バッジやポイントで習慣は続くのか——研究が示す「効く条件」
運動アプリのバッジ、最初は集めるのに気づけば開かなくなる。ゲーム要素で行動が増えるかを調べた研究をもとに、集める仕組みが効く条件と、飽きる前に習慣を生活へ移すコツをまとめました。
運動アプリを入れた最初の週。バッジが1個、また1個とたまって、開くたびに少しうれしい。
ところが3週間後。通知は来ているのに、もうアプリを開かない。バッジも見ていません。
ゲームのように「集める」仕掛けは、なぜ最初だけ効いて、いつのまにか色あせるのでしょうか。
そもそも、バッジやポイントで習慣は本当に続くのか。研究をたどると、「効く。ただし条件つき」という答えが見えてきます。
集める仕組みは、たしかに行動を増やす
まず、ゲーム要素そのものには効き目があります。
ハマリらが2014年にまとめたレビューは、ポイントやバッジなどの「ゲーミフィケーション」を調べた24件の実証研究を集めたものです。
多くの研究で前向きな結果が出ていました。ただし論文は、効き目は「どんな場面で使うか」と「どんな人が使うか」に大きく左右される、と釘を刺しています。
もう少し具体的な例もあります。
ハマリが2017年に報告したフィールド実験では、あるオンラインの売買サービスにバッジの仕組みを入れました。決まった行動をするとバッジがたまる形です。
バッジ導入の前(約1,400人)と後(約1,600人)を、それぞれ1年ずつ、計2年ぶん比べています。
結果、バッジを入れた後のほうが、出品・取引・コメントといった利用がはっきり活発になりました。
ただし、これは個人の生活習慣そのものを調べたものではありません。オンラインサービスでの行動量の話です。
使う前後のグループを並べて比べた設計で、同じ人をくじ引きで振り分けた実験ではない点も、頭の隅に置いておきます。
ただし「効くとき」には条件がある
ここからが本題です。集める仕組みは万能薬ではありません。
先の2014年のレビューがはっきり言うとおり、効き目は「人」と「場面」しだいです。同じバッジでも、集めるのが楽しい人には効き、興味のない人には響きません。
この「場面しだい」には、実は一本の線が引けます。集める仕組みが向いているのは、それ自体は少し退屈だけれど、続けたい行動のほうです。地味なストレッチ、家計簿づけ、部屋の片づけ。楽しさが乏しいところへ、集める楽しさを外から足す使い方です。
逆に、もともと好きでやっている行動にバッジやポイントを足すと、かえってやる気がしぼむことがあります。「好きだからやっていた」が「ごほうびのためにやる」へすり替わるためです(この落とし穴はごほうびが逆効果になるときにまとめました)。
レビューが言う「人と場面しだい」を一歩ふみこむと、この線引きが見えてきます。
集めること自体の楽しさに加えて、行動の最中に感じる小さな楽しさも、続ける力になります。この点は行動中の「今すぐの楽しさ」にまとめました。
図にすると、こういうイメージです。
見てのとおり、集める仕組みのやる気は、目新しさが薄れるにつれて下がっていきます。ここが弱点です。
健康や生活の改善にゲーム要素を使った研究をまとめた2016年のレビューも、同じ注意をうながしています。
19件の研究のうち、約6割で前向きな効果、残りの約4割は結果がまちまちでした。
しかも研究の質は中くらい以下が多く、「ゲーム要素あり」と「なし」をきちんと比べていないものも目立ちます。
つまり、「バッジをつければ勝手に続く」とまでは、まだ言い切れないのが実情です。効くけれど、効き方にはムラがあり、しかも時間とともに弱まりやすい。これが正直なところです。
だから「着火剤」として使う
弱点がわかれば、使い方も決まります。
集める仕組みは、習慣に火をつける「着火剤」——最初の勢いをつける道具として使うのが向いています。ずっと燃やし続けるエンジンではありません。
理由はシンプルです。目新しさは、いつか薄れます。飽きたバッジに行動を預けたままだと、飽きた瞬間に行動も止まります。
だから、まだ集めるのが楽しいうちに、行動のほうを生活の流れへ移しておきます。
歯みがきのあと、通勤電車の中、寝る前。すでに毎日くり返している時間帯に、そっとくっつけてしまうのです。
すでにある行動に新しい習慣を乗せるコツは、習慣スタッキングにまとめました。
そうしておけば、バッジにワクワクしなくなっても、行動は生活のリズムに乗って残ります。図の「習慣そのものの力」が、目新しさと入れ替わりに立ち上がっている状態です。
今日から試す手順
集める仕組みを「スターター」として使う手順です。
- 集める器を1つ用意する(所要5分)。続けたい習慣を1つ選び、バッジ・スタンプ・チェック欄など「たまっていくのが目に見える器」を1つ決めます。紙のカレンダーに丸をつけるのでも構いません
- 毎日必ず目に入る場所に置く。スマホならホーム画面の1枚目、紙なら洗面所の鏡や冷蔵庫の扉に貼ります。朝や寝る前など決まった時間に1回、開いて眺めます
- 集め始めの2〜3週間で「続けたい理由」を一行そえる。台紙のすみやアプリのメモに、なぜやりたいのかを一行だけ書きます。目新しさが切れても残る、自分用の理由です
- 飽きを合図に、行動を生活へくっつける。バッジにワクワクしなくなったら、それを移動の合図にします。行動を歯みがきや通勤など、すでにある習慣の直後に置きます
- うまくいかない時は、器を豪華にしない。ごほうびを増やす前に、「毎日見に行く」動作が抜けていないかを先に確かめます
どれも、意志の強さを前提にしていません。
集める器を用意するとき、はじめの数マスを先に埋めておくと、さらに手をつけやすくなります。そのコツは集める仕組みは続くにまとめました。
集める楽しさは、渡すためにある
集める仕組みは、行動を後押しします。研究もそれを支持しています。
ただし、その力は目新しさから来ていて、時間とともに弱まります。だから、集める楽しさが元気なうちに、習慣そのものを生活の流れへ渡しておく。
まずは今日、続けたい習慣を1つ選んで、たまっていくのが見える器を用意してみてください。そして、集めるのが楽しい最初のうちに、その行動を毎日の決まった時間にくっつけてみましょう。
続ける仕組みのほかの工夫は、習慣の柱にまとめています。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 続けたい習慣を1つ選び、たまるのが目に見える器(バッジ・スタンプ・チェック欄)を1つ用意する
- その器を毎日必ず目に入る場所に置き、決まった時間に1回だけ開いて眺める
- 集め始めの2〜3週間で、続けたい理由を一行だけ書きそえる
- バッジに飽きてきたら、それを合図に行動を歯みがきや通勤など既存の習慣の直後にくっつける
- うまくいかない時は、ごほうびを豪華にする前に「毎日見に行く」動作が抜けていないか確かめる
出典・参考
- Hamari, J., Koivisto, J., & Sarsa, H. (2014) Does Gamification Work? — A Literature Review of Empirical Studies on Gamification. Proceedings of the 47th Hawaii International Conference on System Sciences (HICSS).researchportal.tuni.fi
- Hamari, J. (2017) Do badges increase user activity? A field experiment on the effects of gamification. Computers in Human Behavior, 71, 469-478.research.aalto.fi
- Johnson, D., Deterding, S., Kuhn, K.-A., Staneva, A., Stoyanov, S., & Hides, L. (2016) Gamification for Health and Wellbeing: A Systematic Review of the Literature. Internet Interventions, 6, 89-106.pure.york.ac.uk
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。