ゴールが近いほど加速する——目標を小さく割って「あと少し」を作る
Habits / Research Digest

ゴールが近いほど加速する——目標を小さく割って「あと少し」を作る

ゴールが遠いと、やる気は途中でだれてしまう。でも人は、ゴールが近づくほどペースを上げます。カフェのスタンプカード研究が示したこの性質を、勉強や貯金を続ける仕掛けにまとめました。

勉強でも貯金でも、始めた直後はやる気が高い。でも、ゴールが遠いと、だんだんペースが落ちていきます。

「半分終わった」あたりが、いちばんだれやすい。

ところが、不思議なことが起きます。ゴールがすぐそこに見えると、人はまた急に頑張りだす。ラスト数個で一気に片づく、あの感覚です。

この「近づくほど加速する」性質は、うまく使えます。

ゴールが近いほど、人はペースを上げる

キベツらは2006年、あるカフェのポイントカードを調べました。「10杯買うと1杯無料」の、よくある仕組みです。

実在する会員の購買記録を追い、1杯ごとの間隔を測りました。

分かったのは、カードが埋まるほど来店ペースが速まること。研究チームは、購入の間隔が最初の一杯から最後の一杯までで約20%縮んだ、と報告しています。

ゴールが近づくほど、次の一杯までが短くなったわけです。

下の図が、そのイメージです。

10杯で1杯無料のスタンプカードを横一列の点で表した図。左端の1杯目から右端の10杯目に向かって、点と点の間隔がだんだん狭くなっている。左側は「間隔が広い=ゆっくり」、右側は「せまい=ゴール手前は速い」と示され、上向きの矢印で「ペースが上がる」ことを表す。下部に、最初の一杯から最後の一杯までで購入の間隔が約20%縮んだ、と注記している。
図1: ゴールに近づくほど、次の一杯までの間隔が縮む(当サイト作成)

見てのとおり、後半ほどスタンプの間隔がつまっています。

面白いのは、そのあとです。無料の一杯をもらった直後、ペースはいったん落ちました。そして次の無料が近づくと、また加速したのです。

つまり「ゴールが遠い」と感じる区間が、いちばん失速しやすい場所です。

この「近づくと速くなる」性質は、古くから知られています。心理学者ハルは1930年代、迷路のネズミがえさに近づくほど速く走ることを見つけました。ここから「目標勾配効果」と呼ばれます。

ただし、これはカフェの購買という限られた場面の話です。誰にでも同じだけ効くわけではなく、個人差もあります。

「あと少し」を、いつも自分の前に置く

ここから使える発想は1つ。ゴールを、いつも手の届く近さに置くことです。

遠い目標は、その道のりの大半が「まだ遠い」区間になります。だから中だるみが長くなります。

そこで、大きな目標を小さなゴールに割ります。すると、すぐに「あと少し」がやってきます。近づくたびに、あの加速が何度も効きます。

たとえば「参考書を1冊」ではなく「今日は10ページ」。残り2ページになると、自然と手が速まります。

進み具合が見えると、効果はもっと働きます。経験値バー、貯金の目盛り、スタンプの残りマス。「あと2つ」が目に入る形にします。

なお、ゴールの一部を先に埋めておく「先取り」も、同じ家族の工夫です。そちらは集める仕組みは続くにまとめました。この記事の主役は、近づくほど速くなるほうです。

習慣を意志ではなく仕組みで支える発想は、習慣の柱でも扱っています。

今日から試す4つの手順

道具はいりません。目標の「区切り方」を変えるだけです。

  1. 大きな目標を、数えられる小さなゴールに割る(5分)。 「本を1冊」ではなく「1日10ページ」「10回で1周」。ゴールまでの数が一目で分かる形にします。
  2. 進み具合が見える器を用意する(5分)。 紙にマスを10個描く、アプリの進捗バーを使う。「あと何個か」が視界に入るのが肝心です。
  3. ゴールに近い区間は、一気に片づける。 残り2〜3個になったら、その日にまとめて進めます。いちばん加速が効く場所です。
  4. 1つ埋まったら、すぐ次のゴールを置く。 達成の直後はペースが落ちます。空白を作らず、次の「あと少し」を目の前に用意します。

行動のたびに小さな楽しみを足す工夫は、ごほうびは中身が分からないほうが続くにまとめました。加速の勢いに、報酬の楽しさを重ねる形です。

意志を絞り出すより、ゴールを近くに置くほうがラクです。まずは今日、大きな目標を1つ選び、「10個で1周」に割ってみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 大きな目標を「10回で1周」のように数えられる小さなゴールに割る
  2. 進み具合が一目で見えるバーやマスを用意する
  3. ゴールに近い区間(残り2〜3個)はその日に一気に片づける
  4. 1つ埋まったら、空けずにすぐ次の小さなゴールを目の前へ置く

出典・参考

  1. Kivetz, R., Urminsky, O., & Zheng, Y. (2006) The Goal-Gradient Hypothesis Resurrected: Purchase Acceleration, Illusionary Goal Progress, and Customer Retention. Journal of Marketing Research, 43(1), 39-58.home.uchicago.edu
  2. Chicago Booth Review: Going for the Goal(Kivetz らのカフェ会員データ研究を、購入間隔が約20%短縮・報酬後の停滞と再加速の点から解説)chicagobooth.edu
  3. Coglode: The Goal Gradient Effect(目標勾配効果の要点と、ハルによる原型の動物実験の紹介)coglode.com

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。