型から入ると習慣は早く固まる——場所と時間を変えない練習法
Habits / Research Digest

型から入ると習慣は早く固まる——場所と時間を変えない練習法

「型から入る」は精神論ではなく、研究の裏づけがあるかもしれません。場所と時間を変えずに練習した学生は自動性が高く、実行意図の研究でも「いつ・どこで・どうやるか」を先に決めるほど目標に届きやすいと分かっています。今日から作れる型の手順をまとめました。

新しい習慣を始めるとき、気分に合わせて場所や時間をアレンジしていませんか。

月曜は自宅のリビングでストレッチ、水曜は仕事帰りのカフェでノートを広げる。時間も、その日の空き具合しだいで夜だったり早朝だったり。決まりを作らないほうが、気負わず続けられる気がしてきます。

けれど1週間、2週間とたつころ、「あれ、今日はどこでやるんだっけ」と手が止まる日が増えていく——そんな覚えはないでしょうか。

このやり方は、実は遠回りかもしれません。

場所と時間を変えずに繰り返した人のほうが、「考えなくても体が動く」状態に早く近づいた、という研究があります。

「型から入る」の正体

日本の稽古ごとには「守破離(しゅはり)」という考え方があります。

最初は師匠の型をそっくりそのまま真似る「守」。慣れたら少しずつ崩す「破」。最後は型を離れ、自分のやり方を作る「離」です。

茶道や武道に古くからある教えの順序で、それ自体が科学的に検証された理論ではありません。多くの解説では、「守」の意味は師匠への敬意や忍耐力といった、心がまえの話として語られます。

けれど、今回とりあげる2つの研究をあわせて読むと、もう少し具体的な景色が見えてきます。型を守ることと、行動が自動で出てくることのあいだに、関連が見られるのです。

なぜ関連するのか。ひとつの読み方が、型が脳の負担を減らしているのではないか、という見方です。

場所や時間を毎回選び直すと、そのたびに「今日はどこでやろう」「何時にしよう」という小さな判断が挟まります。

型を固定すれば、この選び直しの場面は自然と減ります。ここまではただの理屈です。

研究が実際に測ったのは、その先でした。型を保てた人ほど自動性(考えなくても行動が出る度合い)が高い、という関連がデータで確認されています。

「判断が減るから自動化する」という筋道は、その関連を説明する一つの読み方にすぎません。データが直接示したのは、型を保てたことと自動性が一緒に高くなるという関連までです。あいだの仕組みまでは、まだ証明されていません。

「守」は、判断のコストを減らすための具体的な設計なのかもしれません。精神論として語られがちなこの言葉に、2つの研究は「型の一貫性と自動性は関連する」という手がかりを与えてくれます。

場所と時間を変えないほど、体は早く覚えた

手がかりになるのが、2022年に発表された2つの研究です。

ドイツの研究チームが、Frontiers in Psychologyにまとめました(Stojanovicら)。

1つ目は大学生95人を対象にした実験です。参加者は6週間、新しい習慣を毎日実行しました。

このとき、半数には「毎回同じ場所・同じ時刻で行う」よう指示し、残り半数には「毎回ちがう場所・ちがう時刻で行う」よう指示しています。

指示どおり、同じ場所グループの文脈安定性スコア(11点満点・0〜10のスケール)は平均8.13。ちがう場所グループは2.99でした。はっきり差がついています。

場所と時間を固定するよう指示された安定群と、毎回変えるよう指示された変動群の、文脈安定性スコア(11点満点・0〜10のスケール)を比べた横棒グラフ。安定群は平均8.13点、変動群は平均2.99点で、大きな差がついている。大学生95人が6週間、新しい習慣を実行した実験の結果(出典: Stojanovic, Grund, Fries 2022)
図1: 場所と時間を固定した群は、文脈安定性スコアが大きく高かった(当サイト作成)

見てのとおり、指示どおりに場所と時間を固定できたかどうかで、差は明確です。

そして本題はここからです。この文脈安定性が高いほど、「自動性」(考えなくても行動が出る度合い)が高く、決めた回数をやりきる達成度も高い、という関係が統計的に確認されました。

