「みんなやってる」は行動を動かす——習慣を多数派の情報とセットにする
Habits / Research Digest

「みんなやってる」は行動を動かす——習慣を多数派の情報とセットにする

「自分だけ空回りしている」と感じると、習慣は続きにくいもの。でも研究では、周りの多くの人が実際にやっていると知るだけで、望ましい行動が増えました。続けたい習慣を「多数派の情報」とセットにする、今日できる工夫をまとめました。

ジムに通う、早起きする、家計簿をつける。続けたいのに、自分だけ空回りしている気がする。

「意志が弱いのかな」と落ち込む前に、見てほしいものがあります。

それは、周りの人が実際にどうしているか、という情報です。人はこの情報に、思っている以上に動かされます。

「みんながやっている」を添えると、行動が変わった

多くの人が実際にやっている行動の情報を、心理学では「記述的規範」と呼びます。

ゴールドスタインらは2008年、ホテルで実地実験をしました。タオルの再利用を求める札を、部屋ごとに変えたのです。

「環境を守るため」とだけ書いた札では、再利用は約35%でした。

「このホテルのお客様の75%が再利用しています」と多数派の行動を添えると、約44%に増えました。

さらに「この部屋に泊まった方の多くが再利用しています」と身近な集団を示すと、約49%まで上がりました。

実際に泊まった客の行動を数えた、実地の実験です。ただし米国のホテルでの結果です。

もとの再利用率は文化や地域で大きく違います。効き方には幅があり、個人差もあります。

別の研究も、同じ向きを示しています。ノーランらは2008年、カリフォルニア州の810人に節電について尋ねました。

「周りの家庭が節電しているか」という感覚が、実際の使用量を最もよく予測しました。

ところが本人たちは、その理由を「いちばん動機にならない」と評価していたのです。

続く実地実験でも、「ご近所の多くが節電中」と伝える札が、いちばん電気の使用を減らしました。

人は「みんな」の力を、自分では小さく見積もりがちだと分かります。

下の図が、札の文言を変えたときの再利用率です。

ホテルでタオルの再利用を求めた実地実験(米国)の再利用率を、札の文言別に3本の横棒で比べた図。「環境を守るため」とだけ書いた札では約35%。「多くのお客様が再利用しています」と多数派の行動を添えた札では約44%に増加。「この部屋の多くが再利用しています」と身近な集団を示した札では約49%とさらに高い。数値は実地実験の一例で、もとの再利用率や効き方は文化や状況で変わり、個人差があると注記している。
図1: 身近な「みんな」を示した札ほど、行動する人が増えた(当サイト作成)

効き目がいちばん強いのは、身近な「この部屋の多く」でした。

職場でも家庭でも、「やっている人」を見えるようにする

ここで、似た言葉との違いを1つ。人の目があると単純作業がはかどる話(社会的促進)とは別で、ここでは他人の「行動」そのものが自分の選択を動かします。

この力は、毎日の暮らしでも使えます。鍵は、良い「みんな」を目に入る場所に置くことです。

職場なら、朝いちばんに机を片づける同僚がいるチームの近くに席を選ぶ。

家庭なら、家族が本を読む時間を決めて、リビングに本を出しておく。

地域なら、朝の散歩仲間やジムの常連の輪に入る。続けている人の姿が、いちばんの札になります。

悪い方向の「みんな」からは、少し離れる

注意点もあります。規範は、悪い方向にも働きます。

「みんな残業している」「誰も片づけない」空気の中では、あなたも同じ側に引かれます。

だから、だらける場からは物理的に少し距離を取る。休憩は散らかった席ではなく、片づいた場所でとる。

向かない場面もあります。周りが極端にできている集団では、逆効果のことがあります。「自分だけ遠い」と感じて、かえって手が止まる場合です。

そのときは比べる相手を、同じくらいの段階の人にずらすと楽になります。

今日からできる「多数派を味方にする」3つ

道具はいりません。今日から順番に試せます。

  1. 続けたい習慣を「多くの人がやっている」情報と一緒に目に入れる(実践者の投稿を1つ表示)
  2. 同じ習慣を続ける人が見える場所に、週1回でも身を置く(社内チャット・地域の集まり)
  3. 「自分だけできていない」と感じたら、実際の割合を1度確かめる

コツは、良い「みんな」を探しにいくこと。近くにいなければ、オンラインの輪でも同じ働きをします。

意志ではなく環境の側を変える発想は、初期設定を変えて良い行動を続ける話とも重なります。

悪い「みんな」から距離を取る具体策は、悪習慣を摩擦で断つ話が近いです。習慣を続ける工夫は、習慣の柱でまとめています。

まずは今日、続けたい習慣を「やっている人」が見える場所に、ひとつ置いてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 続けたい習慣は「多くの人がやっている」情報と一緒に目に入れる
  2. 同じ習慣を続ける人が見える場所に、週1回でも身を置く
  3. 「自分だけできていない」と感じたら、実際の割合を確かめる
  4. だらける空気の場からは、休憩だけでも少し離れる

出典・参考

  1. Goldstein, N. J., Cialdini, R. B., & Griskevicius, V. (2008) A Room with a Viewpoint: Using Social Norms to Motivate Environmental Conservation in Hotels. Journal of Consumer Research, 35(3), 472-482.academic.oup.com
  2. Nolan, J. M., Schultz, P. W., Cialdini, R. B., Goldstein, N. J., & Griskevicius, V. (2008) Normative Social Influence is Underdetected. Personality and Social Psychology Bulletin, 34(7), 913-923.journals.sagepub.com
  3. Bohner, G., & Schlüter, L. E. (2014) A Room with a Viewpoint Revisited: Descriptive Norms and Hotel Guests' Towel Reuse Behavior. PLOS ONE, 9(8), e104086.(原実験の再利用率と地域差を報告)pmc.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。