血圧が高めなら試したい「壁スクワット」——等尺性運動が有酸素より効いた研究
健康診断で血圧が高めと言われたけれど、運動の時間は取りにくい。270件の試験をまとめた研究で、壁に背をあずけて座る等尺性運動が、有酸素運動より大きく安静時の血圧を下げたと報告されました。道具のいらない壁スクワットを、安全に試す手順と注意点までまとめました。
健康診断で「血圧が高め」と言われた。でも、ジムに通う時間はないし、薬はまだ飲みたくない。
そんなとき、まず頭に浮かぶのはウォーキングかもしれません。
ところが最近、意外な運動が注目されています。
壁に背中をあずけて、ただ座るだけ。「壁スクワット」と呼ばれる動きです。
道具もいらず、場所も取らない。その効き目を、大きな研究をもとに見ていきます。
いちばん血圧を下げたのは「静かに耐える」運動だった
2023年、イギリスの研究チームが、運動と血圧の関係を大規模にまとめました。
集めたのは、270件のランダム化比較試験。参加者は合わせて約1万5800人です。
有酸素運動、筋トレ、HIIT(短時間の高強度運動)、そして等尺性運動。種類ごとに、安静時の血圧がどれだけ下がったかを比べました。
等尺性運動とは、関節を動かさず、同じ姿勢で力を入れ続ける運動です。壁スクワットや、こぶしを握り続けるハンドグリップがこれにあたります。
結果を、下の図にまとめました。
いちばん大きく下がったのは、等尺性運動でした。最高血圧(収縮期)で平均8.24、最低血圧(拡張期)で平均4.00mmHg下がっています。
有酸素運動(約4.5mmHg)や筋トレ(約4.6mmHg)の、2倍近い下がり幅です。
さらに一つひとつの運動で比べると、最高血圧を下げる効果がもっとも高かったのは壁スクワットでした。
ただし、読み違えたくない点があります。
これは「安静時の血圧が、平均してどれだけ下がったか」の話です。全員が同じだけ下がるわけでも、病気が治るわけでもありません。
多くは数週間ほどの試験で、遠い先の効果までは分かっていません。研究チーム自身も、この結果をもとに「運動のすすめ方を見直す余地がある」と述べるにとどめています。
確立した特効薬ではなく、有力な選択肢が一つ増えた。そう受け取るのが正確です。
「基本」は変えず、その上に足す
血圧が気になるとき、まず何がすすめられているのでしょうか。
厚生労働省の情報では、高血圧の目安は最高血圧140、最低血圧90mmHg以上。対策の柱は、減塩・適正体重・お酒を控えること、そして体を動かすことです。
運動としてすすめられているのは、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動。ここは今も変わりません。
壁スクワットは、この基本を置きかえるものではありません。 有酸素運動の時間が取りにくい日に、静かに足せる一手として考えてください。
たとえば、歯みがきのあいだ。テレビのCMのあいだ。お湯がわくのを待つあいだ。
立っている時間を、少しだけ「壁に座る時間」に変える。それなら、毎日の中に置けそうです。
今日からの「壁スクワット」
やり方はシンプルです。
- 壁に背中をぴったりつけ、足を一歩前に出す
- ひざが直角に近づくまで、ゆっくり腰を落とす(つらければ浅くてよい)
- その姿勢のまま、静かに保つ
- ゆっくり立ち上がって、ひと休みする
大事なのは、息を止めないことです。
力を入れている最中は、血圧が一時的に上がります。歯を食いしばって息を止めると、その上がり方が大きくなります。ふうっと息を吐きながら、呼吸を続けてください。
長さも、欲張らないことです。慣れないうちは20〜30秒から。きつすぎない角度で、週に2〜3回を目安にします。
痛みや強い動悸を感じたら、すぐにやめる。「もう少し」を我慢して続ける運動ではありません。
始める前に、確認したいこと
最後に、いちばん大切な線引きを一つ。
等尺性運動は、その最中に血圧を一時的に上げます。だからこそ、次の人は自己判断で始めないでください。
- 血圧がかなり高い人(目安として最高180・最低110mmHg以上)
- 心臓や血管に持病がある人、その疑いを指摘されている人
- 妊娠中の人、体調に不安がある人
こうした場合は、始める前に主治医へ相談を。厚生労働省も、運動の前に心臓などの持病がないか確認するようすすめています。
そして、壁スクワットは薬の代わりではありません。すでに治療を受けている人が、自分の判断で薬をやめる理由にもなりません。
血圧や運動の話は、健康のまとめから他の記事もたどれます。有酸素運動を続けたいなら、歩数は7〜8千歩でリスクが大きく下がるとあわせて読むのもいいでしょう。
まずは今夜、歯をみがくあいだだけ。壁に背中をあずけて、静かに座ってみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 壁に背をつけ、つらくない角度まで腰を落として、その姿勢を静かに保つ
- 息を止めない。力むと血圧が一時的に上がるので、呼吸を続ける
- 1回は短く。慣れないうちは20〜30秒から、週2〜3回を目安に
- 有酸素運動・減塩・適正体重といった基本と組み合わせる(置き換えない)
- 血圧がかなり高い人・心臓や血管に持病がある人は、始める前に主治医へ相談する
出典・参考
- Edwards JJ, Deenmamode AHP, Griffiths M, et al. (2023) Exercise training and resting blood pressure: a large-scale pairwise and network meta-analysis of randomised controlled trials. British Journal of Sports Medicine, 57(20), 1317-1326.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」kennet.mhlw.go.jp
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧症を改善するための運動」kennet.mhlw.go.jp
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。