描いて覚えると記憶に残りやすい——書き写すより思い出せる
Learning / Research Digest

描いて覚えると記憶に残りやすい——書き写すより思い出せる

学び 更新: 2026/10/20 #覚え方・学び方#仕事の効率化

資格や仕事の暗記で、テキストを何度書き写しても本番で出てこない。覚えたい言葉を簡単な絵にすると、書き写すより記憶に残りやすいと分かっています。大学生を対象にした実験では、描いた単語は書いた単語の約2倍思い出せました。上手さは要りません。今日から使える描いて覚えるコツを手順にまとめました。

資格の勉強で、テキストの用語を何度も書き写す。ノートのページは埋まっていきます。

なのに試験本番、肝心の言葉がどうしても出てこない。

足りないのは書いた回数より、覚え方の入り口かもしれません。

覚えたいことを「簡単な絵」に描くと、書き写すより記憶に残りやすい。カナダの大学の研究チームが、何度も実験で確かめています。

描いた単語は、書いた単語の約2倍思い出せた

最初の研究は、カナダのウォータールー大学のワメスらが2016年に発表した実験です。

実験1では、大学生30人と25人が参加しました。

画面に「りんご」のような単語が次々と出ます。1つにつき40秒。合図に従って、その単語を簡単な絵に描くか、何度も書き写すかします。

そのあと少し時間をおいて、何も見ずに思い出せる単語を書き出してもらいました。

描いた単語のほうが、書いた単語の約2倍も思い出せたのです。

大学生を対象にした自由再生テストの結果を比べた棒グラフ。あとで思い出せた単語の量は、書き写して覚えた単語より、簡単な絵に描いて覚えた単語のほうが約2倍多かった。1つの単語に40秒かけて描くか書くかしたあと、時間をおいて何も見ずに思い出す方法で測っている
図: 同じ40秒でも、描いたほうが記憶に残った(当サイト作成)

この研究は7つの実験を重ねています。描く時間を4秒に削っても、覚える単語を増やしても、描くほうが残りました。

4秒で描ける絵は、ほとんど記号です。それでも差が出た。ここが、この方法の気楽なところです。

用語と「意味」を覚えるときにも効いた

「りんご」なら描けるけれど、資格の用語は無理だ——そう思うかもしれません。

同じチームは2017年に、大学の教科書に載っている用語と、その定義(意味の説明)で試しています。

参加した学生は、定義をそのまま書き写すか、定義の中身を表す絵を描くかしました。結果は、ここでも描いたほうがよく覚えていました。

もとから知っている言葉かどうかの差を取りのぞいても、架空の用語と定義を使っても、描くほうが上でした。

描けないなら、自分の言葉で言い換える

この2017年の研究には、もう1つ大事な結果があります。

定義を自分の言葉で言い換えて書いた人も、描いた人と同じくらい覚えていたのです。

研究チームの見立てはこうです。描くには、定義の意味をいったん頭に置いて、絵という別の形に作り直す必要がある。言い換えも同じ作業をしている。書き写しには、その作業がありません。

つまり、効いているのは絵の出来ばえより、意味を自分で作り直す手間です。

ここから、使い分けが決まります。

  • 形にしやすい言葉(物・動き・関係)→ 絵に描く
  • どうしても絵にならない言葉(法律の要件・抽象的な概念)→ 本を閉じて、自分の言葉で言い換える
  • いちばん効かないのは、教科書の文をそのまま書き写すこと

絵の上手さは関係ない

同じ研究チームの2018年の総説では、絵の上手さや「頭に絵を思い浮かべる力」と、覚えた量のあいだに目立った関係は見られませんでした。

描く動作には、意味を考える、形をイメージする、手を動かす、の3つが一度に入ります。これが一つの記憶にまとまり、思い出す手がかりになる、というのが研究チームの説明です。

描いた絵は誰にも見せません。自分が見て思い出せれば、それで役目は終わりです。

なお、教科書の図を見て覚える方法や、仕組みを箱と矢印で図解する方法は言葉と図をセットで覚えるで扱っています。こちらは、用語1つずつを自分で描いて覚える話です。

今日から試す「1語1スケッチ」

  1. 覚えたい用語と、その意味を1つ選ぶ(所要10秒)
  2. 本を閉じ、意味を表す簡単な絵を描く(30秒〜1分)
  3. 絵にならなければ、意味を自分の言葉で一行に言い換える
  4. 次の日に、何も見ずに同じ絵か一行を思い出して書く

コツは、抽象的な言葉を「たとえ話の絵」にすることです。

「需要と供給」なら、両側から引っぱり合う2本の手。「複利」なら、転がって大きくなる雪だるま。英単語なら、その単語が出てくる場面を1コマで描きます。

ただし、研究で確かめられたのは、学生が短時間で覚えて、比較的すぐに試すという場面が中心です。何か月も先の試験まで同じ差が続くかは、まだはっきりしていません。次の日に思い出して描く練習を重ねておくと安心です。

まずは今日の範囲から1語だけ、意味を絵にしてみてください。

学び方そのものを鍛える話は、学びの柱でも続けています。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 覚えたい用語と、その意味を1つ選ぶ(所要10秒)
  2. 本を閉じ、意味を表す簡単な絵を描く(30秒〜1分)
  3. 棒人間・丸・矢印だけでいい。上手さは関係ない
  4. 絵にならない言葉は、意味を自分の言葉で一行に言い換える
  5. 次の日に、何も見ずに同じ絵か一行を思い出して書く

出典・参考

  1. Wammes JD, Meade ME, Fernandes MA (2016) The drawing effect. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 69(9), 1752-1776 — 7つの自由再生実験で、描いた単語は書いた単語より確実に多く思い出せた(PubMed要旨)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Wammes JD (2017) On the mnemonic benefits of drawing(博士論文・上記2016年研究の全文)— 実験1は大学生30人と25人、1語40秒、描いた語は書いた語の約2倍を自由再生uwspace.uwaterloo.ca
  3. Fernandes MA, Wammes JD, Meade ME (2018) The Surprisingly Powerful Influence of Drawing on Memory. Current Directions in Psychological Science, 27(5), 302-308 — 描く効果は再現性が高く、意味・映像・手の動きの符号統合で説明。画力とは無相関(総説・全文PDF)hsredesign.org
  4. Wammes JD, Meade ME, Fernandes MA (2017) Learning terms and definitions: Drawing and the role of elaborative encoding. Acta Psychologica, 179, 104-113 — 教科書の用語の定義を描くと書き写すより記憶に残り(既知度を統制しても・架空の用語でも)、自分の言葉で言い換えると描くのと同程度に残った(PubMed要旨・2026年10月確認)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。