パスワードを覚えるのはもうやめる——「思い出す」をアプリに預ける
サイトごとに違うパスワードを求められ、結局は使い回すか、毎回「忘れた」を押している。覚える力の問題ではなく、やり方の問題でした。記憶をアプリに預けて、覚えるのは1つだけにする手順を、無料で始められる形にまとめました。
新しいサービスに登録するたび、パスワードを決めさせられる。安全にと言われても覚えきれず、結局はいつものを使い回す。そして時々、ログイン画面で「パスワードをお忘れですか」を押している。
これは、あなたの記憶力の問題ではありません。
人が正確に覚えておける複雑な文字列の数は、もともと多くありません。だったら、覚える仕事そのものを道具に預けてしまえばいい。それが、この記事のやり方です。
「覚える」を道具に預けるという発想
心理学に、認知の外部化(cognitive offloading)という考え方があります。
頭の中だけで抱えていた作業を、外の道具に肩代わりさせて、脳の負担を減らすことです。カナダとイギリスの研究者が2016年にまとめた解説では、予定をスマホのリマインダーに入れる行為などが、その代表例として挙げられています。
パスワード管理も、まさにこれです。何十個ものパスワードを頭で抱えるのをやめ、専用の道具にしまう。あなたが覚えるのは、そのしまい場所を開ける「親鍵」1つだけになります。
見てのとおり、頭で持つのは1つだけ。残りは金庫にあたるアプリが抱えます。
なぜ「気合いで覚える」は破綻するのか
サイトごとに強くて別々のパスワードを作れば、たしかに安全は上がります。でも、それを全部覚えるのは、現実にはできません。
だから多くの人が、同じパスワードを使い回します。すると1か所が漏れたとき、他のサービスまで芋づるで危なくなります。
「忘れたら再設定すればいい」も、毎回のメール確認と入力で、地味に時間を溶かします。
覚える量を減らすのではなく、覚える場所を1つにまとめる。発想を切り替えると、この行き詰まりから抜けられます。
今日から始める手順
新しく買うものはありません。無料で始められます。
- まず道具を1つ選ぶ。スマホやブラウザには管理機能が最初から付いているもの(iPhone や Chrome など)があり、手軽です。端末をまたいで使いたいなら、無料で使えるBitwardenのようなアプリもあります
- 「マスターパスワード」を1つ決める。これだけは自分で覚えるので、長く、他で使っていないものにする
- 以降は、登録や変更のたびに、アプリの「強いパスワードを作る」機能にまかせる。自分で考えない
- ログインは自動入力にまかせ、あわせて二段階認証も設定する
最初に既存のアカウントを移すのは少し手間です。でも、よく使うものから数個ずつでかまいません。
道具に記憶を預ける発想は、アプリ活用の柱でもいくつか扱っています。メモを外に出して頭を軽くする話は、メモ・ノートアプリも参考になります。
預けるのが不安なとき
「全部を1つのアプリに入れて大丈夫?」という不安は、もっともです。
要は、そのアプリを開ける「マスターパスワード」の強さがすべてになる、ということです。だからそこだけは手を抜かない。紙に書いて安全な場所に控えておくのも、現実的な備えです。
自分で作った似たようなパスワードを使い回し続けるより、強い親鍵1つで守るほうが、多くの場合は安全に近づきます。まずは、いちばんよく使うサービスのパスワードを、アプリに任せて作り直すところから始めてみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- スマホやブラウザ内蔵の管理機能、または無料アプリを1つ選ぶ
- 覚えるのは「マスターパスワード」1つだけにし、これは長く強くする
- 新規登録や変更のたびに、アプリで強いパスワードを自動生成する
- ログインは自動入力にまかせ、二段階認証も合わせて設定する
出典・参考
- Risko, E. F. & Gilbert, S. J. (2016) Cognitive Offloading. Trends in Cognitive Sciences, 20(9), 676-688.samgilbert.net
- Bitwarden 公式ヘルプ(Getting started with the Bitwarden web app)bitwarden.com
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。