運動が続くかは「やらされ感」で決まる——自分で選ぶと習慣は根づく
Habits / Research Digest

運動が続くかは「やらされ感」で決まる——自分で選ぶと習慣は根づく

ジムに入っても三週間で行かなくなる——その分かれ目は、やる気の強さより『やらされ感』にあります。運動を『やらされる義務』と感じるほど続かず、『自分で選んだこと』と感じるほど続く。66本の研究をまとめたレビューが示すこの違いと、やらされ感を減らす具体的な工夫を紹介します。

新年に「今年こそ運動」とジムへ入る。最初の二週間は、なんとか通えます。

でも残業で一度サボると、三週間目からそのまま足が遠のく。気づけば、会費だけが引き落とされる幽霊会員です。

引き落としの通知を見るたび、ため息が出ます。ですが続くかどうかを分けているのは、根性より「やらされ感」のほうかもしれません。

続く人を分けるのは、動機の「強さ」より「種類」

運動が続くかどうかは、やる気の強さより「種類」で決まります。

手がかりになるのは、66本の研究をまとめた大規模なレビューです。まとめたのは、運動と動機づけを長く調べてきたテイシェイラたちです(Teixeira ほか、2012年)。運動のやる気を「自己決定理論」という枠組みで整理しました。

この「自己決定理論」自体は、心理学者のライアンとデシが提唱したものです(Ryan & Deci、2000年)。人のやる気を、外からの圧か内から出る感覚かで見分ける考え方です。

この理論は、やる気を大きく2つに分けます。

  • 統制的動機づけ:「やらなきゃ」「サボると罰が」という外からの圧。いわゆる、やらされ感です。
  • 自律的動機づけ:「やりたい」「自分に大事」という、内から出る感覚です。

レビューの結論はシンプルでした。自律的な動機づけが強い人ほど、運動を続けていた。やらされ感で動く人ほど、続きにくかったのです。

動機の効き方には、時間による役割分担も見えました。

始めたての「開始期」は、「健康に大事だ」という納得が背中を押します。頭で選んで動き出す時期です。

続く「継続期」になると、主役が入れ替わります。「やっていて楽しい」という実感のほうが、続ける力になります。

言いかえると、始める理由と続ける理由は別物です。最初の「痩せたいから」のまま走ると、楽しさに切り替わる前に息切れしやすい——レビューの傾向は、そう読み解けます。

動機づけを、外からの圧で動く統制的動機づけ(やらされ感)と、やりたい・自分に大事という自律的動機づけの2つに分けた図。やらされ感が減って自律的になるほど、運動は続きやすくなることを示している
図1: 続きやすさを変えるのは、やる気の強さではなく種類(当サイト作成)

ただし、うのみは禁物です。66本の多くは、ある一時点を切り取って調べた相関の研究でした。

「自律的だから続いた」のか「続いたから楽しくなった」のか、因果の向きまでは分かりません。数字が示すのは「関係がある」ところまで。だれにでも効く法則ではない、と押さえておいてください。

「やらされ感」は、どこから生まれるか

会社員の一日を思い浮かべます。仕事は、締め切りと指示で動く時間が長い。

そこへ運動まで「やらなきゃ」の義務が乗ると、一日中だれかに命令されている心地になります。これでは気が重くて当然です。

理論は、人が動き続けるには3つの感覚が要ると言います。自分で選べる感覚(自律性)、できるという手応え(有能感)、つながりの感覚(関係性)です。

レビューでは、とくに有能感が運動と結びつきやすいと繰り返し出ていました。「できた」が積もるほど続く、ということです。(一方、関係性と運動の結びつきは、はっきりしませんでした。)

運動を始めたての時期は「健康に大事」という納得が動き出しを助け、長く続くほど「やって楽しい」という実感が継続を支える、という時間による動機の役割の違いを左右に並べた図
図2: 始めと継続では、背中を押す動機が入れ替わる(当サイト作成)

図のとおり、狙いどころは決まります。運動から「やらされ感」を抜き、「自分で選んだ」と「できた」を増やす。ここに絞ります。

今日からできる、やらされ感の抜き方

大きな決意はいりません。運動の入り口を、命令から選択に変えるだけです。

  1. 「やってみたい」で種目を選ぶ。 まず今日、思いつく運動を3つ書き出します。その中で一番「ちょっと楽しそう」に丸をつけ、最初の候補にします。「痩せなきゃ」で選ぶと義務になりやすいからです。散歩でもダンスでも構いません。数分動くだけでも気分は上向くので、完璧な種目を探さなくて大丈夫です。
  2. 頻度は「曜日」まで自分で決める。 「週2回」で止めず、「火曜と土曜の朝」まで自分で決めます。人に「週3で」と指示されるより、自分で選んだ手応えのほうが続きます。回数の多さより、決めたのが自分であることが効きます。
  3. やった日だけ、1文字記録する。 スマホのカレンダーやメモに、運動した日だけ「○」を入れるだけでいい。丸が並ぶと、「できた」が目に見えて積もります。
  4. 最初の2週間は「10分でやめる」。 きつい目標は「できなかった」を量産します。物足りなくても10分で切り上げる、を2週間続けます。習慣は小さすぎるくらいで始めるほど続くからです。
  5. 3回やって毎回気が重いなら、乗り換える。 つらいだけの種目に耐える必要はありません。「合わなかった」は失敗ではなく、次を選ぶための情報です。楽しめる運動に替えるのも、立派な選択です。

どれも共通するのは、「自分で決めた」という感覚を運動に戻す工夫だ、という点です。

過信はしない——ここは正直に

この見方は、やる気を根性で搾り出すより、はるかにラクです。ただ、万能ではありません。

元になった研究は運動の場面を調べたもので、効き方には個人差があります。痛みや持病がある人、運動を止められている人は、まず医療機関の指示を優先してください。

やる気の工夫は、あくまで続けやすくするための一つの見方です。

続くかどうかを分けるのは、運動が「自分で選んだこと」になっているかどうかです。まだ「やらされること」のままなら、変える余地はそこにあります。

次に体を動かすとき、「やらなきゃ」を一度だけ「やってみたい」に言い換えてみてください。その小さな選び直しが、続く運動の入り口になります。もし一度サボっても、自分を責めずに戻るほうが早く再開できます。ほかの続け方は習慣づくりの柱でもまとめています。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 「痩せなきゃ」より「やってみたい」で種目を選ぶ
  2. 頻度や時間は人任せにせず、自分で決める
  3. できた日をカレンダーに記録し、手応えを積む
  4. 目標を下げて、達成できる回数を増やす
  5. つらいだけの種目は、楽しめる運動に乗り換える

出典・参考

  1. Teixeira, P. J., Carraça, E. V., Markland, D., Silva, M. N., & Ryan, R. M. (2012) Exercise, physical activity, and self-determination theory: A systematic review. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity, 9, 78.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000) Intrinsic and Extrinsic Motivations: Classic Definitions and New Directions. Contemporary Educational Psychology, 25(1), 54-67.selfdeterminationtheory.org

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。