだけです。

  1. 次に来る区切りを1つ選ぶ。月曜・1日・誕生日・4月のうち、いちばん近いものでかまいません
  2. 「その日から、何を、どのくらい」を1行で書く。例:「月曜から、朝に英語を10分」
  3. その1行をカレンダーに印として置き、開始日が来たら始める。頻度は毎日か平日など、続けられる範囲で決める

始めた後は、区切りの勢いだけに頼らないことが大事です。合図と行動を固定するif-thenプランニングや、習慣化にかかる本当の日数の話が、その後を支えてくれます。

区切りに頼りすぎない

最後に、正直な注意を書いておきます。

区切りは、始める「きっかけ」としては便利です。でも、続ける力そのものではありません。

研究が示すのは「区切りの直後は行動が増えやすい」という傾向です。何を始めても必ずうまくいく、という話ではありません。効果は文脈によって変わります。

だから、始めた後は仕組みで支える。行動を小さく削り、毎日の固定動作にくっつけ、できない日があっても翌日また戻る。区切りは、その仕組みを立ち上げる号砲として使うのがちょうどいい、と考えています。

続け方そのものは習慣化の歩き方にまとめています。

次の月曜でも、来月の1日でも、あなたの誕生日でもかまいません。いちばん近い区切りを1つ選んで、「その日から始めること」を1行だけ書いてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 次の区切り(月曜・1日・4月)を1つ選び、そこを開始日に決める
  2. 「その日から何を、どのくらい」を1行で書きカレンダーに印を付ける
  3. 始めた後は仕組みで支え、区切りの勢いに頼りきらない
  4. 区切りを逃しても、次の月曜や1日でまた仕切り直す

出典・参考

  1. Dai, H., Milkman, K. L., & Riis, J. (2014) The Fresh Start Effect: Temporal Landmarks Motivate Aspirational Behavior. Management Science, 60(10), 2563-2582.pubsonline.informs.org
  2. Beshears, J., Dai, H., Milkman, K. L., & Benartzi, S. (2021) Using Fresh Starts to Nudge Increased Retirement Savings. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 167, 72-87.katherinemilkman.squarespace.com

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。