16時間断食で減った体重、その約3分の2は筋肉だった——時間を狭めるだけでは差が出ない
Health / Research Digest

16時間断食で減った体重、その約3分の2は筋肉だった——時間を狭めるだけでは差が出ない

「16時間空ければ痩せる」と夕食を早く切り上げる人は多い。でも過体重の成人116人・12週間の試験では、16:8と時間を変えない食事とで体重の減りに差はなく、体組成を精密に測った人では減った分の約3分の2が筋肉でした。試験の範囲と注意点も添えます。

「16時間だけ空ければ、あとは食べても痩せる」。

そんな話を聞いて、夕食を早めに切り上げる。あるいは朝食を抜いて、昼から食べはじめる。

いわゆる「オートファジーダイエット」や「16時間断食」です。食べる時間を8時間に狭めるだけ、という手軽さで広まりました。

でも、食べる中身と量をそのままにして、時間だけ狭めたら、体はどう動くのか。それを正面から調べた試験があります。

この試験が調べたこと

2020年、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが、試験の結果を発表しました(JAMA Internal Medicine)。

対象は、過体重・肥満の成人116人。12週間、2つのグループに分けて比べました。

  • 16:8グループ: 食べるのは正午〜20時の8時間だけ。残り16時間は水などカロリーのない飲み物のみ
  • 対照グループ: 食べる時間は変えず、1日3食をこれまでどおり

大事なのは、どちらのグループにも「何を・どれだけ食べるか」の指示をしなかった点です。変えたのは、16:8グループの「食べる時間帯」だけ。

12週間後、体重はどうだったか。

16:8グループは平均0.94kg減。対照グループは0.68kg減。

そして2つのグループの差は、わずか0.26kg。統計的に意味のある差ではありませんでした(P=.63)。

つまり食べる中身と量が同じなら、時間を16:8に狭めても、体重の減りはほとんど変わらなかった、ということです。

減った体重の「中身」に注意

もう一つ、見逃せない結果があります。ただし、ここから先は対象の人数が変わるので、そこに注意してください。

ここまでの「116人・平均0.94kg減」は、参加者全員の体重の話です。ここから紹介する「筋肉の割合」は、その中の一部だけを、より詳しい機械(DXA)で測った結果です。

対面で参加し、DXAで体組成を最後まで測れたのは46人(16:8グループ22人、対照グループ24人)。このサブグループだけで見ると、16:8グループが12週間で減らした体重は平均で約1.7kgでした。全体116人の平均0.94kg減より、大きく減っています。

この46人の16:8グループが減らした体重のうち、約65%が除脂肪量、つまり筋肉などでした。

体重を落とすとき、ふつうは脂肪が主に減ってほしい。減量で失われる除脂肪量は、目安として2〜3割ほどと言われます。

ところがこのサブグループでは、その2倍以上が筋肉側から減っていました。手足の除脂肪量の指標でも、16:8グループのほうが対照グループより減っています(群間差 -0.16kg/m²、P=.005。これも同じ46人のデータです)。

帯グラフ。この試験の対面参加者46人(16:8群22人)のDXA測定では、16:8群が減らした体重のうち除脂肪量(筋肉など)が約65%、脂肪が約35%。通常のダイエットで想定される除脂肪の割合は20〜30%で、それを大きく上回っている
図1: 対面参加者46人(16:8群22人)のDXA測定では、減った体重に占める筋肉の割合が、通常の想定よりずっと大きかった(当サイト作成)

見てのとおり、減った体重のうち筋肉が占める割合が、通常の想定よりずっと大きくなっています。ただしこれは、対面参加者46人という一部のデータです。「参加者116人全員が同じ割合で筋肉を減らした」という意味ではありません。