アプリの実利用データでも同じ傾向

2つ目の研究では、習慣アプリの実利用データ(ユーザー218人・習慣308個)を分析しています。こちらも同じ向きの関係が確認されました。

つまり、意図して場所と時間を変えずに繰り返すほど、行動は自動化に近づきやすい。実験と実データ、2つの角度から確認された関連です。

ただし、「型さえ保てば必ず自動化する」と保証するデータではありません。1つ目は6週間の短期実験、2つ目は現実のアプリ利用を後から分析した相関です。

とくに2つ目の実データには、注意がいります。もともと計画的な人ほど型を保つのが得意で、習慣化そのものも上手なのかもしれません。すると、型が自動性を生んだのか、几帳面さが両方を引き上げたのか、実データだけからは切り分けきれません。だから本記事も「型を保てた人ほど自動性が高い傾向がある」という言い方にとどめています。

「いつ・どこで・どうやるか」を先に決める型

「守」の効果を裏づけるもう一つの研究があります。

心理学者ゴルヴィツァーとシーランが2006年にまとめたメタ分析です。94件の独立した検証を集めています。

対象は、目標を「もし状況Yになったら、行動Xをする」という一文であらかじめ決めておく手法、実行意図(if-thenプランニング)です。

結果、この手法は目標達成に中〜大程度の効果(d = .65)を示しました。

「いつ・どこで・どうやるか」を先に一つの型として固定し、毎回その場で考え直す手間を省く。この点は、守破離の「守」の発想そのものです。

合図の種類(いつもの動作の後か、決まった時刻か)自体は、定着に差がなかったという研究もあります。

くわしくは新しい習慣、どこにくっつけるか迷わなくていいにまとめました。

今回の2つの研究が示したのは、合図の種類ではありません。選んだ型を毎回変えずに保てたかどうか、という一貫性そのものとの関連です。

今日から作る「型」

会社員でも学生でも、手順は同じです。

  1. 続けたい行動を1つだけ選ぶ(3分)。「筋トレ」ではなく「腕立て10回」まで具体的に絞ります。
  2. 場所・時間・やり方を1文にする(3分)。「もし帰宅して部屋着に着替えたら、リビングで腕立てを10回する」のように書きます。
  3. その1文を、毎回そっくり同じ形で実行する。カフェの日も自宅の日も作らず、同じ場所・同じ時間に固定します。
  4. 数週間はアレンジを足さない。回数を増やしたくなっても、まずは型どおりに繰り返します。

この型がどれくらいで体になじむかの目安は、「習慣は21日」は嘘、本当は59〜66日にまとめています。型を決めるところまではif-thenプランニングのやり方がそのまま使えます。

型を崩していいタイミング

ずっと同じ型のままでいる必要はありません。

守破離でも、「守」はあくまで最初の段階にすぎません。行動が自動的に出るようになってきたと感じたら、時間帯を前後にずらす、場所を変えるなど、少しずつ自分に合わせて崩していってかまいません。

これは稽古ごとの伝統的な順序にもとづく一般的な目安であり、今回の研究が直接検証したわけではありません。焦って崩すよりも、体が覚えてから崩すほうが安全という考え方だと捉えてください。

自己流のアレンジは、型が身についたあとのごほうびです。意志の力に頼らず仕組みで習慣を支える考え方は、習慣づくりの柱でもまとめています。

まずは1つの行動を選び、場所と時間を変えない1文の型を書くところから始めてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 続けたい行動を1つだけ選ぶ
  2. 場所・時間・やり方を1文の「型」に書く(もし〇〇なら、△△する)
  3. 数週間は型を変えず、毎回同じ場所・同じ時間で行う
  4. 体が覚えるまでは自己流のアレンジを足さない
  5. 型が馴染んでから、少しずつ自分に合わせて崩していく

出典・参考

  1. Stojanovic, M., Grund, A., & Fries, S. (2022) Context Stability in Habit Building Increases Automaticity and Goal Attainment. Frontiers in Psychology, 13, 883795.doi.org
  2. Gollwitzer, P. M. & Sheeran, P. (2006) Implementation Intentions and Goal Achievement: A Meta-Analysis of Effects and Processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69-119.cancercontrol.cancer.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。