締め切りが最後の1つだけだと、なぜ一夜漬けになるのか—途中に小さな区切りを自分で刻む
Focus / Research Digest

締め切りが最後の1つだけだと、なぜ一夜漬けになるのか—途中に小さな区切りを自分で刻む

大きな締め切りが最後に1つだけあると、つい前夜にまとめて片づけて後悔しがちです。締め切りを途中に自分で刻むと先延ばしが減るという研究をもとに、平日で使える区切りの作り方をまとめました。

提出は金曜の夕方。月曜の時点では、まだ何日もあるように感じます。

でも火曜も水曜も、なんとなく手をつけないまま過ぎていく。気づけば木曜の夜、コーヒー片手に一気に仕上げて、「毎回これだ」と後悔する。

締め切りが最後に1つしかない仕事ほど、この一夜漬けが起きやすいものです。

これは意志の弱さというより、締め切りの「置き方」の問題かもしれません。ある研究が、その手がかりをくれます。

締め切りは「途中に刻む」ほうが進む

心理学者のアリエリーとワートンブロックは、先延ばしと締め切りの関係を複数の実験で調べました。

わかったことは、大きく3つです。

1つめ。人は自分が先延ばしをすることを、ちゃんと自覚しています。だから「守れないと少し損をする」締め切りを、自分から進んで課すことがあります。締め切りを自分に課すのは、未来の自分へのブレーキです。

2つめ。その自分で課した締め切りには、効果がありました。締め切りを何も置かない場合にくらべて、課題の出来がよくなったのです。

3つめ。ただし、人は締め切りを最適には置けません。自分で刻む締め切りは、外から均等に課された締め切りほどには成果を伸ばしませんでした。

まとめると、こうです。締め切りは、最後に1つより途中に刻むほうがいい。でも、自分で決めた区切りはどうしても甘くなる——だから外の力を借りると、もっと効く。

もっとも、これは特定の課題を使った実験の結果です。すべての人、すべての仕事にそのまま当てはまるとは限りません。それでも「締め切りの置き方を変える」という発想は、試す価値があります。

下の図が、2つのやり方で作業の山がどう変わるかです。

締め切りの置き方による作業負荷の違いを比べた棒グラフ。左は締め切りが最後に1つだけの場合で、途中の日はほとんど手つかずの低い棒が並び、最終日だけ一夜漬けの高い棒が突き出て、負荷が終盤に集中している。右は途中に自分で小さな締め切り(区切り)を複数置いた場合で、毎日そこそこの高さの棒が均等に並び、負荷が毎日に分散している。
図1: 違いは「いつ大変になるか」だけ(当サイト作成)

見てのとおり、違いは「いつ大変になるか」です。締め切りが最後の1つだと山は終盤に集中し、途中に刻むと毎日に分かれます。

会社員・個人開発者の平日でどう使うか

研究の舞台は課題ですが、仕組みは平日の仕事でも同じです。

たとえば、金曜締め切りの企画書。「まだ日がある」と思っているうちに、火曜も水曜も別の仕事に押し出されます。最後の1日に、しわ寄せが来る。

個人開発でも同じです。「今月中にリリース」だけを決めると、月末まで動かないまま、最後の週末に徹夜する。

そこで、締め切りを1つから複数に増やします。金曜の本番の手前に、水曜「構成まで」、木曜「下書きまで」と、自分で小さな締め切りを置く。

ただし、ここに落とし穴があります。自分で決めた区切りは、自分で動かせてしまう。「まあ明日でいいか」で、あっさり崩れます。

だから、他人を巻き込みます。区切りを同僚や友人に宣言し、その日に見せる約束をする。守らないと少し気まずい——その「少し困る」状態が、区切りを本物の締め切りに変えます。

今日から試す手順

1. 本番の締め切りを1つ書き出す(1分)

まず、動かせない最終締め切りを紙かカレンダーに書きます。「金曜17時 企画書提出」のように、日時まで入れます。

2. 途中に「小さな締め切り」を2〜3個刻む(5分)

本番までの日数を分け、途中に区切りを置きます。「水曜まで構成」「木曜まで下書き」のように、1日で終わるサイズに削るのがコツです。

3. 各区切りに「見せる相手」を1人決める(3分)

同僚・友人・家族、誰でもかまいません。「木曜に下書きを送るね」と伝えるだけです。相手の返信は要りません。宣言した事実が効きます。

4. 守れなくても、翌週また同じ手順に戻る(継続)

1回崩れても失敗ではありません。区切りの数や見せる相手を変えて、また置き直します。

締め切りを守れないのは、あなたの意志が弱いからではありません。最後に1つだけ置くと、人はそれをうまく守りきれないだけです。

途中に区切りを刻んで、他人の目を1つ借りる。まずは今週の「いちばん重い締め切り」で試してみてください。

着手そのものが重いときは段取りで動くif-thenプランニング、後回しの裏に感情があるときは先延ばしと感情の記事も合わせてどうぞ。ほかの集中の作り方は集中の作り方でまとめています。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 動かせない最終締め切りを1つ、日時までカレンダーに書き出す(1分)
  2. 本番までの間に「小さな締め切り」を2〜3個刻む(1日で終わるサイズに削る)
  3. 各区切りに「見せる相手」を1人決め、『その日に送るね』と宣言する
  4. 崩れても責めず、区切りの数や相手を変えて翌週また置き直す

出典・参考

  1. Ariely, D. & Wertenbroch, K. (2002) Procrastination, Deadlines, and Performance: Self-Control by Precommitment. Psychological Science, 13(3), 219-224.(著者版全文PDF・MIT)web.mit.edu

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。