なぜこうなったのかは、この試験だけでは分かりません。論文の著者は、たんぱく質の摂取量が影響した可能性を挙げています。

なお、この試験ではどちらのグループにも運動の指示をしていません。ただしこれは試験の設計上の事実であって、著者が筋肉減少の原因として挙げているわけではありません。

そして、これは116人・12週間の一つの試験です。健康な体重の人や高齢者では確かめられていません。「時間制限そのものが筋肉を削る」と決めつけられる段階ではありません。

日本の「夕食抜き」に置き換えると

仕事帰りが遅く、夜は軽く済ませる。朝が忙しく、昼まで食べない。こうして自然に16:8になっている人は少なくありません。

この試験が示すのは、時間を狭めること自体は近道ではない、ということです。

食事が昼から夜に寄れば、つい早食いや量の増加が起きやすい。8時間の中でまとめて食べれば、1日にとるカロリーは減りません。

体重を動かしたいなら、結局は「1日に何を・どれだけ食べるか」に向き合うことになります。

別の大きな試験も、同じ方向を指しています。中国の肥満の成人139人を12か月追った試験(NEJM 2022)です。8〜16時の時間制限に加えてカロリー制限をした群と、カロリー制限だけの群を比べました。

両群とも体重は落ちましたが、時間制限を足したことによる上乗せは見えませんでした。減量を動かしていたのは「時間」より「量」だった、と読めます。

16:8を試すなら、こう組む

やめる必要はありません。生活リズムとして食べる時間を狭めるのが合う人もいます。ただ、体重や体づくりを目的にするなら、時間だけに頼らないことです。

  1. 食べる時間を狭めるだけで満足せず、1日の食事の量と中身も見直す
  2. 8時間の中で、たんぱく質(肉・魚・卵・大豆・乳製品)を毎食とる。筋肉の材料を切らさない
  3. 週2回ほど、スクワットや腕立てなど自重の運動を足す。減量中の筋肉の維持を助ける狙い
  4. 体重計の数字だけで判断しない。可能なら体組成計で、筋肉と脂肪の変化も見る

まずは、8時間の最初の食事に、たんぱく質を一品足すところから始めてください。

向いていない人・注意したいこと

次の人は、食べる時間を変える前に必ず医師へ相談してください。

  • 糖尿病などで薬を使っている人(食事を抜くと低血糖の恐れ)
  • 妊娠中・授乳中の人
  • 過去に摂食障害の経験がある人
  • 成長期の子ども

そして、ここで紹介したのは「食べる中身と量を変えないままの16:8」を12週間見た、一つの試験の結果です。すべての断食が無意味という話ではありません。カロリー制限を組み合わせた設計では、また違う結果が出ています。

効果には個人差があります。体重が思うように動かない日が続いても、自分を責める必要はありません。

食べる時間との付き合い方は、健康の柱でも扱っています。数字のノルマに縛られたくない人は、「1日1万歩」は絶対条件じゃないも同じ視点で読めます。

食べる時間を狭めることは、ゴールではなく入り口です。

まずは次の食事で、皿の中身を一つだけ見直してみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 食べる時間を狭めるだけで満足せず、1日の食事の量と中身も見直す
  2. 8時間の中で、たんぱく質(肉・魚・卵・大豆・乳製品)を毎食とる
  3. 週2回ほど、スクワットや腕立てなど自重の運動を足す
  4. 体重計の数字だけで見ず、可能なら体組成計で筋肉・脂肪の変化も見る
  5. 糖尿病で薬を使う人・妊娠中・授乳中・摂食障害の経験がある人は、食事の時間を変える前に主治医へ相談する

出典・参考

  1. Lowe, D. A., Wu, N., Rohdin-Bibby, L., Moore, A. H., Kelly, N., Liu, Y. E., et al. (2020) Effects of Time-Restricted Eating on Weight Loss and Other Metabolic Parameters in Women and Men With Overweight and Obesity: The TREAT Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine, 180(11), 1491-1499.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Liu, D., Huang, Y., Huang, C., Yang, S., Wei, X., Zhang, P., et al. (2022) Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss. The New England Journal of Medicine, 386(16), 1495-1504.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。