休憩でスマホを見ると集中が戻りにくい——休み方を変えるだけ
休憩のたびにスマホを見るのに、なぜか頭は重いまま。実験では、スマホで休んだ人ほど、その後の作業がはかどりませんでした。休憩そのものは効くのに、中身しだいで回復が変わります。スマホを見ない休み方を、研究をもとにまとめました。
作業に疲れて、ひと休み。手はいつのまにかスマホをのぞいています。
数分たって画面を閉じても、頭は重いまま。集中は戻ってきません。
休んだのに休んだ気がしない。その原因は、意志の弱さではなく「休憩のしかた」かもしれません。
スマホで休んだ人だけ、作業が戻らなかった
研究者のカンとカーツバーグは2019年、休憩のしかたがその後の作業にどう響くかを調べ、専門誌に発表しました。
参加者は大学生414人です。文字を並べ替えて単語を作る難しい問題を解いてもらい、途中で休憩を入れました。休憩中は、スマホ・パソコン・紙のどれか1つで買い物リストを選んでもらいました。ほかに、休憩を取らない群もつくっています。
ただし、休憩の内容は買い物リスト作りの1種類だけです。仕事や、もっと長い休憩でも同じ結果になるかは、この実験からは分かっていません。
差は、休憩のあとの問題に出ました。もっとも成績が落ちたのは、スマホで休んだ人たちです。
スマホで休んだ人は、パソコンや紙で休んだ人たち全体と比べて、解けた問題が約22%少なく、かかった時間は約19%長くなりました。
休まなかった人と比べると、スマホで休んだ人のほうが解けた問題は少し多めでした。それでも、パソコンや紙で休んだ人たちには届きません。
一方、かかった時間は、休まなかった人とほとんど変わりませんでした。
休憩そのものは、ちゃんと効く
といっても、休憩そのものが悪いわけではありません。
22件の研究(合計2,335人)の結果をまとめて分析した研究が、2022年に発表されています。10分以内の短い休憩で、活力が上がり、疲れが軽くなる小さな効果が確認されました。ただし、作業の成績への効果までは確認されていません。
だから問題は「休むこと」ではなく、「休憩に何をするか」のほうにあります。
なぜスマホだと戻らないのか
集中力のもとになる「注意力」は、使うほど消耗すると考えられています。自然の中で過ごすなど、注意を使わない時間をとると、注意力は回復するといわれています。
ところがスマホは、注意を使わせる道具です。
カーツバーグは、スマホを見ると「メッセージを確認したい」「誰かとつながっていたい」「もっと情報を見たい」という気持ちがわいてくる、と説明しています。紙やパソコンでは、こうした気持ちは起こりにくいといいます。
そのため、休んでいるつもりでも注意が使われ続け、回復しにくいのではないか、と考えられます。ただし、この仕組み自体を実験で測ったわけではありません。
下の図は、休憩のしかたによって注意がどれだけ回復するかを示したものです。研究結果の数値ではなく、イメージを図にしたものです。
休んだ時間が同じでも、そのあいだ注意を休ませられたかどうかで、戻り方に差が出るのかもしれません。
職場でも自宅でも、休憩のしかたは変えられる
とはいえ、スマホから完全に離れるのは難しい場面もあります。スマホを見る代わりに別のことをする「置き換え」から始めましょう。
会社員なら、昼休みや作業の合間に窓の外へ目をやる。飲み物を取りに少し歩く。それだけで、注意を使わない時間になります。
在宅で働く人なら、椅子から立って洗濯物をたたむ、ベランダに出て空を見る。画面から目と手を離すのがねらいです。
学生や受験生なら、机に伏せて目を閉じましょう。次の科目の動画を見はじめるのは避けてください。休憩になりません。
コツは、休憩でやることを「先に」決めておくこと。決めていないと、無意識にスマホへ手が伸びます。
今日から試す「スマホを見ない5分」
道具はいりません。やることは5つです。
- 休憩に入る前に、スマホを手の届かない所へ置く
- 5分の休憩は、窓の外を見る・歩く・目を閉じるにあてる
- 同僚と話すなら、仕事から離れた雑談にする
- 連絡を確認したいときは、用件だけ見てすぐ閉じる
- 休憩のあとは、まず最初にやる作業を1つ決めて取りかかる
連絡待ちで画面を見る必要がある仕事なら、無理にやめなくて大丈夫です。用件を確認したら閉じましょう。
集中を保つ工夫は集中の技術にまとめています。
つぎに休憩に入るとき、スマホへ伸びる手を1回だけ止めてみてください。その5分が、このあとの集中を変えるかもしれません。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 休憩に入る前に、スマホを手の届かない所へ置く
- 5分の休憩は、窓の外を見る・歩く・目を閉じるにあてる
- 同僚と話すなら、仕事から離れた雑談にする
- 連絡を確認したいときは、用件だけ見てすぐ閉じる
- 休憩後は、最初の一手だけに注意を戻す
出典・参考
- Kang, S., & Kurtzberg, T. R. (2019) Reach for your cell phone at your own risk: The cognitive costs of media choice for breaks. Journal of Behavioral Addictions, 8(3), 395-403.(PubMed 抄録)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Rutgers University プレスリリース(ScienceDaily 2019年8月19日転載)— 上記 Kang & Kurtzberg 2019 の発表。スマホで休んだ人は、ほかの休憩をまとめた群に比べて解いた問題が22%少なく、所要時間が19%長かったこと、スマホは確認・つながり・情報への関与を呼び起こすという著者の説明を確認sciencedaily.com
- Albulescu, P., et al. (2022) 'Give me a break!' A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLOS ONE, 17(8), e0272460.(全文オープンアクセス)journals.plos.org
- Kaplan, S., & Berman, M. G. (2010) Directed Attention as a Common Resource for Executive Functioning and Self-Regulation. Perspectives on Psychological Science, 5(1), 43-57.(PubMed 抄録)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。