「やめる」目標より「やる」目標が続く——1000人を1年追った実験
「甘いものをやめる」「夜更かしをやめる」。そう決めた抱負ほど、なぜか続きません。1000人超を1年追った実験では、同じ願いでも「代わりに〜する」と書いた人のほうが成功率が高いと出ました。抱負を「やる」型に書き直す手順にまとめました。
「今年こそ甘いものをやめる」「夜更かしをやめる」。年のはじめに、そう決めたことはありませんか。
でも「やめる」と書いた抱負ほど、数週間で消えていきます。気づけば、また元どおり。
続く人と続かない人の差は、意志の強さだけではないのかもしれません。目標を書いた「言葉の向き」が、実は効いています。
「やめる」より「代わりに〜する」が続く
心理学では、目標を2つの向きに分けます。「〜を避ける・減らす」という回避型と、「〜に近づく・増やす」という接近型です。
「甘いものをやめる」は回避型。「代わりに果物を食べる」は接近型。願っている中身は同じでも、書き方の向きが逆です。
スウェーデンの研究チームが、新年の抱負でこれを大きな規模で調べました(オスカーソンら 2020)。
一般から集めた1066人を追いかけ、1年後まで経過を聞いています。抱負の中身は「運動」「減量」「食習慣」が多くを占めました。
1年後まで答えた約730人のうち、「続けられた」と自己申告した人は全体の55%でした。
そして向きで分けると、差が出ます。接近型の抱負を立てた人は58.9%が成功と答え、回避型の人は47.1%。統計的にも意味のある差でした。
下の図が、その書き直し方です。
やることは、願いの中身を変えることではありません。同じ願いを「近づく言葉」で書き直すだけです。
なぜ「やめる」目標は空回りするのか
「甘いものをやめる」と決めた人には、向かう先がありません。あるのは「触れてはいけないもの」だけです。
だから一日じゅう、頭のどこかで甘いものを監視し続けます。我慢が続くほど、かえって気になる。
「代わりに果物を食べる」なら、体は行き先を持てます。やることが1つ決まっていれば、手はそちらに動きます。
下の図が、成功率の差です。
差は1割ほど。派手ではありません。でも、書く言葉を変えるだけで得られる差だと思えば、試さない手はありません。
回避型のつらさは、別の研究でも指摘されています。エリオットとシェルドンは、「避ける」ことを中心に置いた目標ほど、達成や満足度の面で不利になりやすいと報告しました(1997)。
抱負を「やる」型に書き直す3ステップ
手順は3つだけです。
1. 「やめたいこと」を1つ書く
「間食をやめる」「スマホを見すぎない」など、いまの抱負をそのまま1つ書き出します。
2. 「代わりに何をするか」に変える
「やめる」の裏で、代わりにしたい行動を1つ決めます。「間食をやめる」→「小腹がすいたらお茶を淹れる」。
3. 「いつ・どこで」を足す
その行動が起きる場面を決めて、一文にします。「15時に手が伸びたら、お茶を淹れる」。
いつ・どこでやるかの決め方はif-thenプランニングに、代わりの楽しみを乗せるコツは誘惑バンドリングにまとめています。
ひとつ、注意があります。この研究は自己申告が中心で、抱負の言葉も本人が自由に選んだものです。「言い換えれば必ず続く」と保証するものではありません。参加者は、もともとやる気の高い人に偏っていた可能性もあります。
それでも、紙とペンだけで、しかも願いの中身を変えずに試せる工夫です。損はありません。
新年や月初めのような区切りは、この書き直しを始める合図になります。区切りの使い方は月曜・1日・誕生日の直後は始めやすい話に、仕組みで習慣を支える発想は習慣づくりの柱にまとめました。
まずは今日、続かなかった抱負を1つ思い出して、「代わりに何をするか」に書き直してみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 続かなかった抱負を1つ、「〜をやめる」の形でそのまま書き出す
- その裏で「代わりに何をするか」を1つ決め、「〜する」の形に書き換える
- 「いつ・どこで」やるかを1つ決めて、その一文に足す
- 書いた一文を、冷蔵庫やスマホの壁紙など毎日目に入る場所に置く
- 1週間続いたら、次の抱負も同じ形で書き足す
出典・参考
- Oscarsson, M., Carlbring, P., Andersson, G. & Rozental, A. (2020) A large-scale experiment on New Year's resolutions: Approach-oriented goals are more successful than avoidance-oriented goals. PLOS ONE, 15(12), e0234097.(オープンアクセス全文)journals.plos.org
- Elliot, A. J. & Sheldon, K. M. (1997) Avoidance achievement motivation: A personal goals analysis. Journal of Personality and Social Psychology, 73(1), 171-185.(抄録・PubMed)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。