布団に入っても寝つけない夜に——就寝1〜2時間前の入浴が「寝つき」を助ける仕組み
Health / Research Digest

布団に入っても寝つけない夜に——就寝1〜2時間前の入浴が「寝つき」を助ける仕組み

布団に入ってもなかなか寝つけない。そんな夜の手がかりになるのが、入浴のタイミングです。17件の研究をまとめた解析では、就寝1〜2時間前の入浴が寝つきや睡眠の質と関わっていました。深部体温の仕組みと、今日から試せる手順にまとめました。

布団に入っても、頭がさえて寝つけない。

明日も早いのに、時計の数字だけが進んでいく。

そんな夜に、意外な手がかりになるのが「お風呂の入り方」です。

正確には、お湯の温度そのものより、入る時間帯かもしれません。

就寝1〜2時間前の入浴が、寝つきと関わっていた

「就寝前の入浴」を調べた研究をまとめた解析があります。

2019年に睡眠の専門誌に載ったもので、5千件を超える論文をふるいにかけ、条件を満たした17件を精査しました。

このうち13件は、数値をそろえて統合できる研究でした。

分かったのは、入浴のタイミングと寝つきの関係です。就寝の1〜2時間前に40〜42.5度のお湯へ10分ほどつかる(またはシャワーを浴びる)。すると寝つくまでの時間が、有意に短くなる傾向でした。

睡眠効率(布団にいる時間のうち、実際に眠っていた割合)や、本人が感じる眠りの満足度も、上がる方向でした。

ただし著者自身が、研究の数はまだ少なく、最適な時間や長さ、仕組みははっきりしないと断っています。

効果の大きさには個人差があります。誰にでも同じように効くとは限りません。

なぜ「入る時間帯」が効くのか。鍵は深部体温(体の内側の温度)のリズムです。

下の図で、その流れを見てみます。

夕方から深夜までの深部体温の変化を2本の線で比べた図。入浴しない日(灰色の破線)は夜にかけてなだらかに下がる。入浴した日(青い実線)は20時ごろの入浴で一度大きく上がり、21時の山を過ぎると急に下がって、22時の就寝のころには入浴しない日より低くなる。温まった反動で深部体温が下がることが寝つきやすさにつながる様子を示している
図1: 入浴で深部体温がいったん上がり、その反動で就寝のころに下がる(当サイト作成)

私たちは、深部体温がゆるやかに下がるときに眠気を感じます。

入浴でいったん体を温めると、手足の血流が増えて、熱が外へ逃げやすくなります。

その反動で、就寝のころに深部体温が下がりやすくなる。これが寝つきを助ける、と考えられています。

2023年の生理人類学の研究でも、40度ほどの入浴で手足からの熱の放散が高まり、それが眠りの入り口と関わることが示されました。

だから、寝る直前の熱い風呂はむしろ逆効果になりやすい。体温が上がったまま布団に入るからです。

日本の「湯船につかる」習慣は、この仕組みと相性がいい

シャワーだけで済ませず、湯船につかる習慣が残っている。

この点で、日本の暮らしはこの仕組みと相性がいいといえます。

たとえば22時に寝るなら、20時から20時半ごろに湯船につかる。

上がってから1時間ほどかけて体が冷めていく間に、少しずつ眠くなってきます。

熱いお湯でキリッと目を覚ますのは、どちらかというと朝向きです。

夜は「少し前に、ぬるめに」がコツになります。

帰宅が遅くて時間がない日は、無理に長湯をしなくてかまいません。足湯や短めのシャワーでも、体を温める効果は報告されています。

今日から試す手順

やることは、入浴の「時刻」をずらすだけです。

  1. 寝たい時刻を決める。その1〜2時間前を「入浴タイム」にする
  2. お湯は40〜42度。10〜15分を目安に、のぼせない範囲でつかる
  3. 湯上がりは照明を少し落とし、急に湯冷めしない服装で過ごす
  4. 布団に入る直前の熱いシャワーや長湯は避ける
  5. 数日ためして、自分が眠りやすい温度と時間に微調整する

熱すぎるお湯や長湯は、体に負担がかかることもあります。のぼせやすい人や高齢の方は、短めから始めてください。

ここで紹介したのは研究から見えた傾向で、医療のアドバイスではありません。

不眠が続く、いびきや途中で目が覚めるのがつらい。そうした悩みが長引くときは、入浴の工夫だけで抱え込まず、医療機関に相談してください。

睡眠の土台を整える話は睡眠は長さより規則正しさ、昼の眠気とのつき合い方は午後の短い昼寝にまとめました。

体をいたわる小さな習慣は、健康の柱でも扱っています。

今夜は、いつもより少し早めにお風呂へ。それだけで、眠りの入り口は変わるかもしれません。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 寝たい時刻の1〜2時間前を「入浴タイム」にする
  2. お湯は40〜42度。10〜15分を目安に、のぼせない範囲で
  3. 湯上がりは照明を落とし、湯冷めしすぎない服装で過ごす
  4. 布団に入る直前の熱いシャワーや長湯は避ける
  5. 不眠が続くときは自己流にせず、医療機関に相談する

出典・参考

  1. Haghayegh, S., et al. (2019) Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews, 46, 124-135.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Maeda, T., et al. (2023) Effects of bathing-induced changes in body temperature on sleep. Journal of Physiological Anthropology, 42. DOI: 10.1186/s40101-023-00337-0pmc.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。