朝の光で体内時計を整える——起きたら窓ぎわで光を浴びる
朝は頭がぼんやり、夜はなかなか寝つけない。手がかりのひとつが朝の光です。自然光で体内時計が約2時間前に動いたキャンプ研究などをもとに、起きたら光を浴びる習慣を、限界と注意点を添えてまとめました。
朝、目覚ましで起きても頭がぼんやりして、エンジンがかかるのは昼すぎ。
そのくせ夜は目がさえて、布団に入っても寝つけない。
早く寝ようと気合を入れても、なかなかうまくいきません。
もしかすると足りていないのは、気合ではなく「朝の光」かもしれません。
自然光を1週間浴びたら、体内時計が約2時間前に動いた
手がかりになる研究があります。2013年に専門誌で報告されたものです。
研究チームは健康な大人8人に、2通りの1週間を過ごしてもらいました。1週目はふだんどおり、電気の照明がある生活。2週目は屋外でのキャンプで、明かりは自然光とたき火だけ、懐中電灯もスマホも使いません。
その前後で、眠けをうながすホルモン「メラトニン」が出はじめる時刻を測りました。この時刻が、体内時計の「夜のはじまり」の目印になります。
結果、キャンプで自然光だけを浴びた後は、体内時計をしめす目印がどれも平均で約2時間早い側に動いていました。
メラトニンが出はじめる時刻は日没のころに、起き際に消える時刻は日の出の直後になった、と報告されています。
外の光にそろえて、体のリズムが前に動いたわけです。
ただし、これは8人という小さな研究です。参加者は比較的若い大人が中心で、実験室ではなく屋外での調査でした。数字はそのまま万人に当てはまるものではなく、「そういう傾向が出た」として受け取るのが妥当です。
なぜ「朝」なのか——同じ光でも時間帯で向きが変わる
光がなぜ効くのか。2019年の総説は、目から入る光を体内時計にとっての「いちばん強い合図」と位置づけています。
大事なのは、浴びる時間帯です。同じ光でも、朝に浴びると時計を前に動かし、夜に浴びると後ろに動かす、とされています。
下の図が、そのしくみを単純にしたものです。
見てのとおり、朝の光は「早寝・早起き」側へ、夜の光は「夜ふかし」側へ引っぱります。だから夜ふかし気味の人ほど、朝の光が手がかりになります。
ただし総説の著者は、光の働きにはまだ分かっていない部分が多いと率直に認めています。効き方や大きさには個人差があり、単純な一本道ではありません。
では、朝はどれくらい浴びればよいのか。長い時間が要るなら続きません。
2015年の研究(健康な大人50人)では、朝の明るい光を午後のメラトニンや睡眠時刻の前倒しと組み合わせています。そのうえで、朝の光を30分にしても、2時間続けたときの75%ほどの前進(約1.8時間)が得られた、と報告されています。
つまり短い朝の光でも、それなりに手ごたえは期待できそうです。
ただしこれは実験室での強い光を使い、メラトニンの服用や睡眠時刻の調整も一緒に行った条件での結果です。対象も健康な若い成人にかぎられます。「朝30分の日光で1.8時間ずれる」と単純化はできず、あくまで方向性を示す研究として受け取ってください。
在宅ワークだと、光はもっと足りなくなる
ここで日常を振り返ってみます。
在宅ワークが増え、朝から夜まで室内で過ごす日も多いはずです。カーテンを閉めたまま、照明の下でパソコンに向かう。通勤がなくなると、外の光を浴びる機会はさらに減ります。
室内の照明は、屋外の自然光にくらべてずっと暗いことが多い、という点がポイントです。キャンプの研究で体のリズムが前に動いたのは、室内では届かないほどの光を日中に浴びたことが背景にありました。
だからこそ、朝に少しでも外の光を取り込む工夫が効いてきます。特別な道具はいりません。カーテンを開ける、一駅歩く、ベランダに出る——それだけで浴びる光の量は大きく変わります。
今日から試す「起きたら光を浴びる」手順
やることは、朝いちばんに光を浴びるだけです。順番に進めます。
- 起きたらまずカーテンを全開にする。照明をつけるより先に、外の光を部屋に入れる
- 朝の早い時間に、屋外の光を10〜30分ほど浴びる。通勤・朝の散歩・ベランダなど、続けやすい場面に組み込む
- 曇りの日もできれば外に出る。空がどんよりでも、屋外は室内よりずっと明るいことが多い
- 外に出にくい日は、窓ぎわで朝食をとる、窓の近くで作業する、と光に寄る
- 夜は強い光を控える。寝る前のまぶしい照明やスマホを弱め、朝と夜でメリハリをつける
コツは、新しい時間を作らないことです。すでにある「通勤」「朝食」「犬の散歩」に光を浴びる行動を重ねると、続けやすくなります。
まずは明日の朝、起きたらカーテンを全開にする——そこから始めてみてください。
眠りは寝起きの時刻の乱れでも崩れます。リズムをそろえる話は睡眠は「長さ」より「規則正しさ」に、夕方以降のカフェインと寝つきの関係はカフェインの「門限」の決め方に、午後の眠けを短い休息で立て直す方法は午後の短い昼寝の使い方にまとめました。体をいたわる小さな習慣は、健康の柱でも扱っています。
最後に、ひとつだけ。太陽を直接見つめるのは目を傷めるので避けてください。ここで紹介したのは研究から見えた傾向で、医療的なアドバイスではありません。
目の病気や光に敏感な体質のある人、気分の波が大きい人などは、強い光を浴びる前に医師へ相談を。朝の光を取り入れても不調が続くときは、ひとりで抱え込まず、医療機関に相談してみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 起きたらまずカーテンを全開にする。照明より、外の光を部屋に入れる
- 朝の早い時間に屋外の光を浴びる。通勤・散歩・ベランダで10〜30分を目安に
- 曇りの日も外に出る。室内よりずっと明るいことが多い
- 外に出にくい日は、窓ぎわで朝食や作業をする
- 太陽は直接見ない。目や体に不安があるときは自己流にせず専門家に相談する
出典・参考
- Wright, K. P. Jr., McHill, A. W., Birks, B. R., Griffin, B. R., Rusterholz, T., & Chinoy, E. D. (2013) Entrainment of the Human Circadian Clock to the Natural Light-Dark Cycle. Current Biology, 23(16), 1554-1558.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Blume, C., Garbazza, C., & Spitschan, M. (2019) Effects of light on human circadian rhythms, sleep and mood. Somnologie, 23(3), 147-156.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Crowley, S. J., & Eastman, C. I. (2015) Phase advancing human circadian rhythms with morning bright light, afternoon melatonin, and gradually shifted sleep: can we reduce morning bright-light duration? Sleep Medicine, 16(2), 288-297.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。