間違えた問題ほど記憶に残る——自信をもって答えて、正解で直す
過去問やドリルで間違えるのが怖い。でも自信をもって間違えた問題ほど、正解を知ったあとによく直ると報告されています。間違いを学びの燃料に変える、テスト形式の練習の手順をまとめました。
過去問を解いていて、間違えるのが少し怖い。自信のある問題ほど、答えを書く手が止まる。
外すのは恥ずかしい。だからつい、解答を先に見て「なるほど」で済ませてしまう。
でも、記憶に残りやすいのは逆かもしれません。自信をもって答えて外し、正解で直す。この回り道こそが効いてきます。
自信をもって間違えた問題ほど、あとで直る
「間違い=ムダ」ではありません。強く思い込んで外した間違いほど、正解を知ったあとによく直る。これを心理学で hypercorrection(ハイパーコレクション)と呼びます。
バターフィールドとメトカーフが2001年に報告しました。実験室で参加者に一般教養の問題を解かせ、答えごとに、その答えへの自信の度合いもつけてもらいます。
そのあと正解を見せ、少し時間をおいて同じ問題をもう一度解かせました。すると、自信をもって間違えた問題ほど、次はよく正解できたと報告されています。
見てのとおり、分かれ目は「間違えたときの自信」です。強く思い込んでいたほうが、あとで直りやすいのです。
なぜ「間違い」が記憶を強くするのか
自信があった分、正解が「え、そうなの?」と意外に感じられる。この驚きに注意が向き、記憶に強く残る、という説明があります。
ファツィオとマーシュは2009年、2つの実験でこれを確かめました。予想と違うフィードバックほど、その見た目も中身もよく覚えていたと報告しています。
メトカーフは2017年の総説で、間違えたあとに正解のフィードバックを受ける学び方は学習の助けになる、とまとめています。間違いを避けるより、活かすほうへ発想を変える話です。
ただし、注意も要ります。これらは実験室で一般教養の問題を使った研究が中心で、いつでも同じだけ効くわけではありません。
年齢による差も報告されています。ある研究では、若い世代ではっきり出た効きめが、高齢の世代では弱まりました。効き方には個人差があると受け取るのが妥当です。
資格試験でも受験でも、答えを書き切ってから丸をつける
やることは1つ。答え合わせの前に、自分の答えを必ず出し切ることです。
資格試験の勉強なら、テキストを読み返すより、まず過去問を1問解く。うろ覚えでも「これだ」と決めて書いてから、解答を開きます。
受験生なら、暗記カードの裏を先に見ない。表を見て自分で答えてから、裏で確かめる。
社会人の学び直しでも同じです。研修資料を眺める前に、章の問いに自分なりの答えを書く。それから本文と照らします。
外すのが怖くて答えをぼかすと、この効きめは弱まります。当てにいって、堂々と外すほうが得です。
今日から試す「先に答えて、外して、直す」
道具はいりません。いつもの教材で、順番を変えるだけです。
- 答えを見る前に、まず自分の答えを書き切る(1問30秒〜)
- 「たぶん」で濁さず、今わかる範囲で自信をもって答える
- 答え合わせで、外した問題ほど正解とその理由をその場で確かめる
- 数日おいて、同じ問題を白紙からもう一度解き直す
コツは、間違いを消しゴムで消さないこと。どう外したかが、直すときの手がかりになります。
答えを見る前に自分で答えを作る発想は、答えを隠して自分で作る学び方とも重なります。習う前にわざと当てにいくなら、答えを習う前に当ててみる学び方も参考になります。
外した問題を数日後に白紙から解き直す部分は、本を閉じて思い出す勉強法が効いてきます。学び方そのものを育てる話は、学びの柱でもまとめています。
まずは今日の1問を、答えを見る前に自分で答えてから丸をつける。外れたら、それが今いちばん伸びる問題です。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 過去問やドリルは、答えを見る前にまず自分の答えを書き切る
- 「たぶん」で濁さず、今わかる範囲で自信をもって答える
- 答え合わせでは、外した問題ほど正解とその理由をその場で確かめる
- 数日おいて、同じ問題を白紙からもう一度解き直す
出典・参考
- Metcalfe, J. (2017) Learning from Errors. Annual Review of Psychology, 68, 465-489.columbia.edu
- Butterfield, B., & Metcalfe, J. (2001) Errors committed with high confidence are hypercorrected. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 27(6), 1491-1494.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Fazio, L. K., & Marsh, E. J. (2009) Surprising feedback improves later memory. Psychonomic Bulletin & Review, 16(1), 88-92.pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Eich, T. S., Stern, Y., & Metcalfe, J. (2013) The hypercorrection effect in younger and older adults. Aging, Neuropsychology, and Cognition, 20(5), 511-521.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。