習慣が続かないなら『する』より『なる』——言い方を変えると行動が変わる
Habits / 実践メソッド

習慣が続かないなら『する』より『なる』——言い方を変えると行動が変わる

「今年こそ運動する」と決めても三日で終わる。足りないのは意志ではなく、自分への言い方かもしれません。「運動する」ではなく「運動する人でいる」と自分を語ると行動が変わった研究をもとに、運動・片づけ・勉強・節約に使える手順にまとめました。

「今年こそ運動する」と手帳に書いた。なのに三日で、シューズは玄関に置きっぱなし。

意志が弱いのだろうか、と落ち込む必要はありません。

変えるといいのは、やる気ではありません。自分への言い方です。「運動する」ではなく「運動する人でいる」。たったこれだけで、選ぶ行動が変わることが分かっています。

「する」を「なる」に変えるだけで、行動が変わった

手がかりは、心理学の2つの研究です。

1つ目は、アメリカの選挙前に行われた調査です。研究チームは、投票日の前にこうたずねました。片方には「投票することは、どれくらい大切ですか」。もう片方には「投票する人になることは、どれくらい大切ですか」。

違いは、動きを表す「する」か、どんな人かを表す「〜する人」か。ほぼ一語だけです。

結果、「〜する人」とたずねられたグループのほうが、実際の投票率が高くなりました。役所の記録で確かめた本物の行動で、その差は約10ポイントありました。

もう1つは、ズルをめぐる実験です。「ズルをしないでください」と言われた人より、「ズルする人にならないでください」と言われた人のほうが、ズルをしませんでした。

どちらも、行動そのものではなく「どんな人か」に触れる言い方に変えただけ。自分を「〜する人」と語ると、行動がそこに寄っていくのです。

ただし、ここは正直に。調べられたのは投票とズルという、特定の場面です。参加者も数十人から200人ほど。「どんな習慣でも、名前を変えれば続く」とまでは言えません。それでも、試す価値のある一手ではあります。

「やるぞ」と気合いを入れるほど、続かない

「運動する」という言い方には、すき間があります。

「する・しない」を、毎回その場で決めることになるからです。疲れた日、雨の日、気分が乗らない日。そのたびに天秤にかけて、たいてい「今日はやめとこう」に傾きます。

でも「運動する人でいる」なら、話が変わります。やるかどうかの問題ではなく、自分がどういう人か、の問題になる。人は、自分が思っている自分の姿から、そう大きく外れない行動を選びます。

左右2つの言い方を比べた図。左は『する』の言い方で、『運動する』と考えると、やるかどうかを毎回決めることになり、気分しだいで揺れて先延ばししやすい。右は『なる』の言い方で、『運動する人でいる』と考えると、自分の見方から決まり、迷いが減って行動を選びやすい。
図: 「する」より「なる」と考えると、次の行動を選びやすい(当サイト作成)

見てのとおり、変えているのは行動の中身ではありません。頭の中の言い方だけです。

今日からできる「その人でいる」やり方

覚えることは、ほとんどありません。

1. 変えたい行動を、名詞で言い換える

「運動する」→「体を動かす人でいる」。「片づける」→「散らかさない人でいる」。「勉強する」→「毎日机に向かう人」。「節約する」→「お金を大事に使う人」。動きではなく、どんな人か、で言い直します。

2. 迷った瞬間に、一度だけ自分に聞く

やろうか迷ったら、「その人なら、どうする?」と一言。運動する人なら、とりあえず着替える。散らかさない人なら、使ったものを1つ戻す。答えは、たいてい自分で分かります。

3. 小さな「その人らしい行動」を、毎日1回だけ

いきなり30分走らなくていい。スクワット1回でも、机に1分座るでも十分です。小さくても「やっぱり自分はこういう人だ」という感覚が、次の一回を呼びます。

きっかけを忘れやすいなら、すでに毎日やっている動作の直後に乗せると続きます。やり方は「すでにやっていること」の直後にくっつけるにまとめました。

うまくいかないとき

本当はやりたくない役は、名乗っても続きません。

「早起きする人」と唱えても、朝がどうしても苦手なら苦しいだけです。自分が「そうでありたい」と思える姿を選んでください。無理な役を演じるのは、意志で押し切るのと変わらず、いつか切れます。今すぐ一発で結果が欲しい場面にも、この考え方は向きません。日々の小さな選択を、少しだけ軽くする発想です。

人への宣言は、逆に動けなくすることがあります。

「私はランナーです」と周りに広めると、認められた時点で満足してしまい、かえって走らなくなる場合があります(目標は人に言うと叶う、とは限らない)。変えるのは、人へのアピールではなく、自分の中の言い方です。

一度サボっても、「自分はやっぱりダメだ」と決めつけない。

一日空いただけで、その人でなくなるわけではありません。責める代わりに、「明日もこういう人でいる」と戻ればいい。基準は下げず、ゆるめるのは自分への口調だけです。

まずは、変えたい行動を1つ、名詞で言い直すところから。「運動する」ではなく「体を動かす人でいる」。言い方がひとつ変わると、今日の小さな選択が、少し軽くなります。習慣を意志ではなく見方で支える考え方は、習慣の柱にまとめています。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 変えたい行動を名詞で言い換える(「運動する」→「体を動かす人でいる」)
  2. 迷った瞬間「その人ならどうする?」と一度だけ自分に聞く
  3. 小さくても「その人らしい行動」を1日1回だけやる
  4. なりたい自分に無理がないか確かめる(嫌な役は続かない)

出典・参考

  1. Bryan, C. J., Walton, G. M., Rogers, T., & Dweck, C. S. (2011) Motivating voter turnout by invoking the self. PNAS, 108(31), 12653-12656.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Bryan, C. J., Adams, G. S., & Monin, B. (2013) When cheating would make you a cheater: Implicating the self prevents unethical behavior. Journal of Experimental Psychology: General, 142(4), 1001-1005.(全文はペイウォールのため、出典リンクは PubMed の抄録とする)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。