ノートは手書きかPC入力か——後で理解が残るのは、実は「どう書くか」だった
資格勉強や会議のメモ、手書きとPC入力どちらが後の理解に残るのか。手書きが有利とされた研究と、差が再現しなかった追試の両方を読み解き、道具より効く「自分の言葉に直す」コツを手順にまとめました。
資格試験の講義動画を、一言も逃すまいとPCで打ち込む。会議では発言をそのまま議事録に起こす。手はしっかり動いている。
なのに、あとで読み返すと中身が頭に入っていない。書いたはずなのに、覚えていない。
手書きとPC入力、後の理解に残るのはどちらなのか。有名な研究と、その追試を並べて読むと、答えは「道具」ではありませんでした。
手書きが有利とされた研究と、再現しなかった追試
2014年、ミュラーとオッペンハイマーという2人の心理学者が、ノートの取り方を調べる実験を行いました。
大学生に同じ講義動画を見せ、片方はノートに手書き、片方はノートPCで入力させます。PCはネットを切り、メモ専用にしました。
見終わったあと、テストをします。用語を問う問題と、内容を応用して考える問題の2種類です。
用語を問う問題では、差はほとんど出ませんでした。ところが考えて答える問題では、手書きのほうが良い成績だった、と報告されています。
理由として挙げられたのが、入力の速さです。PCは速く打てるぶん、話し言葉をそのまま書き写しがちになる。手書きは追いつかないので、要点を自分の言葉に直すしかない。この「自分の言葉に直す」ひと手間が、理解を残したと考えられています。
ここで気をつけたいのは、これが実験室での平均的な傾向だという点です。対象はアメリカの大学生、教材は短い講義でした。効果には個人差があり、断定ではなく「そういう傾向がある」として受け取るのが妥当です。
さらに、この話には続きがあります。2019年、モアヘッドらの研究チームが同じ手続きで追試しました。手書きがわずかに有利な傾向は見えたものの、グループ間の差は一貫せず、統計的にはっきりした差にはならなかった、と報告されています。手書きの優位は、言われるほど強く確かなものではない、というのが今の見方です。
下の図が、2つの研究から見えてくる本当の分かれ道です。
見てのとおり、分かれ目は手書きかPCかではありません。話をそのまま写すか、自分の言葉に直すか。ここが理解の残り方を分けています。
「PCだからダメ」ではない——変わるのは書き方
大事なのは道具ではなく、書き方です。
手書きでも全文を写せば処理は浅いまま。PCでも要約しながら打てば、深く考えられます。追試が示したのも、道具を替えるだけでは差が出にくい、ということでした。
会議のメモで考えてみます。発言をそのまま起こした議事録は、あとで読んでも中身が入ってきません。かわりに「要は予算の話」と一言に直しておくと、あとから思い出しやすくなります。
資格勉強の講義動画も同じです。スライドの文字を丸写しするより、区切りごとに「つまり何の話か」を自分の言葉で書くほうが、あとで使える形で残ります。
この「自分の言葉に直す」効き目は、読んだのに説明できないのはなぜかでも詳しく扱っています。学び方そのものを鍛える発想は、学びの柱でまとめています。
今日から試す「写さずにまとめる」メモ術
道具はどちらでもかまいません。今日の講義や会議から、書き方だけを変えられます。
- ひと区切り(数分)ごとに手を止め、要点を自分の言葉で1〜2行にまとめる
- その区切りに「つまり何の話か」の見出しを一言つける(各10秒)
- PCで打つときも、全文コピーはやめて要約入力に切り替える
- 終わって5分、ノートを見ずに要点を思い出して書き足す(2〜3分)
コツは、聞いたことを全部残そうとしないことです。書く量を減らすほど、頭を使う量は増えます。
4の「見ずに思い出す」ひと手間を足すと、さらに残りやすくなります。理由は何度も読み返しても覚えられない理由にまとめています。
丸写しをやめて、一言に直す。それだけで、同じ時間のメモから残るものが変わってきます。まずは次の1区切りを、自分の言葉で書くところから始めてみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 講義や会議は全文を書き写さず、ひと区切りごとに要点を自分の言葉で1〜2行にまとめる
- 区切りごとに「つまり何の話か」を一言の見出しにする(各10秒)
- PCで打つときも全文コピーをやめ、要約入力に切り替える
- 終わって5分、ノートを見ずに要点を思い出して書き足す
出典・参考
- Mueller, P. A. & Oppenheimer, D. M. (2014) The Pen Is Mightier Than the Keyboard: Advantages of Longhand Over Laptop Note Taking. Psychological Science, 25(6), 1159-1168.journals.sagepub.com
- Morehead, K., Dunlosky, J. & Rawson, K. A. (2019) How Much Mightier Is the Pen than the Keyboard for Note-Taking? A Replication and Extension of Mueller and Oppenheimer (2014). Educational Psychology Review, 31(3), 753-780.eric.ed.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。