ごほうびは「中身が分からない」ほうが続く—不確実な報酬の動機づけ
Habits / Research Digest

ごほうびは「中身が分からない」ほうが続く—不確実な報酬の動機づけ

貯金や勉強のごほうびを決めても、同じ中身に飽きて続かない。ごほうびをくじ引きや封筒でランダムにすると続けやすくなる、という研究をもとに、家計・運動・勉強で使える仕掛けにまとめました。

貯金が続いたら自分に500円のごほうび。そう決めて、最初の数回はうれしい。

でも同じ500円を何度かもらううちに、手ごたえが薄れていく。

気づけば、ごほうびもルールごと忘れている。

続かないのは、ごほうびがショボいからではないかもしれません。効くのは金額よりも、「次に何がもらえるか分からない」というワクワクのほうです。

「中身が分からない」ごほうびが人を動かす

同じ手間なら、確実にもらえるごほうびのほうが得です。ところが人は、そう動きません。

これを調べたのが、シカゴ大学のシェンとフィッシュバック、シーです(2015年・4つの実験)。実際にお金を配る場面で、確実な報酬と不確実な報酬のどちらに人が力を注ぐかを比べました。

有名なのが、水を飲む実験です。2分で1.4リットルの水を飲めば報酬、という課題を出しました。

一方のグループは「確実に2ドル」。もう一方は「コイン投げで1ドルか2ドル」。金額の期待値はむしろ確実なほうが上です。

それでも、水を飲みきった人が多かったのは、中身が分からない不確実なグループでした。

下の図が、確実なごほうびと不確実なごほうびの違いです。

確定ごほうびは毎回200円で中身が分かっているためすぐ慣れて飽き続きにくいのに対し、不確実ごほうびはくじで100〜300円と開けるまで分からずワクワクが残るため続きやすい、という2つのパネルを並べた比較図。下部に、この効果はごほうびを追う過程を楽しんでいるときに起き、賞金だけを見ていると逆効果になる、という条件が示されている
図1: 効くのは金額より「開けるまで分からない」こと(当サイト作成)

見てのとおり、差を生んでいるのは金額ではなく「開けるまで分からない」ことです。

ただし、慎重に読む必要があります。これは短い作業を使った実験室の研究で、報酬も小さな金額です。何か月もかかる習慣を長期に追った調査ではありません。

なぜ不確実だと、もう一回やりたくなるのか

理由は「解けない謎」にあります。中身が分からないと、確かめたくて気持ちがそわそわします。

このそわそわが、退屈になりがちな作業に小さな興奮を足します。研究者は、その興奮が人を動かしていると見ています。

後続の研究(シェンとシーら・2019年)は、この効果が「繰り返し」に効くことを示しました。同じく4つの実験で、報酬が不確実なほうが、その行動をもう一度やる人が増えたのです。実験室でも現場でも、金額の大小を問わず同じ傾向でした。

ただし、効く条件が2つあります。1つは、不確実さがその場ですぐ晴れること。あとで結果が分かる形だと効きません。もう1つは、賞金そのものに気を取られず、行動を追う過程を楽しんでいるとき。ここが崩れると、逆効果になります。

たとえば、家計簿アプリで毎月1万円を貯金する会社員を思い浮かべてください。「達成したら500円」だと、金額に慣れて張り合いが消えます。

そこで、ごほうびを封筒くじに変えます。中身は300円か、好きなお菓子か、映画1本。達成した瞬間に1枚引く。この「引くまで分からない」が、来月の一回を引き寄せます。

習慣は意志ではなく仕組みで支える。この発想は習慣化の歩き方でも扱っています。

今日から試す3つの手順

やり方はシンプルです。ごほうびの中身を、あなた自身にも分からない形にします。仕込みは10分で終わります。

  1. 続けたい行動を1つだけ選ぶ(5分)。 貯金・運動・勉強など、まず1つ。あれもこれもに広げないのがコツです。
  2. ごほうびを3種類、封筒やくじにする(5分)。 紙に「300円」「好きなお菓子」「動画1本」と書き、折りたたんで箱へ。中身が見えない状態にするのが肝心です。スマホのルーレットアプリでも代わりになります。
  3. 行動の直後に1枚引く、と順番を固定する(毎回)。 ジョギングから帰ったら引く。問題集を1章終えたら引く。終わってすぐ、その場で結果が分かる形にします。

不確実さが弱いと感じたら、当たりの幅を広げます。ハズレ(ノーマルなお菓子)と大当たり(ずっと欲しかったもの)の差を大きくすると、引く瞬間のワクワクが増します。

つまずきやすい点

注意も1つあります。賞品が豪華すぎると、意識がそちらへ向いてしまう場合があります。

「1万円が当たるかも」を狙うと、行動よりくじの結果が主役になります。研究では、賞金に気を取られると効果が消えました。

だから、ごほうびは軽く、日常の範囲に留めます。数百円か、ちょっとした楽しみくらいがちょうどいいのです。

似た仕掛けに、好きなものを行動に抱き合わせる誘惑バンドリングがあります。あちらは「何を」楽しむかの工夫、こちらは「中身を隠す」工夫、という違いです。

もう1つ。行動の最中そのものに楽しさを足す方法は三日坊主は意志のせいじゃないにまとめました。ごほうびが不確実だと続くのは、この「今すぐの手ごたえ」を興奮の形で足しているから、とも読めます。

豪華なごほうびより、開けるまで分からない小さなくじ。まずは今日、続けたい行動を1つ選び、封筒を3枚つくるところから始めてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 続けたい行動を1つ選ぶ(貯金・運動・勉強など、1つだけ)
  2. ごほうびを3種類決め、中身を隠して封筒やくじにする
  3. 行動が終わった直後に1枚引く、と順番を固定する
  4. 1週間試し、引く前ではなく引く瞬間のワクワクを確かめる

出典・参考

  1. Shen, L., Fishbach, A., & Hsee, C. K. (2015) The Motivating-Uncertainty Effect: Uncertainty Increases Resource Investment in the Process of Reward Pursuit. Journal of Consumer Research, 41(5), 1301-1315.academic.oup.com
  2. Shen, L., Hsee, C. K., & Talloen, J. H. (2019) The Fun and Function of Uncertainty: Uncertain Incentives Reinforce Repetition Decisions. Journal of Consumer Research, 46(1), 69-81.academic.oup.com
  3. Chicago Booth Review: Uncertainty Can Improve Motivationchicagobooth.edu

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。