マーカー・読み返しは思ったより効かない——同じ時間なら「思い出す」に回す
Learning / Research Digest

マーカー・読み返しは思ったより効かない——同じ時間なら「思い出す」に回す

線を引き、何度も読み返す。勉強した手応えはあるのに、本番で出てこない。10の学習法を比べた研究では、この2つは効果の薄い部類でした。同じ時間を「思い出す」練習に回すと、定着は変わります。今日から時間の配分を変える手順をまとめました。

教科書にマーカーを引き、大事なところを何度も読み返す。ページはもう見慣れて、覚えた手応えがある。

なのに、テストや説明の場面になると、肝心のところが出てこない。

足りないのは、読んだ回数ではないのかもしれません。手応えと、思い出せることは、別ものです。

「よく使う方法」ほど、効きめは小さかった

心理学者のダンロスキーらが2013年に、代表的な10の学習法を大きく見直しました。

高く評価されたのは2つだけ。自分でテストする「練習テスト」と、日を分けて復習する「分散学習」です。

一方で、多くの人が頼りにしている線引き・読み返し・語呂合わせは、いちばん低い評価の部類に入りました。

数字でも同じ傾向が出ています。2021年に、242の研究・約17万人分をまとめた分析では、効果が大きいのは分散学習、次いで練習テストでした。読み返しや線引きは、その半分ほどにとどまっています。

ただし、線引きや読み返しも「効果ゼロ」ではありません。同じ分析は、それらも教育で目安とされる水準はわずかに超えた、と述べています。

無駄なのではなく、「かけた時間のわりに、戻りが小さい」。ここが正確なところです。

対象の多くは学生や実験室での課題でした。効き方には個人差があり、断定ではなく傾向として受け取るのが妥当です。

なぜ「効いた気」がするのか

2つの勉強法を、やった感と実際に残る量で比べた図。左は「読み返す・線を引く」で、やった感を示す棒は長いが、あとで思い出せる量を示す棒は短い。右は「思い出す・自己テスト」で、やった感の棒は短めだが、あとで思い出せる量の棒は長い。手応えが高い方法ほど、実際には残っていないことを示している
図1: 手応えが高い方法ほど、あとに残らないことがある(当サイト作成)

読み返すと、文字が見慣れて、すらすら読めるようになります。この「すらすら感」を、脳は「もう覚えた」と取り違えます。

でも、すらすら読めることと、何も見ずに思い出せることは違います。見慣れただけの記憶は、本を閉じたとたんに出てきません。

自分でテストするのは、逆です。思い出そうとすると詰まるので、手応えは下がります。ところが、その「詰まり」こそが記憶を強くします。

手応えが高い方法ほど、実は残っていない。ここがいちばんの落とし穴です。

時間の配分を、少しだけ変える

やめる必要はありません。読む時間の一部を、思い出す時間に回すだけです。

  1. 教材を1回読んだら、次は本を閉じて、要点を自分の言葉で書き出す
  2. 覚えたい項目は「見て確認」より先に、隠して自分で答える
  3. マーカーは引くなら1ページ2〜3か所まで。引いた所を、あとで自己テストの問題にする
  4. 復習は1回にまとめず、日を分けて短く繰り返す

書き出す練習のやり方は本を閉じて思い出す勉強法に、復習の間隔のあけ方は間隔をあけた復習にまとめました。

理解があやしい所は、「なぜそうなるのか」を声に出して説明すると、抜けが見つかります。これは「なぜ?」で理解を深める学び方が参考になります。

「もう覚えた」を、一度うたがう

最後に、ひとつだけ習慣にしてほしいことがあります。

「もう覚えた」と感じたら、そこで止めずに、一度だけ自分にテストしてみる。

すらすら読めた手応えは、見慣れただけかもしれません。思い出せて初めて、それは使える記憶になります。

学び方そのものを育てる話は、学びの柱でもまとめています。

まずは今日の復習を、読み返し半分・思い出す半分にしてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 教材を1回読んだら、次は本を閉じて要点を自分の言葉で書き出す
  2. 覚えたい項目は「見て確認」より先に、隠して自分で答える
  3. マーカーは1ページ2〜3か所まで。引いた所を後で自己テストの問題にする
  4. 復習は1回にまとめず、日を分けて短く繰り返す
  5. 「もう覚えた」と感じたら、止めずに一度だけ自分にテストする

出典・参考

  1. Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013) Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4-58.psychologicalscience.org
  2. Donoghue, G. M., & Hattie, J. A. C. (2021) A Meta-Analysis of Ten Learning Techniques. Frontiers in Education, 6, 581216.frontiersin.org

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。