読んだのに人に説明できないのはなぜか——「なぜそうなるのか」を自分の言葉にすると残りやすい
本を読んで分かったつもりでも、いざ問われると手が止まる。読み返すだけでは記憶に残りにくいのかもしれません。64本の研究を集めた分析をもとに、学んだ直後に「なぜ?」を自分の言葉で説明する自己説明という学び方を、今日から試せる手順にまとめました。
参考書を一通り読んで、内容はつかめた気がする。ところが後日、人に聞かれると言葉が出てこない。
問題を前にすると、手が止まってしまう。
分かったつもりと、本当に分かっているのは別物かもしれません。その差を埋める学び方に、自己説明という方法があります。
読み返すより、「なぜ?」を自分に説明する
自己説明とは、学んだことについて「なぜそうなるのか」「どうつながるのか」を、自分の言葉で説明してみることです。
ビスラらのグループが、2018年にこの効果をまとめた研究を発表しました。
条件を満たす64本の研究を集め、69の効果量を照らし合わせたものです。学習課題の種類や教科など、20の条件も分析しています。
結果は、自己説明を促すと成績が上がる傾向が広く見られた、というものでした。全体の効果は中くらい(g=0.55)と報告されています。
ここで大事なのは、これが多くの研究を平均した傾向だという点です。教材や人によって効き方に幅があり、断定ではなく「そういう傾向がある」と受け取るのが妥当です。
もう一つ、肝になる区別があります。ダンロスキーらのレビューは、自己説明を有望な学び方の一つに挙げつつ、こう指摘します。
要約や言い換えで終わらせず、「なぜ・どうつながるか」まで説明しようとすること。ただの言い換えとは別物だ、というのです。
下の図が、読み返すだけの学び方と、自己説明の違いです。
見てのとおり、違いは知識が点のままか、つながるかです。
言い換えと、本当の説明はどう違うか
資格の勉強をしている会社員を思い浮かべてください。テキストの一文を読み、線を引き、また次へ進む。
これは読み返しに近い進め方です。目は文字を追っていても、頭は表面をなぞっているだけになりがちです。
自己説明は、ここで一度止まります。「なぜこの制度はこう決まっているのか」を、本を閉じて自分の言葉で言ってみる。
このとき、テキストの文をそのまま言い直すのは、まだ言い換えです。「AだからB、それが結果Cにつながる」と、理由やつながりまで言えて初めて説明になります。
教科書に向かう学生も、新しい技術書を読む個人開発者も同じです。読んだ直後に「要するになぜ?」と一言、自分に問うだけで進み方が変わります。
ダンロスキーらの紹介する一例では、練習中に自己説明した人の最終成績が、しなかった場合の約3倍だったといいます(およそ90%対30%未満)。ただしこれは印象的な一例で、平均した効果は上の中くらい(g=0.55)のほうです。強い期待ではなく、静かに効きやすい習慣として使うのがよさそうです。
一つ注意点があります。その分野の知識がまだ乏しいと、「なぜ?」に答えにくく、効きにくいことがあります。
まったくの入門段階では、まず基本の説明を一通り読んでから試すほうが、詰まりにくくなります。
今日から試す「なぜ?のひと言」
やり方はかんたんです。学んだ直後に、自分に一つ問いかけるだけ。道具もいりません。
- 1つ学び終えたら、本やノートを閉じる(所要10秒)
- 「なぜそうなる?」と、声か紙で自分に説明する(1項目30秒〜1分)
- 言い換えで止まらず、理由やつながりまで言えたか確かめる
- 詰まった場所に印をつけ、そこだけ読み直す
コツは、すらすら言える所ではなく、詰まる所を探すことです。説明に詰まった箇所こそ、分かったつもりだった穴です。
全部の項目でやる必要はありません。今日は1つだけでも、点だった知識がつながり始めます。
思い出す力そのものを鍛える発想は、本を閉じて思い出す勉強法にまとめました。覚えた内容を長く残す間隔のとり方は、間隔をあけた復習が役に立ちます。学び方を育てる話は、学びの柱でも扱っています。
参考書を1ページ読むたびに、なぜ?と問い直す。まずは今日学んだ1つに「なぜ?」を問うところから始めてみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 学んだ直後に「なぜそうなる?」と声か紙で自分に説明する
- 言い換えで終わらせず、理由やつながりまで言えたか確かめる
- 説明に詰まった場所に印をつけ、そこを読み直す
- まずは今日学んだ1項目だけで試してみる
出典・参考
- Bisra, K., Liu, Q., Nesbit, J. C., Salimi, F., & Winne, P. H. (2018) Inducing Self-Explanation: A Meta-Analysis. Educational Psychology Review, 30(3), 703-725.eric.ed.gov
- Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013) Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4-58.aft.org
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。