眠気覚ましのガムは「噛む前」が肝心——効果は15〜20分ほどで薄れる
Health / Research Digest

眠気覚ましのガムは「噛む前」が肝心——効果は15〜20分ほどで薄れる

眠気覚ましにガムを噛む人は多いですが、研究では『噛み続ける』より『始める5分前に噛む』ほうが成績に効果的で、その効き目は15〜20分ほどで薄れることが分かっています。仕組みと使い方を、研究の限界も含めてまとめました。

午後の会議中、まぶたが重くなる。

資料をめくる手が、いつのまにか止まっている。

そんなとき、机の引き出しからガムを取り出す人は多いはずです。眠気覚ましのガムは、単なる気休めではありません。噛む行為と覚醒度の関係は、十数年にわたって研究されてきました。

ただし、ただ噛めばいいわけではないようです。研究が示すのは「いつ噛むか」で結果が変わる、という意外な一点でした。

「作業前の5分」で成績が上がった実験

2011年、アメリカの研究チーム(Onyperら)が、ガムを噛むタイミングを変えて、認知課題の成績を比べる実験を行いました。掲載誌はAppetite誌です。

参加者は3つの条件に分かれます。テストの前に5分だけガムを噛む条件、テストの間ずっと噛み続ける条件、まったく噛まない条件です。

結果ははっきりしていました。複数の指標で成績が上がったのは、テスト前に5分だけ噛んだ条件だけ。噛みながらテストを受けた条件には、同じような伸びは見られませんでした。

さらに、この効果はテスト中ずっとは続きません。差がはっきり見られたのは、テストが始まってから15〜20分ほどでした。

それを過ぎると、噛んだかどうかによる違いは薄れていきました。すべての種類の課題に効果が出たわけでもありません。

効果には、賞味期限があります。

下の図が、この実験で見えたタイミングです。

作業前に5分間ガムを噛んだ場合、テスト開始から15〜20分は成績の向上が見られたが、その後は差が薄れた。噛みながらテストを受けた場合は、同じような伸びは確認されていない、という実験結果を示した図。
図: ガムの効果が出るタイミング——作業前の5分がカギで、効果は15〜20分ほどで薄れる(当サイト作成)

見てのとおり、鍵になるのは「噛み続けること」ではありません。始める直前の数分間です。

噛むことそのものが、脳を軽く覚醒させる

なぜ、噛んでいる最中よりも、噛んだ直後のほうが効果につながるのでしょうか。

2015年、イギリスのアレンとスミスが、ガムに関するそれまでの研究をまとめてレビューしました。掲載誌はBioMed Research International誌です。

そこで示されていたのは、「噛む」という動作そのものが、心拍数や脳波(とくに前頭部・側頭部のベータ波)をわずかに高めるという生理的な変化でした。研究者らは、これを「咀嚼による軽い覚醒」と説明しています。

つまり主役は、ガムの味や成分ではなく、あごを動かす行為そのものです。

噛むことで一時的に脳が軽く覚醒し、噛み終えたあとも、その高まりがしばらく残ります。だから「噛んでいる最中」より「噛んだ直後」に効果が表れやすいと考えられます。

では、噛み続けても差が出にくいのはなぜでしょうか。同じ動作をずっと続けると、刺激としての目新しさが薄れ、覚醒の高まりも頭打ちになりやすいためと考えられます。区切りとして数分だけ噛むことが、かえって「始まりの合図」として働くのかもしれません。

この覚醒はあくまで軽度で一時的なものです。同じレビューでは、注意力や作業成績への効果は比較的くり返し確認されている一方、気分やストレスへの効果は研究によってばらつきがあると指摘されています。1日程度の短い実験で、ストレス感が確実にやわらぐかどうかは、まだはっきりしていません。

会議前、勉強の再開前——使う場面

この使い方が向くのは、眠気が来るタイミングがあらかじめ分かっている場面です。

たとえば、13時から始まる会議室での打ち合わせ。ランチのあと、14時台にパソコンへ向き直ってデスクワークを再開する瞬間。この時間帯にまぶたが重くなる人は多いはずです。

試験前、最後の休み時間に廊下や自習室で過ごす10分。新幹線や電車を乗り継いだあと、資料を開いて集中し始める瞬間も同じです。

いずれも、「これから20分ほど頭を使う」という見通しが立つ場面です。噛みはじめるタイミングを、作業の開始に合わせて決めておくのがコツです。

今日から試す3つのポイント

やることは、シンプルです。

  1. 眠気が来そうな時間を決め、その5分前を「噛みはじめ」の時刻にする(例: 午後2時からの会議なら1時55分にガムを口に入れる)
  2. 作業や会議が始まったら、そのまま取りかかる(噛み続けるかどうかは自由)
  3. 効果が強く出るのは最初の15〜20分、と見積もっておく

コツは、作業が始まってから噛み始めないこと。実験で成績が上がったのは、あくまで「事前に5分」噛んだ条件でした。

効果の範囲と、気をつけたいこと

ガムを噛む習慣は、道具もお金もほとんどいらない小さな工夫です。ただし、過大な期待は禁物です。

効果は軽度で、持続時間も限られています。実験室での認知課題の結果であり、実際の仕事や勉強の成果をそのまま保証するものではありません。個人差もあります。

睡眠不足そのものを補う方法ではない点も、覚えておいてください。根本的な眠気対策は、まず睡眠時間を確保することです。短い仮眠でリセットする方法は15分の仮眠、カフェインと組み合わせる方法はコーヒーナップも参考になります。

顎の不調や口腔内のトラブルがある人は、無理にガムを噛まないでください。体調に不安がある人は、自己判断で続けず、専門家に相談してください。

まずは今日、眠気が来そうな時間の5分前に、ガムをひとつ用意してみてください。噛むタイミングを合わせるだけの、小さな実験です。

眠気に負けない体の整え方は、健康の柱でも取り上げています。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 眠気が来そうな時間の5分前に、ガムを用意する
  2. 作業や会議が始まる直前に、5分間しっかり噛む
  3. 効果のピークは最初の15〜20分と心づもりしておく
  4. 効果が薄れてきたら、また少し噛んで一呼吸置く
  5. 顎や口に不調がある人は無理せず、別の方法を選ぶ

出典・参考

  1. Onyper, S. V., Carr, T. L., Farrar, J. S., & Floyd, B. R. (2011) Cognitive advantages of chewing gum. Now you see them, now you don't. Appetite, 57(2), 321-328 — ガムを噛むタイミングを変えて認知課題の成績を比較する実験。テスト開始前に5分間ガムを噛んだ条件でのみ複数の指標で成績向上がみられ、噛みながらテストを受けた条件では同じような伸びは確認されなかった。効果はテスト開始から15〜20分ほど持続し、その後は差が薄れた。すべての認知領域に効果が及んだわけではないpubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Allen, A. P., & Smith, A. P. (2015) Chewing Gum: Cognitive Performance, Mood, Well-Being, and Associated Physiology. BioMed Research International, 2015, 654806 — 複数の研究をレビュー。ガムを噛む行為は心拍数や前頭部・側頭部の脳波ベータ帯域をわずかに高め、『咀嚼による軽い覚醒』が覚醒度・注意力の向上と関連すると説明。ただし気分やストレスへの効果は研究間でばらつきがあり、1日程度の短い実験でストレス感が確実にやわらぐかは明らかでないと指摘pmc.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。