大事な文章は紙で読む——画面はスクロールで浅くなる、とメタ分析が示した
Focus / Research Digest

大事な文章は紙で読む——画面はスクロールで浅くなる、とメタ分析が示した

仕事の仕様書、長いメール、参考書。画面はスクロールで流し読みになりがちです。紙のほうが理解が深まりやすい、と2つのメタ分析が示しました。差が出るのは情報系の文章と、時間に追われる読み。効果の限界もまとめました。

仕事の仕様書を、画面で開く。長いメールやPDFに目を走らせる。

スクロールしながら、下へ下へと読み進める。でも読み終えると、中身がほとんど残っていない。

同じ文章でも、紙で読むと違うかもしれません。研究が実際に何を言っているのか、確かめてみます。

紙のほうが理解が深い——2つのメタ分析

手がかりになる大きな研究が2つあります。どちらも、たくさんの実験をまとめ直したメタ分析です。

1つめは、2018年にデルガドらが出したものです。掲載誌は Educational Research Review。

54の実験、のべ17万人ぶんのデータを集めました。結論は、紙のほうが理解のテストの成績が高い、というものでした。

ただし差そのものは小さめです。研究者自身も「効果は小さい」と認めています。それでも、無視できる差ではない、とも書いています。

2つめは、2019年にクリントンが出したものです。掲載誌は Journal of Research in Reading。

33の実験、約2,800人ぶんをまとめました。こちらも、画面で読むと成績が下がる傾向でした。

別々に行われた2つの研究が、同じ方向を指しています。画面より紙のほうが、理解のテストではやや上。それが今のところの答えです。

差が出るのは「情報系」と「時間に追われる読み」

大事なのは、どこでも差が出るわけではない、という点です。

物語文——小説やエッセイのように、筋を追って楽しむ文章では、紙と画面の差はほとんど消えました。

はっきり出たのは、情報系の文章です。仕組みや手順を正確につかむ必要があるもの。仕様書、長いメール、参考書、報告書などがこれにあたります。

さらにデルガドらは、時間に追われて読むほど差が広がる、と報告しています。締め切り前の急いだ読みは、画面だと余計に浅くなりやすいわけです。

画面で読む場合と紙で読む場合を左右で比べた図。左の画面はスクロールで下へ流し読みになり、理解の深さを示す棒が短い。右の紙は一枚に留まって集中でき、理解の深さの棒が長い。同じ文章でも紙のほうが理解が深まりやすいことを表している
図1: 同じ文章でも、紙のほうが理解が深まりやすい(当サイト作成)

図のように、同じ文章でも読む媒体で理解の深さが変わります。とくに、急いで正確に読みたいときほど差が出ます。

画面のこわさは「わかった気」になること

もう一つ、クリントンの研究が拾った点があります。

画面で読んだ人は、自分の理解度の見立てがずれていました。実際より「わかったつもり」になりやすい、ということです。

これがやっかいです。浅く読んでいても、本人はそれに気づきにくい。画面はスクロールするだけで先へ進めるので、読み終えた感覚だけが残ります。

なぜ画面だと散漫になりやすいのか、そこまで研究は断定していません。ただ、次々と送る読み方は、一枚に留まる読み方より表層をなでやすい、とは言えそうです。

今日から試す、読み方の使い分け

全部を紙に戻す必要はありません。差は場面で決まります。使い分けるのが現実的です。

  1. 正確につかみたい情報系の文章(仕様書・長いメール・参考書)は、印刷して読む
  2. 画面で読むなら、スクロールを止めて一画面ずつ読み切る
  3. 締め切りに追われて読むときほど、紙にする価値が上がる
  4. 画面で「わかった」と感じても、一度止まって要点を思い出す
  5. 軽い読み物やニュースの流し読みは、画面のままでよい

ポイントは4つめです。画面では「わかった気」に気づきにくい。だから読み終えたら、要点を一つ二つ声に出すか、書き出してみる。それだけで、浅い読みに気づけます。

この2つの研究は、こうした使い分けの効果を試したわけではありません。示されたのは「情報系の文章は紙のほうが理解が深まりやすい」ところまで。差も大きくはありません。合わなければ無理に変えなくて大丈夫です。

散らからない環境で読む工夫は、集中の柱でもまとめています。画面を1つに絞る話は、「ながら作業」は集中力を壊す?も参考になります。読みながら心がよそへ行くときは、心がよそへ行くと集中も満足感も下がるもあわせてどうぞ。

今日はまず、次に開く長い仕様書を一度だけ印刷してみる。それで頭への残り方が変わるか、試してみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 正確につかみたい情報系の文章(仕様書・長いメール・参考書)は、印刷して読む
  2. 画面で読むなら、スクロールを止めて一画面ずつ読み切る
  3. 締め切りに追われて読むときほど、紙にする価値が上がる
  4. 画面で「わかった」と感じても、一度止まって要点を思い出す
  5. 軽い読み物やニュースの流し読みは、画面のままでよい

出典・参考

  1. Delgado, P., Vargas, C., Ackerman, R. & Salmerón, L. (2018) Don't throw away your printed books: A meta-analysis on the effects of reading media on reading comprehension. Educational Research Review, 25, 23-38.uv.es
  2. Clinton, V. (2019) Reading from paper compared to screens: A systematic review and meta-analysis. Journal of Research in Reading, 42(2), 288-325.eric.ed.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。