Ankiを続ける設定——1日の新規カードを絞れば、復習は雪だるまにならない
Ankiを入れたのに、たまった復習の山に押されて開かなくなる。原因は意志ではなく設定です。間隔反復の効果を保ちつつ挫折しない、1日の新規カード枚数・復習上限・FSRSの整え方をまとめました。
「今度こそ覚えよう」と Anki を入れて、最初の数日は張り切ってカードをめくった。
でも1週間後、たまった復習が何百枚にもふくらんで、開くのが怖くなる。
やる気が消えたわけではありません。最初の設定を、多忙な毎日に合わせていないだけです。
Ankiは「間隔反復」を自動で回す道具
Anki は、暗記のための無料アプリです。
パソコン版・AnkiWeb(ブラウザ)・Android版の AnkiDroid は無料で使えます。iPhone・iPad の AnkiMobile だけが有料です(執筆時点の2026年7月で、買い切り4,000円)。どれも日本語で使えます。
中心にあるのは、間隔反復(spaced repetition)という考え方です。忘れかけたころに、そのカードをもう一度出す。正解できたら次はもっと先に、間違えたらすぐにまた出す。この復習日の調整を、アプリが自動でやってくれます。
この「間隔をあける」やり方には、古くからの裏づけがあります。
セペダらが2006年に発表した大きな研究のまとめでは、184本の論文・317の実験を照らし合わせています。そこでは、同じ学習量でも間隔をあけたほうが、あとの記憶に残りやすい傾向が報告されています。
ただし、これは多くの実験を平均した傾向です。教材や人によって効き方に幅があり、「必ず残る」という話ではありません。
間隔をあける効果そのものは、間隔をあける勉強法にまとめました。
そのままだと、復習が雪だるま式に増える
Anki を入れて最初につまずくのは、新しいカードの入れすぎです。
やる気のある最初の数日で、1日の新規カードを50枚や100枚に上げてしまう人は多い。ここに落とし穴があります。
間隔反復では、今日覚えたカードが、明日・3日後・1週間後…と、くり返し復習として戻ってきます。新しいカードを増やすほど、あとから戻ってくる復習も、日ごとにふくらみます。
見てのとおり、絞らなければ復習はすぐ手に負えない山になります。1日10〜20枚に抑えれば、復習は続けられる量でとどまります。
多忙な平日に、毎日100枚の復習は続きません。挫折の正体は意志の弱さではなく、入り口の枚数なのです。
続く設定にする3つのつまみ
いじるのは3か所だけです。デッキの歯車から「デッキオプション」を開きます。
まず、1日の新規カードを10〜20枚にします。少なく感じても、これで毎日の復習が積み上がりすぎません。物足りなければ、数日ようすを見てから少しずつ増やします。
次に、1日の最大復習カードに上限を置きます。公式マニュアルによると、この上限は1日に見せる復習カードの数を頭打ちにする設定です。たまった復習の急な山をならし、休んだあとに手に負えない量ができるのを防ぎます。200枚など、自分が終えられる数にします。
最後に、新しい方式の FSRS をオンにします。FSRS(Free Spaced Repetition Scheduler)は、Anki の従来方式に代わる復習日の計算方法です。
公式マニュアルは「どれだけ忘れそうかをより正確に見積もり、同じ時間でより多くを覚えられるようにする」と説明しています。あわせて出てくる「目標とする保持率」は、初期値の90%のままで十分です。
この3つだけ。新規カードを絞り、復習に上限を置き、FSRS をオンにする。それで、続けられる形にぐっと近づきます。
うまくいかないとき、向いていない人
それでも復習がたまるなら、1日の新規カードをさらに減らします。
いっそ0枚にすれば、新規は止まり、たまった復習だけを片づけられます。数日それで追いつかせてから、また少しずつ足していきます。
カードを作るのが面倒で続かないなら、Anki は向いていないかもしれません。自分でカードを用意する手間が要るのが、Anki の弱点です。既成の学習セットから手軽に始めたい人は、暗記アプリの選び方で他の候補も見てください。
そして、Anki が力を出すのは、答えを見る前に自分で思い出すときです。カードの表を見たら、裏をめくる前にいったん思い出す。この思い出す練習を合わせると、同じ枚数でも残り方が変わります。
道具選びのその先は、アプリ活用の歩き方でもまとめています。
Anki は、意志で覚えるアプリではありません。忘れる前に会う回数を、自動で管理してくれる道具です。
まずは1日の新規カードを10枚に。続く設定に整えるところから、試してみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 「デッキオプション」を開き、1日の新規カードを10〜20枚に下げる
- 1日の最大復習カードに、自分が終えられる上限(例:200枚)を置く
- FSRS をオンにする(目標とする保持率は初期値の90%のまま)
- 復習が追いつかない日は、新規カードを一時的に0枚にして山を片づける
出典・参考
- Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006) Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354-380.(184本の論文・317の実験を集めたメタ分析。同じ学習量でも間隔をあけたほうが長期の記憶保持に優れる傾向を報告)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Anki公式マニュアル「Deck Options」(1日の新規カード New cards/day、1日の最大復習カード Maximum reviews/day、FSRS の説明)docs.ankiweb.net
- Anki公式サイト(パソコン版・AnkiWeb・Android版 AnkiDroid は無料、iOSの AnkiMobile は有料と確認)apps.ankiweb.net
- AnkiMobile Flashcards(日本 App Store)— 日本語対応・買い切り¥4,000・iPhone/iPad を確認(執筆時点 2026年7月)apps.apple.com
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。