運動で睡眠の質は上がる?——日中に動かし、就寝直前の激しい運動は控える
Health / Research Digest

運動で睡眠の質は上がる?——日中に動かし、就寝直前の激しい運動は控える

頭はくたくたなのに、体は疲れていないから寝つけない。そんなデスクワークの夜に手がかりになるのが、日中の運動です。66件の研究をまとめた解析では、体を動かすと寝つきや眠りの効率が上向く傾向が見られました。ただし就寝直前の激しい運動は逆効果になりうる点まで、無理なく始める手順とあわせてまとめました。

パソコンに向かう1日。頭はくたくたなのに、布団に入っても目がさえている。

体はほとんど動かしていないから、休む準備が整わない。そんな夜があります。

寝つけないのは、意志や体質のせいとは限りません。日中の「体の動かし方」が、夜の眠りに関わっています。

体を動かすと、夜の睡眠にプラスの傾向

まず、運動と睡眠の関係を広く調べた研究があります。

Kredlowらは2015年、それまでの66件の研究をまとめて解析しました(メタ分析)。掲載誌は Journal of Behavioral Medicine。

分かったのは、こういう傾向です。1回きりの運動でも、続けて行う運動でも、睡眠にプラスの効果が見られました。

具体的には、寝つくまでの時間・総睡眠時間・眠りの効率などが、運動をした条件でよくなっていました。

ただし、効果の多くは「小さめ」です。誰にでも同じだけ効くわけではなく、年齢・運動の種類・時間帯などで差が出たとも報告されています。

下の図が、動かす時間帯と夜の眠りやすさの関係です。

1日の時間軸に沿って、運動する時刻と夜の眠りやすさの関係を示した図。朝から夜・就寝までの帯の上で、日中〜夕方の時間帯が緑で強調され「早歩き・階段・軽い運動で体を動かす」と示される。就寝1時間以内の区間はオレンジで「激しい運動を避ける」と注意される。下段では、日中に動かした夜は寝つきやすく深く眠れる傾向、就寝直前に激しく動いた夜は寝つきが遅れることもある、と対比している
図1: 動かすなら日中〜夕方、就寝直前は避ける(当サイト作成)

ポイントは2つ。日中〜夕方の運動は夜の味方になりやすいこと。そして就寝の直前だけは、扱いが違うことです。

就寝の直前だけは、激しい運動を控える

「夜に運動すると眠れなくなる」と聞いたことがあるかもしれません。

これを確かめたのが、Stutzらの2019年の研究です(23件の研究をまとめたメタ分析・掲載誌 Sports Medicine)。

結論は、むしろ逆でした。夕方や夜の運動そのものは、睡眠を悪くするとは言えない、という向きです。

例外は一つ。激しい運動を、就寝の1時間以内に終えた場合です。このときは寝つきや総睡眠時間、眠りの効率が悪くなることがある、と報告されています。

つまり避けたいのは「夜の運動」ではなく、「寝る直前の、息が上がる運動」です。

デスクワークの日に、どう動かすか

とはいえ、平日にまとまった運動の時間をとるのは難しいものです。

大がかりなトレーニングは要りません。日中〜夕方に、体が少し温まる程度に動かせば十分です。

  • 通勤や外出で、一駅ぶん早歩きする
  • 昼休みや夕方に、階段を使う・少し散歩する
  • 座りっぱなしの合間に、立って動く

こまめに立って歩くだけでも、座り続ける時間は削れます。合間の動きは座りっぱなしを2分の歩きで区切るに、歩数の目安は1日1万歩は絶対条件じゃないにまとめました。

疲れて気力が落ちた日は、数分の運動が気分を押し上げることもあります。くわしくは数分の運動で気分と活力が上向くを参考にしてください。

今日から試す、3つの手順

  1. 日中か夕方に、10〜30分ほど体を動かす。 早歩き・階段・軽い運動など、少し息が弾む程度で十分
  2. 時間がとれない日は、こまめに立って歩く。 まとめて運動できなくても、動いた総量は積み上がる
  3. 就寝の1時間前より後は、激しい運動を控える。 軽いストレッチや入浴で、体をゆるめる時間にする

まずは今日、夕方に10分だけ歩くところから始めてください。眠りの変化は、数日〜数週間かけて確かめます。

効き方には個人差がある

最後に、大切な注意を一つ。

ここで紹介したのは、多くの人をまとめて見たときの「平均の傾向」です。効き方には個人差があり、運動だけですべての眠りの悩みが解決するわけではありません。

眠れない状態が何週間も続く、日中の生活に支障が出る。そんなときは、自己流で抱えず医療機関へ相談してください。運動は、あくまで睡眠を支える土台の一つです。

眠りを整える手がかりは、ほかにもあります。起きる・寝る時刻をそろえる話は睡眠の規則性に、夜の光の落とし方は寝る前の光を暗めにするにまとめました。

体を整える工夫は健康の柱でもまとめています。

今夜はまず、明るいうちに少しだけ体を動かすことから始めてみてください。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. 日中か夕方に、早歩き・階段・軽い運動などで10〜30分ほど体を動かす
  2. 運動の時間がとれない日は、こまめに立って歩く回数を増やす
  3. 就寝の1時間前より後は、息が上がる激しい運動を控える
  4. 眠れない状態が何週間も続くときは、自己流で抱えず医療機関へ相談する

出典・参考

  1. Kredlow, M. A., Capozzoli, M. C., Hearon, B. A., Calkins, A. W., & Otto, M. W. (2015) The effects of physical activity on sleep: a meta-analytic review. Journal of Behavioral Medicine, 38(3), 427-449.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Stutz, J., Eiholzer, R., & Spengler, C. M. (2019) Effects of Evening Exercise on Sleep in Healthy Participants: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine, 49(2), 269-287.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。