人の目があると単純作業ははかどる——難しい仕事は一人で
カフェや図書館だと、なぜか手が動く。家だと進まない。人の目や誰かの存在は、単純で慣れた作業を後押しし、難しい作業ではむしろ足を引っぱりやすい——という研究があります。作業の種類で場所を使い分けるコツをまとめました。
カフェに入ったとたん、なぜか手が動く。家のデスクでは後回しにしていた作業が、するする片づく。
逆に、込み入った資料づくりや考えごとは、人がいる場所だと集中しきれない。
これは気分のせいだけとは限りません。人の目や誰かの存在が、作業の種類によって追い風にも向かい風にもなる、という研究があります。
人がいると、単純作業は速く・難所は雑になる
人のそばで作業が変わる現象は、古くから調べられてきました。心理学者のZajoncは1965年、その仕組みをこう説明します。
誰かがそばにいると、体はゆるく興奮した状態になる。すると、体にしみついた「慣れた反応」が出やすくなる。
だから、単純で慣れた作業は速くなる。一方、まだ手になじんでいない難しい作業は、あせりが出てかえってつまずく。
この見立ては、その後の大量の実験でおおむね裏づけられました。BondとTitusは1983年、241件の研究を集めて解析しています。
結論はZajoncの向きと同じ。人がいると、慣れた作業は速く正確になり、不慣れな作業は成績が落ちやすい。
ただし効果そのものは大きくありません。人がいれば別人のようにはかどる、という話ではない点は押さえておいてください。
単純作業と難しい作業で、向きが逆になります。下の図が全体像です。
見てのとおり、同じ「人の目」でも効き方は逆です。慣れた作業には追い風、難所には向かい風になります。
だから、作業で場所を使い分ける
この仕組みは、日々の場所選びにそのまま使えます。
- 慣れた単純作業(メール返信、経費入力、資料の体裁直し、片づけ)は、人の目がある場所がはかどりやすい
- 難しく不慣れな作業(企画を練る、初めての設計、込み入った文章)は、一人になれる静かな場所が向く
「カフェや図書館だと進む」「在宅より出社のほうが単純作業がはかどる」。よく聞く実感は、この向きと重なります。
逆に、頭をひねる仕事をにぎやかな場所で片づけようとすると、空回りしがちです。難所は人目を避けたほうが、腰を据えられます。
カフェがはかどる理由は、人の目だけではありません。ほどよいざわめき(環境音)そのものも効きます。音の面からの使い分けは静かすぎると集中できないにまとめました。
反対に、一人で難所に向かうときは、手元の邪魔を減らすほど深く入れます。スマホは机にあるだけで集中を奪うもあわせてどうぞ。
今日からの、場所の使い分け
むずかしくありません。作業を2種類に仕分けるだけです。
- 今日のタスクを「慣れた作業」と「難しい作業」に色分けする。 朝の1分、リストの横に○(慣れ)と△(難所)を書くだけ
- ○の作業は、人の目がある場所でまとめて片づける。 カフェ、図書館、出社日のオフィス、オンラインの自習ルームなど
- △の作業は、一人になれる時間と場所を確保する。 早朝の自室や個室、人の少ない時間帯にブロックして入る
まずは明日のタスクを、○と△に分けるところから始めてください。場所を変えるだけで、進み方が変わるのを自分の手で確かめられます。
集中を根性でなく仕組みで支える考え方は集中・生産性の歩き方にまとめています。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 今日のタスクを「慣れた作業」と「難しい作業」に分ける
- 慣れた単純作業は、人の目がある場所でまとめて片づける
- 難しい作業は、一人になれる静かな時間と場所を確保する
- はかどらないと感じたら、やる気より先に場所を疑う
出典・参考
- Zajonc, R. B. (1965) Social Facilitation. Science, 149(3681), 269-274.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Bond, C. F., & Titus, L. J. (1983) Social facilitation: A meta-analysis of 241 studies. Psychological Bulletin, 94(2), 265-292.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。