目標は人に言うと叶う、とは限らない——公言が行動を止めるとき
Habits / Research Digest

目標は人に言うと叶う、とは限らない——公言が行動を止めるとき

「作家になる」「独立する」。目標は人に宣言すると叶う、とよく言われます。でも研究では、なりたい自分を人に認められると、満足してかえって行動が減ることがありました。宣言が効くときと逆効果のときの境目、そして「次の一歩」を人と共有するコツをまとめました。

「作家になる」「いつか独立する」。決めたからには、まわりに宣言しよう。そう思って、SNSやランチの席で口にする。

言った手前、やるしかない——はずなのに、なぜか熱が冷めていく。

宣言すれば叶う、とよく言われます。でも、いつもそうとは限らないようです。

「認められる」と、やった気になってしまう

ゴルヴィツァーらが2009年に、4つの実験でこれを調べました。

参加者に、なりたい自分に関わる目標(たとえば「一人前の法律家になる」)と、そのための行動の予定を書いてもらいます。

一方のグループは、その予定を実験者に見て・認めてもらいました。もう一方は、書いても気づかれずに終わります。

すると、目標を「認めてもらった」グループのほうが、そのあとの行動が少なくなりました。手を動かす時間も、機会に飛びつく素早さも下がったと報告されています。

しかも、その目標を強く目指している人ほど、この傾向がはっきり出ました。

なぜか。人に認められると、「もうその人になれた」ような満足が先に来てしまう。その満足で、実際に行動するやる気が下がるのだと説明されています。

実験室が中心で、対象は”なりたい自分”に関わる目標です。すべての公言に当てはまるわけではなく、効き方には個人差があります。

目標を公言したあとに何が起きるかを2つの道で比べた図。左の道は「なりたい自分を宣言→称賛される→もうなれた気で満足→そのあとの行動が減る」。右の道は「宣言せず次の一手を決める、または責任を頼む→満足はおあずけ→そのあとの行動が増える」。称賛で満たされると足が止まりやすいことを示している
図1: 称賛で満たされると、足が止まりやすい(当サイト作成)

図のように、危ないのは「認められて、そこで満足してしまう」道です。

宣言が効くとき、逆効果のとき

分かれ目はここです。「作家になります!」と言って「すごいね」と返される。この称賛で、なった気持ちだけが満たされます。

一方で、決意そのものは行動になりにくい、というのは別の研究でも言われています。意図と行動のあいだにはギャップがあり、それを埋めるのは具体的な計画です。

だから、語るなら「なりたい自分」ではなく「次にやる一手」。いつ・どこで・何をするかを決めるほうが、行動に近づきます。やり方はif-thenプランニングにまとめました。

人に言うなら「称賛」より「責任」

それでも人の力を借りたいなら、頼み方を変えます。

「応援して」ではなく、「進み具合を見張って」。称賛ではなく、責任にするのです。

締め切りや小さな賭けを人とのあいだに置くと、逃げ道が減ります。この仕組みはコミットメント装置にまとめました。

  1. なりたい自分を宣伝したくなったら、いったん口をつぐむ
  2. 代わりに「今週やる具体的な行動」を決める(いつ・どこで・何を)
  3. 人に伝えるなら、称賛より「進み具合を確認して」と責任を頼む
  4. SNSで宣言して満足しそうなときは、投稿前に1回分やってから書く

語る前に、一歩だけ

最後に、ひとつだけ。

「なりたい自分」を語って認められると、なった気がして足が止まる。だから、語る前に一歩だけ進んでおく。

書き上げた1ページ、走った1キロ。それを見せるほうが、宣言よりずっと前に進みます。

続け方そのものは、習慣の柱でもまとめています。

今日の目標は、口に出す前に、まず小さく1回やってみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. なりたい自分を宣伝したくなったら、いったん口をつぐむ
  2. 代わりに「今週やる具体的な行動」を決める(いつ・どこで・何を)
  3. 人に伝えるなら、称賛より「進み具合を確認して」と責任を頼む
  4. SNSで宣言して満足しそうなときは、投稿前に1回分やってから書く
  5. 目標そのものより、進めた「次の一歩」を人と共有する

出典・参考

  1. Gollwitzer, P. M., Sheeran, P., Michalski, V., & Seifert, A. E. (2009) When Intentions Go Public: Does Social Reality Widen the Intention-Behavior Gap? Psychological Science, 20(5), 612-618.d-nb.info
  2. Sheeran, P., & Webb, T. L. (2016) The Intention-Behavior Gap. Social and Personality Psychology Compass, 10(9), 503-518.eprints.whiterose.ac.uk

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。