机が散らかると集中できないのは — 目に入る物が、注意を静かに奪い合っているから
デスクに物が積もると、なぜか作業が進まない。それは気のせいではなく、視界の中の物どうしが注意を奪い合っているからかもしれません。脳の仕組みと、今日机の上を整える手順をまとめました。
机の上に、読みかけの本、書類の山、コップ、充電ケーブル。パソコンの画面にも、開きっぱなしのタブが並ぶ。
やることは1つのはずなのに、なぜか集中が続かない。
これは片づけが苦手なせいでも、根気の問題でもないかもしれません。目に入る物の多さそのものが、静かに集中を削っている可能性があります。
視界の物は、脳の中で「席」を取り合っている
複数の物が同時に視界にあるとき、脳はそれらを等しく見てはいません。処理できる量に限りがあり、物どうしがその容量を奪い合います。
プリンストン大学のマクメインズとカストナーは2011年、この奪い合いをMRIで調べました。掲載誌は Journal of Neuroscience です。
参加者は10人。画面に複数の図形を同時に見せ、脳の視覚野の反応を測りました。
分かったのは、物が並ぶと、脳の中でお互いの反応を抑え合うこと。1つに注意を向けると、その抑え合いはやわらぎました。
言いかえると、注意は限られた予算です。視界に物が多いほど、1つあたりに回せる分が薄くなります。
下の図が、散らかった視界と整った視界での、注意の配られ方の違いです。
見てのとおり、物が多い側では注意が枝分かれし、作業に届く分が細くなります。整えた側は、同じ注意がまっすぐ作業に向かいます。
ただし、ここは慎重に見てください。これは10人の、抽象的な図形を使った実験室の課題です。あなたの机でそのまま同じ結果になるわけではありません。
散らかった部屋でも、成績は落ちなかったという報告
面白いことに、逆向きの結果もあります。
別の研究チームは2021年、162人を2つの部屋に分けました。片方は片づいた部屋、もう片方はかなり散らかった部屋です。
予想では、散らかった部屋で注意テストの成績が下がるはずでした。ところが、成績の平均に差は出ませんでした。
一方で、散らかった部屋の人は「気が散る」「落ち着かない」と感じやすかった。物をため込みやすい傾向の人ほど、その差は大きくなりました。
つまり、効きめは場面と人によります。全員の成績を一律に下げる、というほど単純ではありません。だからこそ、狙いを絞るのが現実的です。
散らかりやすいのは、机だけではない
視界と言うと机を思い浮かべます。でも、注意を取り合う「物」は、画面の中にもあります。
在宅ワークなら、机より先に、目の前の3つを見直すと効きます。
- パソコンのデスクトップ: アイコンが敷き詰められた画面
- ブラウザ: 開きっぱなしのタブの列
- スマホ: アプリが並んだホーム画面
これらは作業と関係なく視界に居座り、注意の予算を少しずつ持っていきます。
とくに、今の作業と近い物ほど強く競合します。資料を作るときに、別案件の書類が横にあると気が散るのは、このためです。
作業の切り替えも、同じように注意を削ります。詳しくはマルチタスクは速くないで扱っています。
今日、視界を軽くする3ステップ
片づけは根性ではなく、手順にすると続きます。完璧は目指さず、今の作業のじゃまだけを外します。所要は合わせて5分です。
- 机の上を2分でリセット。 今の作業に使う物だけ残し、あとは箱か引き出しに一時避難させる
- 画面のタブを1つに絞る。 今開くべきタブを決め、関係ないタブは閉じるかブックマークへ(30秒)
- スマホは視界の外へ。 裏返して、腕を伸ばしても届かない場所に置く(10秒)
3つ全部でなくても構いません。効くのは1番です。
まずは、今の作業に要らない物を机から1つどけるところから始めてください。視界が軽くなるほど、注意はまっすぐ目の前に戻ってきます。
集中を仕組みで守る考え方は集中・生産性の歩き方にまとめています。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 作業を始める前に、机の上を2分でリセット。今の作業に使う物だけ残す
- 画面のタブは、今開くべき1つを決め、残りは閉じるかブックマークへ
- スマホは裏返して、腕を伸ばしても届かない場所に置く
- とくに、今の作業と近い物(別案件の書類など)から先にどける
出典・参考
- McMains, S., & Kastner, S. (2011) Interactions of Top-Down and Bottom-Up Mechanisms in Human Visual Cortex. Journal of Neuroscience, 31(2), 587-597.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Woody, S. R., Lenkic, P., Jiang, P., & Bogod, N. M. (2021) Effect of environmental clutter on attention performance in hoarding. Journal of Obsessive-Compulsive and Related Disorders, 31, 100690.doi.org
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。