新しい習慣は小さすぎるくらいでいい——やる気が出ない日でも続く理由
Habits / Research Digest

新しい習慣は小さすぎるくらいでいい——やる気が出ない日でも続く理由

「毎日腕立て20回」と決めても三日で終わる。続かないのは意志ではなく、始める行動が大きすぎるから。1回だけ、1ページだけ——小さくすると、やる気が出ない日でも手が動きます。研究をもとに、続く小さな始め方を限界も添えてまとめました。

「今日から毎日、腕立て20回」。そう決めた次の日は、たいてい20回できます。問題はその先です。

3日目には気が重くなり、1週間後には、そもそもやること自体を忘れている。

続かないのは、意志が弱いからではありません。始める行動が、大きすぎるだけです。

解決策は、逆の方向にあります。ばかばかしいと思うくらい、小さく始めることです。

なぜ「小さすぎる」ほど続くのか

続けたいなら、まず行動を「これ以上は無理」というくらい小さく削ります。

行動が起きるかどうかを、行動科学者のフォッグは3つの掛け算で説明しました。やる気・実行のしやすさ・きっかけ。この3つが同じ瞬間にそろったときだけ、人は動きます。

やる気は、日によって上下します。高い日もあれば、ほとんど出ない日もある。

だから、やる気の高さだけをあてにする習慣は、やる気が下がった日に止まります。

打つ手は、やる気ではなく「実行のしやすさ」を上げること。行動を小さくすれば、少ないやる気でも越えられます。

下の図が、やる気と「壁の高さ」の関係です。

折れ線グラフ。青い折れ線は日ごとに上下する『やる気』を表し、高い日と低い日がある。上側の赤い破線は『毎日20回』のような大きい行動に必要なやる気の高さ(高い壁)で、越えられる日は少ない。下側の緑の破線は『まず1回』のような小さい行動に必要なやる気の高さ(低い壁)で、やる気が低い日でもほとんど越えられることを示す
図1: 行動を小さくして壁を下げると、やる気が低い日も越えられる(当サイト作成)

見てのとおり、「毎日20回」の高い壁は、やる気の高い日しか越えられません。「まず1回」まで下げれば、ほとんどの日が越えられます。

大きな目標は、かえって手を止める

「大きく変える」という構えそのものが、着手を止めることがあります。

経営学者のワイクは1984年の論文で、こう論じました。問題を大きく捉えるほど、人は圧倒されて動けなくなる、と。

やることが大きく見えると、頭の中がいっぱいになり、最初の一歩が出ません。

ワイクの提案は、問題を「小さな勝ち」の連なりに置き換えることでした。小さくて、確実に手が届く成果を1つずつ積む。すると、次の一歩が出しやすくなります。

たとえば「部屋を片づける」は重い。でも「机の上のペンを1本しまう」なら、今すぐできます。

小さな一歩でも、やり終えれば1つの完了です。この「できた」の積み重ねが、次の日を軽くします。

「できた」が積もると、続けやすくなる

小さな成功には、もう1つの効き目があります。「自分にもできる」という手応えが育つことです。

心理学者のバンデューラは、この手応えを自己効力感と呼びました。そして、それをいちばん強く育てるのは、実際に自分でやり遂げた経験だと述べています。

見聞きするだけでも、はげまされるだけでもない。小さくても、自分の手で1つ終えた事実がいちばん効きます。

だから、できたその場で小さく喜んでください。心の中で「よし」とつぶやくだけでかまいません。

行動の直後に達成感を置く効き目は、行動のすぐあとに小さなごほうびをでも扱っています。

ここは慎重に受け取ってください

心強い考え方ですが、万能ではありません。

ここで紹介したのは、行動を説明するモデルと、いくつかの理論です。「小さくすれば続く」と保証するものではありません。

効き方には個人差があります。小さすぎる目標が、かえって物足りなく感じる人もいます。

習慣によっては、意味を持つ最小の量があります。薬の服用や安全の確認は、「小さく」では済みません。そこは自分の判断で減らさないでください。

気分の落ち込みや不調そのものへの対処でもありません。つらさが長く続くときは、休息や専門家への相談を先にしてください。

今日からの小さな始め方

やることは、行動を削って、きっかけにくっつけるだけです。作業は1〜2分で終わります。

  1. 続けたい習慣を1つ選ぶ(運動・読書・片づけなど)
  2. それを「1回」「1分」「1ページ」まで小さく削る(腕立てなら1回、読書なら1ページ)
  3. すでに毎日やっている動作の直後に置く(歯みがきの後、コーヒーの後など)
  4. できたら、その場で小さく喜ぶ(「よし」と言う、こぶしを軽く握る)
  5. 物足りなくなってきたら、そこから少しずつ増やす

順番は前後してかまいません。まずは2つ目の「小さく削る」だけでも、入り口は広がります。

すでにある動作にくっつけるやり方は、「すでにやっていること」の直後にくっつけるで詳しく扱っています。

小さいままでも、それでいい

「こんなに小さくて意味があるのか」と思うかもしれません。

でも、小さくても続いていることのほうが、大きくて途切れることより前に進みます。

1日できなかった日があっても、責めないでください。1日くらいの抜けなら、習慣は崩れません(1日サボった日の考え方)。

習慣づくりの土台は、習慣の柱にまとめています。

今日はまず、続けたい習慣を1つ選んで、ばかばかしいと思うくらい小さく削ってみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 続けたい習慣を1つ選び、目標を1行で書く(運動・読書・片づけなど)
  2. その行動を「1回・1分・1ページ」まで小さく削る
  3. すでに毎日やる動作の直後に置く(歯みがきの後・コーヒーの後など)
  4. できたら、その場で小さく喜ぶ(「よし」と言う・こぶしを握る)
  5. 物足りなくなってきたら、そこから少しずつ増やす

出典・参考

  1. Fogg, B. J. (2009) A Behavior Model for Persuasive Design. Proceedings of the 4th International Conference on Persuasive Technology (Persuasive '09), ACM.(行動は「やる気・実行のしやすさ・きっかけ」の3つが同時にそろったときに起きる、というモデル。行動を簡単にするほど、必要なやる気は少なくて済むと説明する)dl.acm.org
  2. Weick, K. E. (1984) Small wins: Redefining the scale of social problems. American Psychologist, 39(1), 40–49.(問題を大きく捉えるほど人は圧倒されて動けなくなり、小さく確実な成果=スモール・ウィンを積むほうが行動が続く、と論じた古典)homepages.se.edu
  3. Bandura, A. (1977) Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191–215.(「自分にもできる」という手応え=自己効力感を最も強く育てるのは、実際に自分でやり遂げた経験だとする理論)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。