覚える前に問題を解くと記憶に残りやすい——答えを知らず間違えても学びは深まる
Learning / Research Digest

覚える前に問題を解くと記憶に残りやすい——答えを知らず間違えても学びは深まる

新しい範囲を読む前に、答えを知らないまま一度問題に答えてみる。ほとんど外れても、そのあと読んだ内容が記憶に残りやすくなる——大学生を対象にした複数の実験でみられた傾向です。予習で先に問いへ触れる勉強法を、今日から試せる手順にまとめました。

資格のテキスト、新しい業務の手順書、久しぶりの学び直し。新しいことを覚えるとき、練習問題や確認テストは「まだ習っていないんだから解けない」と後回しにして、説明から読み始めます。

答えを知らないのに先に問題を解くなんて、時間のむだに思えます。

でも、その「解けない問いに一度向き合う」ひと手間こそが、あとで読む内容を残りやすくする。そんな研究があります。

答えを知らずに間違えるほうが、あとで残る

カリフォルニア大などの研究チームが、2009年に学習の実験を行いました。

大学生に、視覚のしくみについての文章を読ませます。片方のグループには、読む前にその内容についての問題を出しました。答えはまだ本文に出ていないので、ほとんど外れます。もう片方には、同じ範囲を長く読む時間を与えました。

あとで行ったテストでは、先に問題に答えたグループのほうが良い成績でした。正答率はおよそ75%、読む時間を延ばしただけのグループは56%ほどだった、と報告されています。

この結果は5つの実験でくり返し確かめられています。しかも両方のグループに、大事な言葉を太字で同じように見せていました。つまり「そこへ注目させたから」ではなく、一度問われたこと自体が効いていたのです。

別の研究チームも、似た結果を報告しています。単語の組み合わせを覚える課題で、先にあてずっぽうで答えたほうが、あとで思い出せた割合が高くなりました(約7割対約5割)。ただし、外した直後に正解を見せることが条件でした。

気をつけたいのは、どちらも実験室での平均的な傾向だという点です。対象は大学生、教材は短い文章や単語でした。効果には個人差があり、多様な教科や問題で同じように出るかは、これからの検証が必要だとされています。

先に問いへ触れると、あとの成績がどう変わるのか。下の図がその一例です。

あとのテストの正答率を比べた横棒グラフ。読む時間を延ばしただけのグループは56%で棒が短い。先に問いに答えてから読んだグループは75%で棒が長く、答えは外れてOKという注記が添えられている。先に一度問われたほうが後の正答率が高い様子を示す図
図1: 答えが外れても、先に問われたほうがあとのテストで上に出る(当サイト作成)

見てのとおり、答えを外していても、先に問いに答えたほうがあとのテストで高く出ています。

なぜ、外した推測がこれほど効くのでしょうか。先に問いへ向き合うと、頭の中に「ここに答えが入る」という空きスペースができます。予想が外れるほど、正解を読んだときの「そうか、そこか」というズレも大きくなる。

このズレが、記憶に引っかかるフックになります。何も考えずに読み始めると、この引っかかりは生まれません。

「予習で先に問う」を仕事と勉強に

このやり方は、特別な道具はいりません。今ある教材のまま始められます。

資格の勉強なら、テキストを開く前に、章末問題や過去問を先にざっと解いてみる。多くの問題集は、過去問の選択肢が本文の太字とつながっています。

仕事でも同じです。新しい業務の手順書や社内マニュアルを渡されたら、いきなり読み込まず「この作業は何のためにやるんだろう」と、見出しから答えを想像する。

研修やセミナーの資料も、配られた見出しを見て、中身を予想してからページをめくります。

外れて構いません。むしろ外した問いほど、正解を読んだときに「あ、そこか」と引っかかりやすくなります。

覚えたあとに思い出す練習(思い出す勉強法)は、頭に入れた知識を引き出して定着させるやり方です。この「先あて」はその逆で、学ぶ前に問う。前と後ろから挟めば、同じ範囲を二度、別の角度で記憶に刻めます。

どちらも覚え方・学び方の技術の一つ。学ぶ前と後ろから支えるほど、覚えた内容は抜けにくくなります。

今日から試す「先あて」勉強法

手順はシンプルです。3ステップで終わります。

  1. 新しい範囲を読む前に、その範囲の問い(章末問題・見出し・過去問)を先に見る
  2. 答えが分からなくても、思いつく答えを一度書くか、口に出す
  3. 本文を読み、さっき答えた問いの正解をその場で確かめる

大事なのは、外した答えを必ず正解と照らし合わせることです。間違えたまま放っておくと、その間違いが残ることもあります。

問いは1回に2〜3問で十分です。全部やろうとすると続きません。まずは今日開く1ページの、章末の1問を先に解くところから始めてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 新しい範囲を読む前に、章末問題や過去問に先に目を通す
  2. 答えが分からなくても、思いつく答えを一度書くか口に出す
  3. 本文を読んだら、先に答えた問いの正解をその場で確かめる
  4. 予習の問いは1回2〜3問でよい。時間をかけすぎない

出典・参考

  1. Richland, L. E., Kornell, N. & Kao, L. S. (2009) The Pretesting Effect: Do Unsuccessful Retrieval Attempts Enhance Learning? Journal of Experimental Psychology: Applied, 15(3), 243-257.(読む前に問われた条件の事後正答率75%対、読む時間を延ばした条件56%/大学生・5実験)learninglab.uchicago.edu
  2. Kornell, N., Hays, M. J. & Bjork, R. A. (2009) Unsuccessful Retrieval Attempts Enhance Subsequent Learning. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 35(4), 989-998.(先に推測して外し、直後に正解を見た条件のほうが後で思い出せた割合が高い/実験1はUCLA学部生25名)web.williams.edu

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。