覚えた直後にスマホを見ない——10分の休息で記憶が残りやすくなる
Learning / Research Digest

覚えた直後にスマホを見ない——10分の休息で記憶が残りやすくなる

参考書を閉じた瞬間、手はもうスマホに伸びている。じつは覚えた直後の10分をどう使うかで、数日後に残る量が変わります。静かな休息が記憶の定着を助けた——大人を対象にした研究でみられた傾向を、今日から試せる形にまとめました。

「よし、覚えた」。参考書を閉じた次の瞬間、手はもうスマホに伸びている。SNSを開いて、動画を1本。

数日後、あれほど読んだはずの内容が、ほとんど残っていない。

これは記憶力のせいではないかもしれません。カギは、覚えた直後の”10分”を何に使うかでした。

覚えた直後の休息が、7日後の記憶を分けた

デュワーらの研究チームが、2012年に面白い実験をしています(Psychological Science 誌)。

大人たちに、2つの物語を聞いてもらいます。片方の物語のあとは、10分間ただ静かに休む。もう片方のあとは、10分間「まちがい探し」ゲームをする。

すると、静かに休んだあとの物語のほうを、よく覚えていました。差は直後だけではありません。7日後に思い出してもらっても、休んだ側がはっきり上でした。

しかも、休んでいるあいだに内容を思い出す指示は出していません。ただ休むだけで差がついた。ここがこの研究の要点です。

2014年には、同じチームがより細かく調べました(PLOS ONE 誌・全文公開)。健康な高齢の大人70人に15個の単語を聞かせ、10分の静かな休息か、まちがい探しかに分けます。テストは15分後と7日後。やはり休息の側がよく残り、その差は7日後まで保たれました。

研究者の結論はこうです。記憶が伸びたのは、休みながら意識して復習したからではない。ただ静かにしていたことで、脳が記憶を”固める”作業を進められたからだ、と。

ただし、これは主に高齢の大人を対象にした研究で、覚える材料も短い単語や物語です。効果には個人差があり、「そういう傾向がある」として受け取るのが妥当です。

「何もしない」より「新しい情報を入れない」

では、休息中は瞑想のように”完全な無”でなければいけないのか。そこは、もう少し新しい研究が助けになります。

2022年、オンラインで154人に同じ実験を試した報告があります(Frontiers in Psychology 誌)。ここでも、静かに休んだ人は、頭を使う課題をした人より内容をよく思い出しました(効果量 d≒0.5)。

面白いのは、いちばん成績が悪かったのが「休みながら音を聞かされた」条件だったことです。

つまり効くのは「何もしないこと」そのものより、覚えた直後に”新しい入力”で脳を上書きしないこと。まちがい探しも、通知音も、SNSも、脳にとっては割り込んでくる新しい情報です。

下の図が、その分かれ道です。

「覚えた直後」から2つの道が分かれる図。上の道は「静かに休む(新しい情報を入れない)」→10分→「7日後もよく残る」で、記憶の残りを示す帯が長い。下の道は「スマホ・動画(新しい情報が上書き)」→10分→「7日後は薄れやすい」で、帯が短い。中央に『この10分の過ごし方で差がつく』と書かれている。
図1: 覚えた直後の10分に新しい情報を入れるかどうかで、数日後の残り方が変わる(当サイト作成)

覚えた直後の10分に、何を流し込むか。ここで7日後の残り方が変わってきます。

勉強の”あと”にスマホを開かない

いちばんもったいないのが、覚えた直後にスマホを開く癖です。

資格の勉強をひと区切りした会社員。テキストを閉じてすぐ通知をチェックし、動画を1本見る。その数分で、さっき入れたはずの知識に”新しい情報”が上書きされていきます。

学生も同じです。暗記を1ページ終えたら、その勢いでSNSへ——ではなく、少しだけ間を置く。

コツは、休憩を勉強の”ごほうび”に置かないこと。休憩は、覚えた”直後”にこそ効きます。

通勤や家事のように、ぼーっとできる時間があるなら、その直前に覚えたい5分を差し込むのも手です。覚えたあとに自然と静かな時間がくるので、上書きされにくくなります。

眠っているあいだにも、脳は記憶を整理します(睡眠は記憶を整理する)。起きている10分の休息は、その”昼間版”だと考えると分かりやすいかもしれません。

覚えた直後に別の作業へ飛び移ると、切り替えの”残りカス”で次も散らかりがちです(注意残余)。学び方そのものを整える工夫は、学びの柱でまとめています。

今日から試す「覚えた直後の10分」の使い方

道具はいりません。次に何かを覚えたら、直後の過ごし方だけ変えます。

  1. 覚えたい範囲を1つ読み終えたら、10分は新しい情報を入れない。 スマホ・動画・SNS・ゲームを開かない。これがいちばん効きます。
  2. その10分を、刺激の少ない過ごし方にする。 目を閉じて座る、窓の外を眺める、ゆっくり歩く。頭を「無」にする必要はありません。
  3. 休憩は勉強の”あと”ではなく、覚えた”直後”に置く。 大事な暗記のすぐあとに、この静かな10分をはさみます。
  4. ぼーっとできる時間の直前に、覚えたい5分を入れる。 通勤・入浴・家事の前が狙い目。覚えたあとに、自然と休息が続きます。

まずは今日、勉強をひと区切りした”次の10分”だけ、スマホを伏せてみてください。同じ勉強時間から、数日後に残るものが変わってきます。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 覚えたい範囲を1つ読み終えたら、10分は新しい情報を入れない(スマホ・動画・SNSを開かない)
  2. その10分は、目を閉じて座る・窓の外を眺めるなど刺激の少ない過ごし方にする
  3. 休憩は勉強の"ごほうび"ではなく、覚えた"直後"に置く
  4. 通勤・入浴・家事などぼーっとできる時間の直前に、覚えたい5分を差し込む

出典・参考

  1. Dewar, M., Alber, J., Butler, C., Cowan, N. & Della Sala, S. (2012) Brief Wakeful Resting Boosts New Memories Over the Long Term. Psychological Science, 23(9), 955-960.(物語を聞いた直後の10分を「静かな休息」にすると、「まちがい探し」にした場合より記憶がよく、その差は7日後まで保たれた。休息中に思い出す指示は無し)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Dewar, M., Alber, J., Cowan, N. & Della Sala, S. (2014) Boosting Long-Term Memory via Wakeful Rest: Intentional Rehearsal Is Not Necessary, Consolidation Is Sufficient. PLOS ONE, 9(10), e109542.(健康な高齢の大人が対象。静かな休息は15分後・7日後とも成績が高く、意識した復習ではなく「固める」働き=consolidation で説明。全文公開)journals.plos.org
  3. King, O. & Nicosia, J. (2022) The effects of wakeful rest on memory consolidation in an online memory study. Frontiers in Psychology, 13, 932592.(154人のオンライン実験でも休息群が優位〈d≒0.5〉。いちばん成績が低かったのは「休みながら音を聞かされた」条件で、新しい入力の遮断が要点と示唆)frontiersin.org

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。