わずか3秒の中断でも、手順ミスは2倍に——戻った直後の1手が危ない
「ちょっといい?」と呼ばれて数秒で戻ったのに、どこまでやったか分からない。そんな経験を調べた実験があります。大学生300人の研究では、約3秒の中断で手順を間違える率が約2倍、約4秒で約3倍でした。仕事に持ち帰れる小さな習慣をまとめます。
請求書の入力中に「ちょっといい?」と呼ばれる。返事をして、ものの数秒で席に戻る。
画面を見て、手が止まります。振込先は入れたか、金額はどうだったか。数秒しか離れていないのに、続きが分かりにくい。
この感覚を、実験でそのまま確かめた研究があります。
数秒の中断で、何が起きたか
2014年に発表された Altmann らの論文です。 掲載誌は Journal of Experimental Psychology: General です。
対象はミシガン州立大学の学部生300人。画面上で、7つの手順を決まった順に何度も繰り返す課題を行いました。手順の名前は「UNRAVEL」という7文字になぞらえてあり、各手順には小さな判断(例:文字がアルファベットの前半か後半か)が付いています。
ときどき課題が中断されます。中断中は、画面に出た文字を打つだけ。文字2つで約2.8秒、4つで約4.4秒です。
結果は、論文の要旨にこう書かれています。
- 約2.8秒の中断で、手順の順番を間違えるミスが約2倍
- 約4.4秒の中断で、同じミスが約3倍
増えたのは、中断から戻った直後の1手でした。2〜5手目の間には差がなく、影響は復帰直後の1手に集中していました。
図の数値は論文の本文にある値で、復帰直後の1手と、そのあとの2〜5手目を比べたものです。
「ミスが増えた」の中身
増えたのは「手順の順番を取り違えるミス」でした。
1つの手順の中での判断ミスや打ち間違いは、中断があっても増えていません。やり方は分かっているのに、「いまどこか」が飛んでしまう。そんな種類のミスです。
論文の著者は、中断で注意の向け先が移ると、手順の流れを追う働きが途切れるためだと解釈しています。
また、この結果には条件があります。
- 実験室での単純な課題で、参加者は大学生だけ
- 課題の手順は事前に練習済み
- 数値は「ミスの割合」であり、実際の仕事のミスが何倍になるかを示すものではない
仕事で同じ倍率になるとは言えません。それでも、「短い中断でも、手順の続きが危うくなる」という方向は、日々の実感とも重なります。
日本の職場で起きやすい場面
数秒で済む中断は、職場にいくらでもあります。
隣の席からの声かけ、チャットの通知、スマホの着信。入力、転記、設定変更のように「手順を順に進める作業」の最中に来ると、実験と同じ形になります。
長めの中断のあとに集中が戻りにくい話は注意残余で、切り替えの積み重ねはタスク切り替えのコストで扱いました。この記事は、もっと短い数秒の中断が対象です。
割り込まれたあとの焦りと消耗は、割り込みで作業は速くなる——でもストレスは上がったでも紹介しています。
試せる3つの小さな習慣
研究が示したのは「中断の直後にミスが増える」ところまでです。次の習慣は、その結果を生活に当てはめた工夫で、効果を確かめた実験はありません。負担が小さいので、試す価値はあります。
- 立つ前に、いまの手順を指でさす。 呼ばれたら、作業中の行や項目を指でさしてから席を離れます。所要2秒です。
- 終えた手順に線を引く。 紙の手順書やチェックリストがあれば、終わった項目に線を引いておきます。戻ったとき、続きがひと目で分かります。
- 戻った直後の1手だけ、ゆっくり進める。 ミスが集まるのはここです。
手順作業の最中は、通知をまとめて見る設定にしておくと、そもそもの中断が減ります。
声をかけられたときは、「いまの手を終えてからでもいい?」と一言返す方法もあります。キリのよいところまで進めれば、続きを迷う場面が減ります。
まとめ
手順のある作業中は、数秒の中断でも、続きを取り違えやすくなります。
増えるのは、戻った直後の1手です。今日、作業の途中で呼ばれたら、席を立つ前に指でさして、戻ったら最初の1手だけゆっくり進めてみてください。ほかの集中の工夫は集中・仕事の記事一覧にまとめています。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 手順のある作業(送金・入力・設定変更など)の途中で呼ばれたら、立つ前に「いま何手目か」を指でさして確かめる
- 紙やメモアプリに、終えた手順へ線を引いておく
- 戻った直後の1手だけは、いつもよりゆっくり進める
- 手順作業の最中は、スマホの通知を切っておく
出典・参考
- Altmann, E. M., Trafton, J. G., & Hambrick, D. Z. (2014) Momentary interruptions can derail the train of thought. Journal of Experimental Psychology: General, 143(1), 215-226.(著者公開の全文PDF)interruptions.net
- Michigan State University による研究の解説(ScienceDaily 掲載・2013年1月)sciencedaily.com
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。