参考書を何度も読み返しているのに覚えられない——記憶に残るのは「思い出す」練習だった
Learning / Research Digest

参考書を何度も読み返しているのに覚えられない——記憶に残るのは「思い出す」練習だった

参考書にマーカーを引いて何度も読む。なのに本番で答えが出てこない。記憶に残す鍵は、読む回数ではなく思い出す回数でした。教育心理学の研究をもとに、本を閉じて思い出す勉強法を今日から試せる手順にまとめました。

資格試験に向けて、参考書にマーカーを引きながら何度も読み返す。ページの見た目はもう頭に入っているのに、いざ問題を解くと答えが出てこない。

読んだ回数は足りているはずなのに、なぜ残らないのか。

原因は勉強の量ではなく、やり方かもしれません。記憶に残す鍵は、読んだ回数ではなく「思い出した」回数でした。

「思い出す」ほうが「読み返す」より残る

心理学者のローディガーとカーピキという2人が、2006年に学習の実験を行いました。

アメリカの大学生に、250語ほどの文章を読ませます。そのうえで、あるグループには同じ文章を何度も読み返させ、別のグループには一度読んだあと、文章を見ずに思い出して書き出させました。

最終テストの時期は、直後・2日後・1週間後に分けます。

直後のテストでは、読み返したグループのほうが良い成績でした。ところが1週間後には、結果が逆転します。

くり返し思い出したグループのほうが、ただ読み返したグループより2割ほど高い点を取った、と報告されています(Brame & Biel, 2015 のまとめによる)。この「思い出す練習」は、検索練習(retrieval practice)と呼ばれています。

ここで気をつけたいのは、これが実験室での平均的な傾向だという点です。対象はアメリカの大学生、教材は短い文章でした。効果には個人差があり、断定ではなく「そういう傾向がある」として受け取るのが妥当です。

横軸が時間(直後から1週間後)、縦軸が覚えている量を示す2本の線のグラフ。読み返した場合の線は直後は高いが1週間後に大きく下がる。思い出す練習をした場合の線は直後はやや低いが下がり方がゆるやかで、1週間後には読み返しの線を上回って交差する様子を描いた図
図1: 直後は「読み返し」が上でも、時間がたつと「思い出す」が逆転する(当サイト作成)

図のように、読み返しは直後の成績こそ高く出ます。でも時間がたつほど落ちていきます。思い出す練習は、最初はきつくても残り方がゆるやかです。

読み返しは「できた気」を作る

なぜ、楽な読み返しのほうが残らないのでしょうか。

見慣れた文章は、すらすら読めます。この「すらすら感」を、脳は「もう知っている」と勘違いしやすいのです。

マーカーだらけの参考書を眺めて安心する。あれは理解したのではなく、見慣れただけかもしれません。

社会人の資格勉強、通勤中の単語アプリ、学生のテスト前。どれも「読む・眺める」に時間を使いがちです。でも、見慣れることと、本番で思い出せることは別ものです。

思い出そうとして詰まる。あの苦しい感覚こそ、記憶が固まっているサインです。カーピキらの別の研究(2007年)でも、学習の途中でくり返し思い出すことが、長く覚えておくうえで効いていた、と報告されています。

学び方そのものを鍛える発想は、学びの柱でも扱っています。

今日から試す「閉じて思い出す」勉強法

やり方は、道具もいりません。今日の勉強からそのまま変えられます。

  1. ひと区切り読んだら、本を閉じる。白紙に、思い出せる限り書き出す(3〜5分)
  2. 書き終えてから本を開き、抜けていた所だけを赤で足す
  3. 同じ範囲を、数日おいてもう一度、何も見ずに思い出す

ポイントは、思い出す前にページを見ないことです。見てしまうと「読み返し」に戻ってしまいます。

最初は、驚くほど書けません。それで普通です。書けない場所が、まだ覚えていない場所だと分かる。それ自体が収穫です。

続けて振り返るほど効いてくるので、記録して見える化しておくと続けやすくなります。やり方は記録するだけで行動が変わるが参考になります。

読み返して安心する時間を、少しだけ「思い出す」時間に振り替える。それだけで、同じ勉強時間から残るものが変わってきます。まずは今日読んだ1ページを、本を閉じて思い出すところから始めてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. テキストをひと区切り読んだら本を閉じ、白紙に思い出せる限り書き出す(3〜5分)
  2. 書き出したあとだけ本を開き、抜けていた所を確認して赤で足す
  3. 同じ範囲を数日おいて、もう一度何も見ずに思い出す
  4. マーカーを引く時間より、閉じて思い出す時間を増やす

出典・参考

  1. Brame, C. J. & Biel, R. (2015) Test-Enhanced Learning: The Potential for Testing to Promote Greater Learning in Undergraduate Science Courses. CBE—Life Sciences Education, 14(2), es4.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Karpicke, J. D. & Roediger, H. L. (2007) Repeated retrieval during learning is the key to long-term retention. Journal of Memory and Language, 57(2), 151-162.learninglab.psych.purdue.edu

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。