運動の習慣化は「先につまずきをつぶす」で決まる——2,349人のデータより
Habits / Research Digest

運動の習慣化は「先につまずきをつぶす」で決まる——2,349人のデータより

運動アプリには応援・記録・ご褒美などいろいろな工夫があります。2,349人分のデータを使ったメタ分析で、実際に習慣の強さと結びついていた技法と、逆に伸びを下げていた技法がわかりました。今日から書き出せる形でまとめました。

運動アプリを入れて、通知も、みんなで競うランキングも試した。

それでも三か月もすると、開かなくなっている。

やる気を盛り上げる工夫はいろいろあります。でも、実際にどれが効くのかは、あまり知られていません。

2,349人分のデータを使った研究が、その差を数字で示しています。

「先につまずきをつぶす計画」だけが、はっきり効いていた

手がかりになるのが、マーらの研究チームが2023年に発表したメタ分析です。掲載誌は身体活動を専門に扱う国際誌でした。

対象は、運動の習慣づくりを助ける介入を調べたランダム化比較試験10件、参加者は合わせて2,349人です。運動不足の成人や学生、会社員のほか、心臓の病気や肥満のある人も含まれていました。期間は4週間から20週間まで幅があります。

調べたのは、こうした介入が「運動する習慣の強さ」をどれだけ伸ばしたかです。習慣の強さは、「考えなくても体が動くか」など本人への質問で測っています。

全体では、介入を受けた人のほうが、受けなかった人より習慣の強さが伸びていました。効果の大きさは中くらいより少し小さめですが、意味のある差です。ただし研究ごとのばらつきは大きく、内容次第で効き目に差が出ることも分かっています。

ここからが本題です。研究チームは、介入の中でよく使われていた技法を1つずつ分けて、どれが習慣の伸びと結びついているかを調べました。

はっきりプラスに結びついていたのは、運動をじゃまする場面を先に洗い出し、その対策まで決めておく技法でした。これを使っていた研究(4件)は、使っていない研究より習慣の伸びが大きくなっていました。

一方、「励まし・称賛」だけを使っていた研究(2件)は逆でした。数字のうえでは、伸びを下げる方向に動いていたのです。

下の図が、その違いです。

技法ごとの習慣の強さとの関連を示す横棒グラフ。「先につまずきをつぶす計画」はプラス0.28(研究4件)で右向きに伸び、「励まし・称賛だけ」はマイナス0.40(研究2件)で左向きに沈んでいる。プラスに伸びていたのは前者だけであることを示す
図1: プラスに伸びたのは「先につまずきをつぶす計画」だけだった(当サイト作成)

見てのとおり、伸びたのは一方だけです。もう一方は、逆向きに動いています。

ここは慎重に読んでください。この技法別の数字は、10件のうちそれぞれ4件・2件という少ない数の研究から出たものです。特に「励まし・称賛」のほうは研究がたった2件しかなく、著者自身も今後さらに検証が必要だと述べています。

研究には他にも限界があります。習慣の強さは自己申告で測られ、対象は運動にかぎられます。技法どうしの組み合わせや、どのくらいの量が最適かまでは、この研究だけでは分かりません。

応援だけに頼らず、先に対策を決めておく

「週3回、筋トレを続けたい」と思ったとき、多くの人はまず励ましてくれるアプリやコミュニティを探します。

悪い選択ではありません。ただ、この研究を見るかぎり、土台にすべきなのは応援よりも「先につまずきをつぶす計画」のほうです。

やることは単純です。運動をやめてしまいそうな場面を、始める前に書き出しておく。「雨の日」「残業で遅く帰った日」「単純に疲れている日」。そして、それぞれに「こうする」を1つずつ決めておきます。

これはif-thenプランニングの考え方そのものです。願いと障害をセットで考えるWOOPも、同じ土台に立っています。

応援や称賛は、悪者ではありません。ただ、それだけに頼らず、つまずきへの対策をセットで持っておくほうが安全です。

もう1つ注意したいのが、効果が続く期間です。この研究では、介入から12週間以内のほうが、それより後よりも効き目が大きく出ていました。効果は、時間とともに薄れやすいということです。

途中で気持ちが切れかけたときの立て直し方は、1日サボっても習慣は壊れないにまとめています。

今日から試す5つの手順

  1. 続けたい運動を1つ選ぶ(1分)。 あれこれ同時に始めません。
  2. やめてしまいそうな場面を3つ書き出す(5分)。 天気・忙しさ・疲れなど、過去に実際にやめた原因を思い出します。
  3. 場面ごとに「もし〜なら、こうする」を決める。 「雨なら、家で動画を見ながらスクワット10回」のように具体的にします。
  4. 対策だけを1枚のメモにまとめ、見える場所に置く。 応援の言葉より、この1枚を頼りにします。
  5. 10〜12週たったら、リストを見直す。 つまずく場面が変わっていないか、対策が形だけになっていないか確かめます。

まずは今日、運動を1つ選んで、やめてしまいそうな場面を3つだけ書き出してみてください。

意志ではなく仕組みで続ける発想は、習慣化の歩き方でもまとめています。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 続けたい運動を1つだけ選ぶ
  2. 始める前に、やめてしまいそうな場面を3つ書き出す
  3. 場面ごとに「もし〜なら、こうする」を1つずつ決める
  4. 対策だけを1枚のメモにまとめ、見える場所に置く
  5. 10〜12週たったら、リストを見直して更新する

出典・参考

  1. Ma, H., Wang, A., Pei, R., & Piao, M. (2023) Effects of habit formation interventions on physical activity habit strength: meta-analysis and meta-regression. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 20, 109.(RCT10件・参加者2,349人)pmc.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Michie, S., Richardson, M., Johnston, M., et al. (2013) The Behavior Change Technique Taxonomy (v1) of 93 Hierarchically Clustered Techniques. Annals of Behavioral Medicine, 46(1), 81-95.(研究が使った技法分類の基準)openaccess.city.ac.uk

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。