割り込みで作業は速くなる——でも「ストレス」は上がった
割り込まれながら進めた作業は、実は速く終わることがあります。48人が『割り込みなし』と『割り込みあり』の両方を体験した実験では、割り込まれた回のほうを速く片づけた一方で、ストレスや焦り、消耗は強くなっていました。速いのに疲れる理由と、集中を守る手順をまとめました。
資料をまとめている途中で、同僚に声をかけられる。返事をして席に戻り、また少しすると通知が鳴る。
その日、仕事は一応片づいた。なのに、夕方には妙にぐったりしている。
「割り込みのせいで遅れた」と思いがちです。でも実験の結果は、少し違う方向を指していました。
割り込みされた人ほど、速く終えていた
カリフォルニア大学アーバイン校のグロリア・マークらは、2008年にこの現象を実験で調べました。学会 CHI で発表された研究です。
参加者は48人。会社の人事担当になったつもりで、受信箱のメールに次々と返信する課題に取り組みました。
実験では、参加者全員が、割り込みを受けずに進める回と、割り込みを受ける回の両方を体験します。割り込みの回では、作業中に「上司役」から質問が差し込まれます。どちらを先にやるかは人ごとに入れ替え、順番の影響が出ないようにしています。
意外なことに、同じ人でも、割り込まれた回のほうが課題を短い時間で終えていました。返信の質(ていねいさ・入力ミスの数)にも差はありませんでした。
研究者はこう解釈します。人は割り込みで時間を失うと分かっているので、その分を取り返そうと、無意識に速く働く。文章も短くなる。そうやって帳尻を合わせている、と。
下の図が、割り込みの「あり・なし」で何が変わったかです。
かかった時間はむしろ短い。増えたのは、右側の「ストレス」のほうでした。
速いのに、なぜ疲れるのか
速く終わるなら良いことでは、と思うかもしれません。でも、代償がありました。
割り込まれた回では、ストレス・焦り・消耗を、はっきり強く感じたと答えています。20点満点の評価で、ストレスは約6.9から約9.3へ上がりました。
しかも、割り込みが始まってわずか20分で、この差が出ています。
気分への代償は、この実験だけの話ではありません。別の研究(Bailey・Konstan 2006、50人)でも、割り込まれた人はいらだちや不安をはっきり強く感じ、作業のミスも増えていました。
短い時間でも、割り込みは気分と負担を押し上げていた。速さは、その無理から出た副産物だった、というわけです。
ただし、これは48人が実験室でメール課題に取り組んだ結果です。あなたの複雑な仕事にそのまま当てはまるとは限りません。
会社でも家でも、割り込みから守る
会社員なら、資料作りの最中のチャットや呼び出し。個人開発者なら、コードを追う手を止める通知。学生なら、勉強中のスマホの震え。
どれも「あとで返せるのに、つい今すぐ対応してしまう」割り込みです。速く片づいても、あとに焦りと疲れが残ります。
大事なのは、割り込みを減らすより先に、割り込みが入らない時間を先に確保することです。集中を仕組みで守る考え方は集中の技術でもまとめています。
今日から試す「割り込みを先にブロックする」
やることはシンプルです。集中したい作業の前に、邪魔が入らない時間を用意します。
- 集中したい作業を1つ選び、25〜50分「割り込み対応をしない時間」と決める
- その間はスマホの通知を切り、チャットは「あとで見る」状態にする
- 声をかけられたら、即答せず「◯分後でいい?」と一度受け流す
- 作業のあと、速く終わっても焦りや疲れが残っていないか自分に聞く
- 割り込みが避けられない日は、その日の仕事量そのものを軽くする
ポイントは、速さを目指さないことです。速さは割り込みされても勝手に出てしまう。守りたいのは、落ち着いて進む時間のほうです。
通知の扱い方は通知をまとめて確認するもあわせてどうぞ。
割り込みで仕事が回っているように見えても、あなたはその裏で余分にすり減っているのかもしれません。まずは今日、30分だけ、誰にも邪魔されない時間を先に取ってみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 集中したい作業を1つ選び、25〜50分は割り込み対応をしないと決める
- その間はスマホ通知を切り、チャットは「あとで見る」にする
- 声をかけられたら即答せず「◯分後でいい?」と一度受け流す
- 作業後に、速く終わっても焦りや疲れが残っていないか確認する
- 割り込みが避けられない日は、仕事量そのものを軽くする
出典・参考
- Mark, G., Gudith, D., & Klocke, U. (2008) The Cost of Interrupted Work: More Speed and Stress. Proceedings of CHI 2008, 107-110.(著者公開の全文PDF)ics.uci.edu
- Bailey, B. P., & Konstan, J. A. (2006) On the need for attention-aware systems: Measuring effects of interruption on task performance, error rate, and affective state. Computers in Human Behavior, 22(4), 685-708.(全文PDF)interruptions.net
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。