順番のある暗記は「物語」でつなぐ——バラバラより6〜7倍思い出せた
メモを忘れて入ったスーパーで、最後の1品だけ思い出せない。順番のあるものは、一つずつ覚えても本番で飛んでしまう。単語のリストを使った古い実験では、項目を一本の物語につないだ人のほうが、あとでよく思い出せたと報告されています。記憶研究をもとに、今日から使える『物語でつなぐ』手順にまとめました。
メモを忘れて入ったスーパー。牛乳、電池、切手……と順に思い出せたのに、最後の1品だけがどうしても出てこない。
順番のあるものは、一つずつ覚えても本番でこうして飛びます。
これは記憶力の問題というより、覚え方の問題かもしれません。
バラバラの項目を「一つの物語」につないでおく。単語のリストを使った古い実験では、そうした人のほうが、あとでよく思い出せたと報告されています。
単語を「物語」にした人は、6〜7倍思い出せた
古い、でも有名な実験があります。バウアーとクラークが1969年に報告したものです。
参加者に、10個の名詞が並んだリストを覚えてもらいます。それを12リストぶん。
グループは2つに分かれます。
- 片方はふつうに読んで覚える。
- もう片方は、10個の単語を主役にした短い物語を、その場で作る。
物語づくりにかけた時間は、1リストにつき1〜2分。ふつうに覚えるグループにも、同じ時間を渡しました。使える時間は公平です。
覚えた直後は、どちらのグループもほぼ完璧に思い出せました。ここでは差がありません。
差が出たのは、12リストをすべて終えたあとです。「あのリストは?」と抜き打ちで聞くと——
物語を作ったグループは、平均93%を思い出せました。ふつうに覚えたグループは13%。6〜7倍の開きです。
なぜ、ここまで違うのか。バラバラの単語は、リスト同士が混ざり、どれがどのリストの言葉か分からなくなります。物語にすると、一本の筋が「しおり」になって、順にたぐり寄せられるのです。
ただし、これは古い実験で、覚えたのは単語のリストでした。人数も多くありません。
長い文章の理解や、抽象的な内容に同じ差が出るとは限りません。「順番のある具体的な項目」で効きやすい、と受け取るのが妥当です。
高齢の人でも、直後・1時間後・3日後まで効いた
もっと後の研究でも、同じ方向の結果が出ています。
ヒルらが1991年に、地域で暮らす高齢者71人を対象に調べました。
3つのグループに分けます。物語法を習うグループ、場所法を習うグループ、そして記憶術ではない別のトレーニングを受けるグループです。
覚える材料は、絵にしやすい具体的な名詞26個。思い出すテストは、覚えた直後・1時間後・3日後の3回です。
結果、物語法と場所法のグループは、どのタイミングでも、記憶術を習わなかったグループを上回りました。
下の図が、バラバラのまま覚える場合と、物語につなぐ場合の違いです。
上のようにバラバラだと崩れやすく、下のように一本の物語につなぐと、順にたどれます。
物語法と場所法は、似た仲間です。場所法は、覚えたいものを「よく知った場所」に置く。物語法は、「一つの話」につなぐ。どちらも、バラバラの情報に筋道を与えて、思い出しやすくします。
「順番もの」ほど、物語が効く
場所法との違いは、下ごしらえの要らなさです。
場所法は、頭の中に順路(メモリーパレス)を先に用意しておく必要があります。物語法は、その場で作れます。
だから、思いついた順に覚えたい「順番もの」と相性がいい。
たとえば、朝の出社前にやること。ゴミ出し・書類・弁当・鍵。この4つを一本の話にします。
「ゴミ袋を持った手で書類をつかみ、弁当を落として、鍵で拾い上げる」。玄関で一度その話を思い出せば、抜けが減ります。
買い物リストも同じです。牛乳・かさ・電池・切手。この4つも一本につなげます。
「牛乳をこぼした床にかさを差して、電池で照らし、切手を貼る」。一本の話にすれば、メモを忘れても浮かびます。
英単語のような「言葉そのもの」を覚えたいときは、音とイメージでつなぐキーワード法のほうが向くこともあります。物語法が得意なのは、意味のある項目を「順番に並べて」覚える場面です。
コツは、場面を大げさに、動きをつけて作ること。ふつうの光景より、変な光景のほうが強く残ります。
今日から試す「物語つなぎ」
道具はいりません。次に何かを順番に覚えるときから使えます。
- 覚えたい項目を、順番どおりに書き出す(5〜10個)。
- 最初の項目から次へと、一つの短い物語でつなぐ(1〜2分)。 全部を主役にします。
- 場面は大げさに、動きをつける。「棚から牛乳があふれる」など、変なほどよいです。
- 物語を頭の中で一度再生し、出てくる順に項目を声に出す。
- 翌日もう一度たどり、抜けた場所だけつなぎ直す。
思い出す練習そのものが記憶を強くします。翌日たどり直す一手は、思い出す練習や分散学習とも重なります。
一度に長い物語を作ろうとすると、途中で苦しくなります。まずは5個、短い話から。慣れてくると、10個でも一本につながります。
「覚えられない」の多くは、記憶力ではなく、バラバラに置いていることが原因です。学び方そのものを整える話は、学びの柱で続けています。
まずは今日の買い物リストひとつを、一本の物語にしてみてください。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 覚えたい項目を、順番どおりに書き出す(5〜10個)
- 最初の項目から次へと、一つの短い物語でつなぐ(1〜2分)
- 場面は大げさに、動きをつける(棚から牛乳があふれる等)
- 物語を頭の中で一度再生し、出てくる順に項目を言う
- 翌日もう一度たどり、抜けた場所だけつなぎ直す
出典・参考
- Bower, G. H. & Clark, M. C. (1969) Narrative stories as mediators for serial learning. Psychonomic Science, 14(4), 181-182 — 10個の名詞リストを12組覚える課題で、単語を物語につないだ群は最終テストで平均93%、ふつうに覚えた群は13%を思い出し、6〜7倍の差が出た(直後はどちらもほぼ完璧)link.springer.com
- Hill, R. D., Allen, C. & McWhorter, P. (1991) Stories as a mnemonic aid for older learners. Psychology and Aging, 6(3), 484-486 — 地域在住の高齢者71人で、物語法・場所法・別トレーニングの3群を比較。物語法と場所法の群は、覚えた直後・1時間後・3日後のいずれでも別トレーニング群を上回ったpubmed.ncbi.nlm.nih.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。