スタンディングデスクで立てば安心、ではなかった——立ちすぎは循環器リスク
Health / Research Digest

スタンディングデスクで立てば安心、ではなかった——立ちすぎは循環器リスク

座りっぱなし対策にスタンディングデスク。でも成人83,013人を追った研究では、立つ時間そのものは心血管疾患のリスク低下と結びつかず、立ちすぎるとむしろ下肢静脈瘤などの循環器の不調が増える関係が見えました。大事なのは机の高さより、座位を減らして動きを挟むこと。デスクの使い方を、研究の範囲と注意点つきでまとめました。

健康のためにスタンディングデスクを買った。今日も机を上げて、立ったまま画面に向かっている。

午後になると足は少し重い。それでも「座りっぱなしよりは体にいいはずだ」と、そのまま立ち続ける——。

そんな立ち方をしている人は、多いはずです。

でも、大きな研究では、立つ時間そのものは心臓の病気のリスク低下と結びついていませんでした。

しかも立ちすぎると、別の循環器の不調が増える関係も見えています。

「立てば安心」という思い込みを、研究をもとに見直します。

立ちすぎは、座りすぎの答えではなかった

2024年、シドニー大学などの研究チームが、立つ・座るという姿勢と病気の関係を大規模に調べました。

使ったのは、イギリスのUK Biobankに参加した成人83,013人のデータ。平均年齢は61歳です。

自己申告ではありません。手首に着けた加速度計で、1日にどれだけ座り、どれだけ立っていたかを1週間記録しました。

その後、平均で約7年間、追跡しています。

分かったことは、大きく2つです。

1つ目。座りすぎは、やはりリスクと結びついていました。

座っている時間が1日10時間を超えると、そこから1時間増えるごとに、心血管疾患のリスクが平均しておよそ15%ずつ高い関係が見えました。心血管疾患とは、心臓病・脳卒中・心不全のこと。追跡中に6,829件ありました。

2つ目が、今回の意外な点です。

立っている時間は、心血管疾患のリスクを下げていませんでした。長く立っても短く立っても、リスクは変わらなかったのです。

むしろ、立つ時間が1日2時間を超えると、そこから30分増えるごとに、起立性の循環器疾患のリスクが平均で1割ほど高い関係が出ました。

起立性の循環器疾患とは、長く立つことで下半身の血のめぐりに関わる不調です。下肢静脈瘤(足の血管が浮き出る)、起立性低血圧(立ちくらみ)などがこれにあたります。追跡中に2,042件でした。

下の図が、立つ時間と2つのリスクの関係です。

1日に立っている時間を横軸に、2つのリスクの動きを比べた模式図。心血管疾患のリスクは立つ時間を増やしても横ばいで関連が見られない。一方、起立性の循環器疾患(下肢静脈瘤・立ちくらみなど)のリスクは、立位が1日2時間を超えると右肩上がりに高くなる。UK Biobankの成人83,013人を約7年追跡し、立位2時間超は30分ごとにHRが0.11上がったという数値をもとにした図
図1: 立つ時間を増やしても心血管リスクは下がらず、長い立位は起立性の不調を増やした(当サイト作成)

見てのとおり、立つ時間を増やしても心血管のリスクは横ばい。一方で、長く立つほど起立性の不調は増えていきます。

ただし、読み違えは禁物です。

これは大勢を追いかけて関連を見た観察研究で、立ち方が病気を「引き起こした」と示したわけではありません。相関と因果は別ものです。

参加者は平均61歳。姿勢の記録も、装着した1週間ぶんです。若い人や、この期間より先の影響までは分かりません。

研究チームも、「立ちすぎても、座りすぎた分は埋め合わせられない」と述べるにとどめています。

机の高さより、「動くきっかけの数」で使う

ここから、自分のデスクの使い方を選び直せます。

判断の軸は、机の高さ(座るか立つか)ではありません。その机が、動くきっかけを1日に何回つくれるかです。

立ちっぱなしは、座りっぱなしの言い換えにすぎません。どちらも「同じ姿勢のまま動かない」点では同じだからです。だから、長く立っても座りすぎの埋め合わせにはなりませんでした。

そこでスタンディングデスクを、「ずっと立つための台」ではなく「動くきっかけを増やす台」として使い直します。

コツは、立ち時間の”長さ”を数えないこと。代わりに、姿勢を切り替えた”回数”を数えます。机を上げ下げするたびに、立つ・座り直すという小さな動きが起き、それが「ついでに数歩歩く」入口になるからです。

配分も、この順で考えます。立位は座位の代わりに少し混ぜる程度でよく、いちばん増やしたいのは、座位と立位のあいだに挟む歩きの回数のほうです。

世界保健機関(WHO)のすすめも、ここに重なります。座っている時間を減らし、どんな軽さでもいいので体を動かすこと。強い運動でなくても、動きは動きです。

研究チームが挙げていたのも、こうした細切れの動きでした。席を立って数歩歩く、階段を使う、昼休みに机から離れて歩く。机は、その合図を出す道具として置いておきます。

今日からの一手

欲張らず、タイミングを1つだけ決めます。

1時間に一度、席を立って2〜3分歩く。合図は「毎時ちょうど」に固定する。

時計が0分を指したら立つ、と決めておくと、いちいち考えずにすみます。スマホのタイマーを毎時に鳴らしてもいいでしょう。

  1. デスクにいる時間、毎時ちょうどにタイマーを鳴らす
  2. 鳴ったら、いったん立って2〜3分歩く(トイレ・給湯・資料を取りに行く、で構わない)
  3. スタンディングデスクがあるなら、立ちっぱなしにせず、座位と立位を数十分ごとに入れかえる
  4. 立位が2時間ほど続いたと感じたら、少し歩いてリセットする

立つ時間を長くすることが目的ではありません。座り続ける時間を、細かく断ち切ることが目的です。

立ち仕事が長い人へ

最後に、線引きを一つ。

もともと立ち仕事が長い人は、話が別です。販売・調理・製造ラインなど、すでに一日じゅう立っている人にとって、この研究は「さらに立ちましょう」という話ではありません。

示されたのは、「座りっぱなしの人が、立つだけで安心はできない」という点です。

下肢静脈瘤や足のむくみ、立ちくらみが気になる人は、立位を増やす前に主治医へ相談してください。ここで挙げたのは一般的な考え方で、治療や診断の代わりではありません。

やることは、むずかしくありません。座り続けた時間を、こまめに断ち切る。それだけです。

動きを挟む具体策は、座りっぱなしを「2分の歩き」で区切るにもまとめています。歩く量そのものが気になるなら、歩数と死亡リスクの関係もどうぞ。ほかの記事は健康のまとめからたどれます。

まずは次の「毎時ちょうど」に、席を立って少し歩いてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. スタンディングデスクは「立ちっぱなし」にせず、座位と立位を切り替える台として使う
  2. 立ちすぎない。同じ姿勢の立位が2時間ほど続いたら、いったん歩きを挟む
  3. 1時間に一度は席を立って2〜3分歩く。合図を「毎時ちょうど」など決まった時刻に固定する
  4. 立つことより、1日に座っている総量を減らすほうを優先する
  5. 立ち仕事が長い人・下肢静脈瘤やむくみが気になる人は、立位を増やす前に主治医へ相談する

出典・参考

  1. Ahmadi MN, Coenen A, Straker L, Del Pozo Cruz B, Stamatakis E. (2024) Device-measured stationary behaviour and cardiovascular and orthostatic circulatory disease incidence. International Journal of Epidemiology, 53(6), dyae136.academic.oup.com
  2. World Health Organization. Physical activity(fact sheet)who.int

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。