寝酒で寝つきは良くなる——でも夜半の眠りは浅くなる
仕事帰りの一杯や寝る前の晩酌で、寝つきが良くなる気がする。でもその安心には裏があります。寝る前のお酒は前半の眠りを深くする一方、酒がさめる夜半に中途覚醒を増やし、REM睡眠を減らします。禁酒の話ではなく、飲む量とタイミングを現実的に整えるコツをまとめました。
仕事帰りの一杯。あるいは、寝る前の晩酌。
飲むとすっと眠気が来て、寝つきが良くなる気がする。だから「眠るために」飲む人は少なくありません。
でも、その安心には裏があります。寝る前のお酒は、たしかに寝つきを速くします。問題は、そのあとの夜半に起きています。
前半は深く、後半は浅くなる
ここで手がかりになるのが、アルコールと睡眠を調べた研究です。
イブラヒムらの総説は、健康な人を対象にした複数の実験研究を集めて整理したものです。
分かったことは、はっきりしています。お酒はどの量でも、寝つくまでの時間を短くし、前半の眠りを深く安定させます。ここまでは「寝つきが良くなる」感覚と一致します。
ところが後半は逆でした。多くの研究で、睡眠の後半に目が覚める回数が増えています。
REM睡眠(夢を見る浅い眠り)も動きます。量が多いと最初のREMが遅れ、夜全体のREMの割合が減る傾向がありました。
なぜ後半で崩れるのか。別の総説(タッカーら)は、体のしくみから説明しています。アルコールは数時間で分解されて抜けていきます。抜けたあとに反動が来て、浅い眠りと目覚めが増える、という見方です。
図のように、寝酒の効果は前半に集中し、後半でしぼみます。同じ一晩でも、時間帯で真逆のことが起きています。
いずれも実験室での研究で、対象は健康な人が中心です。人数は多くなく、量や体質による個人差もあります。だから断定ではなく、傾向として受け取ってください。
「寝つきのための一杯」が裏目に出るとき
問題は、飲む理由が「眠るため」になっているときです。
寝つきの速さだけを見ると、お酒は効いているように感じます。でも夜半に何度も目が覚めれば、朝の回復感は下がります。翌日のだるさが「もう一杯」を呼ぶことも起きます。
とくに寝る直前の一杯は、酒が抜けるタイミングが睡眠の後半にちょうど重なりやすい。前半の得より、後半の損が目立ちます。
まず今日は、寝るための飲酒だけをやめてみてください。晩酌そのものを我慢する話ではありません。
量とタイミングを整える
現実的なのは、ゼロか百かではなく、飲み方を少しずらすことです。
- 寝る直前ではなく、夕食どきまでに飲み終える(就寝の3時間前を目安に)
- 眠るための一杯はやめ、寝つきは別の方法で整える
- 飲む日でも量を減らし、週に何日かは飲まない日をつくる
- 寝る前に水を1杯飲んでおく
寝つきを助けたいなら、光の調整が使えます。夜の強い光を落とす手順は寝る前のスマホと光の整え方にまとめました。
夕方のコーヒーも夜の眠りに残ります。切り上げる時間の目安はカフェインをやめる時間が参考になります。
寝る時刻をそろえるのも土台になります。くわしくは睡眠のリズムを整えるへ。
眠れない状態が続くときは
最後に、ひとつだけ。
お酒を控えても、眠れない夜が何週間も続くときは、飲み方の工夫だけで抱え込まないでください。背景に体や心の不調が隠れていることもあります。気になるときは、早めに医療機関や専門家に相談してください。
お酒との付き合い方が自分で戻せないと感じるときも、同じです。相談は弱さではなく、回復への近道です。
体の整え方は健康の柱でもまとめています。
今夜はまず、寝る直前の一杯を、夕食どきの一杯に前倒しすることから始めてみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 寝る直前の一杯より、夕食どきまでに飲み終える
- 眠るための飲酒はやめ、寝つきは光や入浴で整える
- 飲む日でも量を減らし、週に何日か飲まない日をつくる
- 寝る前は水を1杯。翌朝のだるさを軽くする
- 眠れない状態が続くときは、抱え込まず医療機関に相談する
出典・参考
- Ebrahim, I. O., Shapiro, C. M., Williams, A. J., & Fenwick, P. B. (2013) Alcohol and Sleep I: Effects on Normal Sleep. Alcoholism: Clinical and Experimental Research, 37(4), 539-549.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Thakkar, M. M., Sharma, R., & Sahota, P. (2015) Alcohol disrupts sleep homeostasis. Alcohol, 49(4), 299-310.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。