概念マップで覚える——用語を線でつなぐと理解が残る
テキストを読み込んだのに、用語どうしの関係を聞かれると詰まる。用語を四角で囲み、関係を線とひと言でつなぐ「概念マップ」は、読むだけの学習より成績が高いとメタ分析で報告されています。自分で作ると効果が大きい一方、条件もあります。資格や仕事の勉強で試せる作り方を手順にまとめました。
資格の参考書を2周して、用語の意味はひと通り言えるようになりました。
それでも問題集で「AとBはどう関係するか」と聞かれると、手が止まります。用語はバラバラに覚えていて、関係が頭の中で結びついていないからです。
この弱点を補う方法として、学習研究で調べられてきたのが「概念マップ」です。用語を四角で囲み、関係を線とひと言でつなぎます。
概念マップとは何か
概念マップは、用語(概念)を四角や丸で囲み、関係のあるものを線で結んだ図です。線の上には、関係を表す短い言葉を書き添えます。「〜を強める」や「〜のあとに起きる」といった言葉です。
マインドマップ(中心から枝を広げていく図)と似ていますが、概念マップは線にラベルをつける点が特徴です。「何と何がつながるか」に加えて、「どうつながるか」まで書きます。
図を見るときは、四角よりも線の上のひと言に注目してください。
研究が示したこと
研究者のネスビットとアデソペは2006年、概念マップを使った学習の実験を、複数まとめて分析しました。
対象は55件の研究で、合計5,818人です。小学4年生から大学生・社会人までが含まれ、理科・心理学・統計学・看護学などが題材でした。
比べた相手は、文章や箇条書きを読む、講義を聞くといった学び方です。これらと比べて、概念マップを使ったほうが、覚えた内容を思い出す問題で成績が高い傾向がありました。応用の力も測られていましたが、論文の要旨で効果が示されているのは、思い出す力(保持)のほうです。また、大きく出た研究も小さい研究もありました。
2018年には、同じ研究者らが分析をあらためて行いました。今度は142件の効果量(結果の差の大きさを表す数値)を集めた分析で、対象は合計11,814人です。概念マップ全体の効果は中程度でした(g=0.58。0.5前後が中程度の目安です)。
中身を分けると差がありました。
- 自分で概念マップを作る: g=0.72
- すでにできた概念マップを読む: g=0.43
どちらもプラスですが、自分で作るほうが効果は大きく出ました。2006年の分析でも、学習者が自分で作る場合や、既存の図を修正する場合の効果量は約0.8で、読むだけより大きいという同じ傾向でした。
「作る」と効果が大きい理由
論文が確かめたのは、効果の大きさの違いまでです。なぜ差が出るのかは、研究者の解釈にあたります。
概念マップを作るには、用語を選び、どれとどれが関係するかを決め、その関係を言葉にする必要があります。テキストを順に読んでいるときは曖昧なままだった部分も、線を引こうとすると、関係が言えるかどうかがはっきりします。
「ここ、ラベルが書けない」と気づいた場所が、理解の浅いところです。
さらに、1つの用語を他の用語との関係の中で捉え直すので、あとで思い出すときの手がかりも増えます。
研究の限界
- 比較相手は研究ごとに違います。同じ時間をかけた別の勉強法と比べた結果とは限りません
- 効果が大きく出る研究と小さい研究が混ざっています。自分の教材で同じ差が出るとは限りません
- 日本の資格試験や社内研修を対象にした検証は、見つかっていません
向いている場面
用語が多く、用語どうしの関係が問われる科目に向いています。
作るのに時間がかかるので、短い暗記項目には合いません。年号や英単語のような単純な語句の暗記なら、単語カードのように1問ずつ確認するほうが早く済みます。
今日から試す手順
テキストを1章読んだあとに、15〜20分で行います。
- 用語を10個前後に絞る(3分)。章の太字や、ノートの見出しから選びます。多すぎると線が絡まります
- 10個の中から中心の用語を決め、紙の真ん中に書く(1分)。その章で一番大きなテーマが目安です
- ほかの用語を紙に置き、関係のあるもの同士を線で結ぶ(5分)。ここでテキストを閉じて、思い出しながら書き進めます
- 線の上に、関係をひと言で書く(5分)。「の原因」「の一種」「を防ぐ」のように、動詞や短い言葉で。書けない線には印(赤丸など)をつけます
- テキストに戻って答え合わせ(3〜5分)。印をつけた場所と、つなぎ違いを直します
2周目は、白紙に同じマップを描き直してみます。何も見ずに思い出す練習になります。絵や図を使って覚える方法は描いて覚える方法にまとめています。
続けるコツ
最初は小さく始めて構いません。用語5つと線3本があれば、1回目としては十分です。
ラベルが書けなかった線は、その部分を自分に説明してみる方法で確かめ直せます。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 覚えたい用語を10個前後に絞り、それぞれ四角で囲む
- 用語と用語を線で結び、線の上に関係を表す短い言葉を書く
- ラベルが書けない線は、理解が浅い場所の目印として印をつける
- テキストを閉じて、マップだけを見て説明できるか確かめる
出典・参考
- Nesbit, J. C., & Adesope, O. O. (2006) Learning with concept and knowledge maps: A meta-analysis. Review of Educational Research, 76(3), 413-448.(小学4年から大学・社会人までを含む55件の研究、のべ5,818人の67個の効果量を統合。文章・箇条書き・講義などと比べ、概念マップの使用は記憶の保持を高めたと報告)sfu.ca
- Schroeder, N. L., Nesbit, J. C., Anguiano, C. J., & Adesope, O. O. (2018) Studying and constructing concept maps: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 30(2), 431-455.(142個の独立した効果量、のべ11,814人を統合。概念マップ全体でg=0.58、自分で作る場合g=0.72、既存の図を読む場合g=0.43と報告)doi.org
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。