暗記しても本番で出てこない——答えを隠して自分で作ると記憶に残る
Learning / Research Digest

暗記しても本番で出てこない——答えを隠して自分で作ると記憶に残る

何度も見て覚えた用語が、本番になると出てこない。答えを先に見るより、一部を隠して自分で作り出すほうが記憶に残りやすい。86の研究を集めた分析をもとに、答えを見る前の「自分で埋める一手」を、今日から試せる手順にまとめました。

新しい用語を、何度も目でなぞって覚える。ページの見た目はもう頭にあるのに、いざ空欄を埋める段になると手が止まる。

答えを見れば「あぁ、それ」と思う。でも、自分からは出てこない。

足りないのは、覚えた回数ではないのかもしれません。答えを受け取るより、一部を自分で作り出すほうが残りやすい。これを生成効果と呼びます。

読むより、一部を「自分で作る」ほうが残る

生成効果とは、答えをそのまま読むのではなく、一部が欠けた状態から自分で作り出すと、あとで思い出しやすくなる現象です。

古い、けれど有名な実験があります。スラメカとグラフという2人が、1978年に5つの実験を行いました。

参加者に単語のペアを見せます。一方のグループには答えをそのまま読ませ、もう一方には、ヒントと簡単なルールから相手の単語を自分で作らせました。

結果は、どの実験でも「自分で作った」グループのほうがよく覚えていました。穴埋めのテストでも、何も見ずに思い出すテストでも、同じ傾向だったと報告されています。

これは一つの研究だけの話ではありません。

2007年に、バーチらのグループが86本の研究を集めて分析しました。445の比較を合わせると、自分で作ったほうが平均して有利で、その差は標準偏差の半分ほどだった、と報告されています。

ただし、注意も要ります。同じ論文は、条件によって効きめの大きさに大きなばらつきがあった、とも述べています。いつでも同じだけ効くわけではありません。

対象の多くは、実験室での単語を使った課題でした。効き方には個人差があり、断定ではなく「そういう傾向がある」と受け取るのが妥当です。

学び方を2通り比べた図。左は「答えを読む」で、『暑い』の反対は『寒い』と最初から印刷された答えをそのまま読む様子。数日後に残る量を示す横棒は短くうすい。右は「自分で産み出す」で、答えの欄が空欄になっていて、自分で答えてから確認する様子。数日後に残る量を示す横棒は長く濃い。全部を思い出すのではなく、欠けた一部だけを自分で作るのが違いだと注記されている
図1: 同じ答えでも、読むと薄く、自分で作ると濃く残る(当サイト作成)

図のように、答えをそのまま読むと記憶はうすく残ります。欠けた一部を自分で埋めると、同じ答えでも濃く残ります。

「思い出す」とも「なぜ?」とも違う

似た勉強法と、どこが違うのか。ここが分かれ目です。

本を閉じて全部思い出すのは、手がかりが無い状態から丸ごと引き出す練習です。これは本を閉じて思い出す勉強法にまとめました。

生成効果は、もう少し軽い。ヒント(一部)が残っている状態から、欠けた分だけを自分で作る。全部でなくていいのが特徴です。

「なぜそうなるのか」を説明するのとも違います。それは「なぜ?」で理解を深める学び方の役目です。ここでは理由を語るより先に、答えそのものの一部を自分でひねり出します。

学生なら、単語帳の訳語を手で隠し、最初の一文字だけ見て自分で言ってから確認する。

社会人なら、資料を読む前に見出しだけ見て、中身を自分の言葉で一度書いてみる。それから本文と照らす。

答えを見てから「知ってた」と思うより、見る前に半歩だけ自分で踏み出す。この半歩が、記憶に効いてきます。

今日から試す「答えを見る前の一手」

道具はいりません。いつもの教材のまま、順番を変えるだけです。

  1. 覚えたい項目の答え(訳語・意味・結論)を、手か赤シートで隠す(数秒)
  2. ヒント(最初の文字・関連語・見出し)から、自分で答えを声か紙に出す(1項目20〜30秒)
  3. 出してから隠していた答えを開き、合っていたか確かめる
  4. 数日おいて、同じ項目をもう一度、自分で作るところからやり直す

コツは、答えを見る前にかならず一度、自分でひねり出すことです。見てからでは、ただの読み返しに戻ります。

間隔をあけて繰り返すと、さらに長く残ります。やり方は間隔をあけた復習が参考になります。

うまく作れないときは、無理をしない

一つ、落とし穴があります。手がかりがまったく無いと、自分では何も作れません。

知らない分野で、いきなり空欄だけ見ても、埋めようがない。この状態では、先に一度ざっと読んで土台を作るほうが早いです。

作れそうで作れない、その「あと一歩」のところが、いちばん効きます。全部の項目でやる必要もありません。

学び方そのものを育てる話は、学びの柱でもまとめています。

まずは今日覚えたい1項目を、答えを隠して自分で作ってから確認する。そこから始めてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 覚えたい項目は、答え(訳語・意味・結論)を手か赤シートで隠す
  2. ヒント(最初の文字・関連語・見出し)から、自分で答えを声か紙に出す
  3. 出してから答えを開き、合っていたか確かめる
  4. 数日おいて、同じ項目をまた自分で作るところからやり直す

出典・参考

  1. Slamecka, N. J., & Graf, P. (1978) The Generation Effect: Delineation of a Phenomenon. Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory, 4(6), 592-604.andymatuschak.org
  2. Bertsch, S., Pesta, B. J., Wiscott, R., & McDaniel, M. A. (2007) The generation effect: A meta-analytic review. Memory & Cognition, 35(2), 201-210.mcdaniel97.github.io

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。