ブルーライトカット眼鏡で睡眠は良くなる?——研究が示す「確かな効果はまだない」
パソコン用のブルーライトカット眼鏡は「睡眠に良い」と売られています。でも17件の試験をまとめたコクランの検証では、睡眠への効果は『非常に不確か』でした。米国眼科学会も購入を推奨していません。眼鏡より先に試せる、夜の光の整え方もまとめました。
「PCメガネ、つけますか?」。メガネ屋でそう聞かれ、レンズ代に数千円の上乗せを提示される。
パソコン作業は長いし、夜は布団の中でスマホを見てしまう。これをかければ、寝つきも良くなるかもしれない——。
そう思って、追加料金を払うか迷ったことはないでしょうか。
先に結論を言います。「睡眠が良くなる」という部分には、まだ確かな裏づけがありません。研究が実際に何を見つけたのか、そして眼鏡より先に試せることを、正直にまとめます。
その「睡眠に良い」は、どこから来たのか
ブルーライト(青い光)は、スマホやパソコンの画面から出る、波長の短い光です。
この青い光が体内時計や眠気のホルモンに影響する。だから「カットすれば目にやさしく、眠りにも良い」。そんな売り文句が広まりました。
理屈としては、もっともらしく聞こえます。だからこそ、レンズのオプションとして世界中で売られています。
でも、「理屈が通っている」ことと「実際に効果が確かめられている」ことは、別の話です。ここを分けて考える必要があります。
17件の試験をまとめた検証で分かったこと
世界中の研究を集めて評価する「コクラン」という国際的なグループがあります。医療の情報では、もっとも信頼される評価の一つです。
2023年、コクランはブルーライトカットレンズについて、17件のランダム化比較試験(質の高い研究デザイン)をまとめて検証しました。
調べたのは、目の疲れ・見え方・そして睡眠への影響です。
睡眠についての結論は、こうでした。効果があるかどうかは「非常に低い確実性」——つまり、良いとも悪いとも言えるだけの確かな証拠が、まだない、というものです。
ここは、正確に受け取ってください。「効果がないと証明された」のではありません。「あるともないとも、まだ確かめられていない」段階だ、という意味です。
下の図が、コクランがつけた「確かさ」の位置です。
見てのとおり、睡眠への効果は、いちばん下の「非常に低い」に位置しています。
ちなみに、短時間かければ目の疲れがやわらぐ、という主張についても、コクランははっきりした裏づけを見つけていません。
米国眼科学会も、眼鏡はすすめていない
この見方を後押しするのが、米国眼科学会(AAO)の公式見解です。
AAOは、パソコン作業のためにブルーライトカット眼鏡を買う必要はない、という立場をとっています。
画面のブルーライトが目にダメージを与えるという、確かな証拠はありません。目の疲れの主な原因は、光の色ではなく「画面を長く見続けること」そのものだ、と説明しています。
眼科の専門団体が「わざわざ買う必要はない」と言っている。迷っている人にとって、これは心強い判断材料です。
買うか迷ったら、原因の「置き場所」で考える
ここまでを、買うかどうかの判断に落とし込みます。
2つの調べものが指しているのは、こういうことです。眠りを左右するのは、光の「量」と「浴びる時間帯」。目の疲れを生むのは、画面を「見続けること」。
どちらの原因も、レンズの色とは別のところにあります。
ブルーライトカット眼鏡がいじれるのは、画面の光の「色み」だけです。原因の本丸には、手が届いていません。
だから「眠りや目の疲れを何とかしたい」が目的なら、眼鏡は遠回りになりがちです。まず原因のある場所——光の量と、見る時間——から動かすほうが、筋がいいはずです。
眠りのために、先に動かせること
夜の強い光が寝つきを遅らせることは、いくつもの研究で確かめられています。しかもこれは、青い光だけの問題ではありません。光そのものの強さと、浴びる時間帯が効いてきます。
順番はこうです。上から順に、今夜から試せます。
- 寝る90分前に、部屋を暗くする。 天井のシーリングライトを消し、手元の間接照明かデスクライト1つだけにする。色は電球色(暖色)に。
- 画面の輝度を半分以下に下げる。 さらに夜間モードを自動化します。iPhoneは「設定→画面表示と明るさ→Night Shift」、Androidは「設定→ディスプレイ→夜間モード」で、21時から自動オンにできます。
- 布団に入る30分前に、スマホを手放す。 寝室の外か、ベッドから手の届かない場所で充電する。「布団の中でSNS」を物理的にやめるのが、いちばん確実です。
どれも無料で、今夜からできます。眼鏡を1つ買い足すより先に、この3つを1週間だけ試してみてください。
夜の光の整え方は、夜の光を暗めに整える手順でくわしく説明しています。
「かけてはいけない」という話ではない
最後に、誤解のないよう線を引きます。
ここで言えるのは、「ブルーライトカット眼鏡で睡眠が良くなる、という確かな証拠はまだない」ということだけです。「かけてはいけない」でも「まったく無意味」でもありません。
かけると心地よい、まぶしさが減って楽になる。そう感じる人もいます。装用そのものに害があるわけではないので、気に入っているなら使い続けて問題ありません。
ただ、「これさえかければ眠れる」と、眠りの改善を眼鏡だけに期待するのは、今のところ根拠が追いついていません。
そして、目の乾きや疲れが続く、見え方に不安がある、眠れない日が続く。そんなときは、眼鏡で自己解決しようとせず、眼科や医療機関で相談してください。原因は光ではなく、別のところにあるかもしれません。
眠りにまつわる小さな工夫は、健康の柱でもいくつか扱っています。
眼鏡を買い足す前に。今夜は部屋の明かりを、一段落としてみませんか。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 寝る90分前に天井の照明を消し、手元の暖色ライト1つにする
- 画面の輝度を半分以下にし、夜間モードを21時に自動オンにする
- 布団に入る30分前、スマホは寝室の外か手の届かない場所へ置く
- 目の疲れや眠れない日が2週間以上続くなら、眼科・医療機関で相談する
出典・参考
- Singh, S., et al. (2023) Blue-light filtering spectacle lenses for visual performance, sleep, and macular health in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews, CD013244.pub2.cochranelibrary.com
- American Academy of Ophthalmology. Are Computer Glasses Worth It?aao.org
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。