AIに文章を添削してもらうコツ——丸投げせず「観点を指定」して直させる
自分が書いたメールや報告を、AIに「うまく直して」と丸投げすると、別人の文章になって返ってくる。元の文をそのまま貼り、直す観点を絞って伝えれば、自分の言葉を活かしたまま整えられます。公式ガイドをもとに、今日チャット欄で使える頼み方をまとめました。
自分で書いたメール。送る前に、AIに「直して」と頼む。
返ってきた文章は、たしかに整っている。でも、どこか自分の言葉じゃない。挨拶も言い回しも、まるごと別人のものに書き換えられている。
コツは一つ。AIを「共著者」ではなく「校正者」として使うことです。書き直させるのではなく、自分の言葉を残したまま、気になるところだけ直させる。頼み方を少し変えれば、そうできます。
「直して」が別人の文章を生むわけ
「直して」の一言は、AIを共著者にしてしまいます。
どこを・どう直すか。それを決めずに渡すと、AIは「全体をそれっぽく」書き換えます。誤字直しのつもりが、文章まるごとの作り直しになる。校正を頼んだはずが、いつのまにか代筆に変わっている。
ClaudeのAnthropicも、ChatGPTのOpenAIも、指示のコツを公式ドキュメントで公開しています。共通するのは「具体的に、はっきり頼む」こと。Anthropicは「望む出力を具体的に指定する」ことを基本に挙げ、OpenAIも「明確で具体的な指示を出す」ことをすすめています。
裏を返すと、あいまいな「直して」には、あいまいな結果しか返らないということです。
校正者として使う、5つのコツ
共著者ではなく校正者に頼む。そのために、5つを足します。むずかしくありません。チャット欄に日本語で、そのまま書けます。
下の図が、丸投げと観点指定のちがいです。
見てのとおり、分かれ目は「どこを直すか、こちらが決めているか」です。
① 直したい文章を、そのまま貼る
「こんな感じのメール」と説明しないこと。実際の文を、丸ごと貼ります。
公式ガイドでも、扱ってほしい文章は要約せず、そのまま渡すのが基本です。要約や説明で渡すと、AIはあなたの文ではなく、想像で書き始めます。
② 何を直すか、観点を具体的に
「誤字脱字だけ」「冗長なところを削る」「硬い言い方をやわらかく」「一文を短く」。直す観点を、名指しします。
観点を言わないと、AIは全部いっぺんに変えます。名指しすれば、そこだけ直る。
③ 直す方向を、一例で示す
言葉で伝わりにくいときは、例を1つ見せます。「『ご確認いただけますと幸いです』→『ご確認をお願いします』のように、やわらかく短く」。
Anthropicは、例を見せること(少数でも効く)を、出力を思いどおりにする最も確実な方法の一つに挙げています。
④ いきなり直させず、まず「気になる点」だけ挙げさせる
観点を10個並べると、どれも中途半端になります。1〜2個に絞る。
ここが、校正者として使う勘どころです。すぐ直させず、まず「気になる点だけ挙げて」と頼む。指摘を読み、どれを直すかを自分が決めてから、選んだ分だけ直させます。
批評してから直すこの流れは、査読前研究「Self-Refine」の考え方に近いものです。この研究では、AIに自分の出力へ助言させ、それをもとに改善させると、質が上がったと報告されています。
⑤ 採否は、自分で決める
AIの直しは、提案です。正解ではありません。
やわらかくしすぎて軽くなった、大事なニュアンスが消えた——そう感じたら、その直しは採らない。最後に文章の責任を持つのは、書いた本人です。
プロンプトの例(コピーして使えます)
次の頼み方は、そのまま貼って使えます。
「次のメールを添削してください。直すのは誤字と、回りくどい言い回しだけ。意味と丁寧さは変えないで。まず気になる点を挙げてから、直した全文を出してください。」(このあとに本文を貼る)
観点(誤字と冗長)・変えない範囲(意味と丁寧さ)・進め方(挙げてから直す)がそろっています。だから、別人の文章になりません。
会社でも、暮らしの連絡でも
同じ頼み方が、日々の文章にそのまま効きます。
- 上司へ出す報告メール。送信ボタンの手前で止めて、「敬語の誤りと、回りくどい言い方だけ直して。要件は変えないで」。
- 部署の社内チャット。「一文が長くて読みにくい。意味は変えず、二文に分けて」。
- 町内会やPTAの連絡文。「わかりにくい箇所だけ、やさしい言葉に。日時と持ち物は削らないで」。
どれも、書いたのは自分のまま。AIは、送る前のもう一人の目として働きます。
うまくいかないとき
まだ書き換えられすぎる
「意味と語順は変えず、言葉だけ直して」と、縛りを足します。それでも大きく変わるなら、段落ごと・一文ごとに分けて渡す。範囲が狭いほど、暴走しにくくなります。
直した理由を知りたい
「なぜ直したか、一言そえて」と頼みます。理由を読むと、採るか採らないかを、自分で判断できます。
向いていない人
一言のチャットや、社内の走り書きメモに、この頼み方は要りません。ひと目で直せるものを渡すほうが、かえって手間です。
効くのは、送る前に整えたいメール・報告・投稿など、自分の言葉を残したい文章のときです。
ここまでの例文は、ChatGPTやClaudeのチャット欄にそのまま打ち込めます。無料で試せる範囲もあります(執筆時点・2026年8月)。使える機能や料金は変わるので、詳しくは各公式サイトで確かめてください。
まとめ
AIに文章を直させると別人のものになるのは、AIのせいだけとは限りません。共著者として使えば書き直され、校正者として使えば、言葉は自分のまま残る。ちがいは、頼み方だけです。
足すのは、元の文・直す観点・変えない範囲。まず気になる点を挙げさせ、採否は自分が決めてから直させる。
似た頼み方に、AIの回答そのものを見直させる「弱点を挙げて直して」、答えの形をそろえる出力形式の指定、読む相手を伝える読者を指定するコツがあります。AIとの付き合い方はAI活用の柱にまとめています。
まずは今日、次に文章を直してもらうとき、「誤字と冗長だけ、意味は変えず」の一言を足すところから試してみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 直したい文章は、説明せず実際の文をそのまま貼る
- 何を直すか観点を名指しする(誤字/冗長を削る/硬い→やわらかく/一文を短く など)
- 直す方向を一例で示す(「◯◯」→「△△」のように)
- 一度に欲張らず、まず「気になる点」を挙げさせてから直させる
- 採否は自分で決める(AIの直しは提案・最終判断は書いた本人)
出典・参考
- Anthropic 公式プロンプトガイド(Prompting best practices/Be clear and direct: 望む出力を具体的に指定する。Use examples effectively: 少数の良い例が出力を最も確実に導く。self-correction: 下書き→基準に照らしてレビュー→直させる)platform.claude.com
- OpenAI 公式プロンプトエンジニアリングガイド(明確で具体的な指示を出す・参照テキスト/例を与える・出力の形式を指定する)developers.openai.com
- Madaan et al. Self-Refine: Iterative Refinement with Self-Feedback(査読前研究・arXiv:2303.17651/同じAIに自分の出力へ助言させ、それをもとに改善させると質が上がったと報告)arxiv.org
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。