読み返して「わかったつもり」——スラスラ読めても、覚えたとは限らない
Learning / Research Digest

読み返して「わかったつもり」——スラスラ読めても、覚えたとは限らない

教科書にマーカーを引き、何度も読み返す。ページはスラスラ読めるのに、いざとなると出てこない。その手応えは記憶ではなく、見慣れた感覚かもしれません。「わかったつもり」の正体と、それを見破る思い出す練習を、心理学の研究をもとにまとめました。

教科書やテキストにマーカーを引いて、何度も読み返す。ページはもう見慣れて、スラスラ読める。

「これはさすがに頭に入った」。そう思って本を閉じる。

なのに、テストや説明の場面になると、肝心のところが出てこない。

そのスラスラ感は、覚えた証拠ではないのかもしれません。

スラスラ読める感覚は、記憶とは別ものだった

心理学者のコリアットとビョークが2005年に、記憶の「予想」と「実際」のズレを調べました。

大学生に単語のペアを覚えてもらい、1つずつ「これは後で思い出せそうか」を予想させます。そのあと、本当に思い出せるかをテストしました。

参加者は各実験で16〜24人と少なく、覚える材料も日常の文章ではなく単語ペアです。それでも、はっきりした傾向が出ました。

答えが目の前にある勉強中は、「思い出せそう」の予想が高く出る。でも本番のテストでは、その予想ほど思い出せない。

2人はこれを「できるという錯覚(illusion of competence)」と呼びました。

なぜズレるのか。勉強中は、問題と答えが両方そろって目の前にあります。

答えが見えている状態での「わかる」を、答えが無い本番でも通用すると勘違いする。ここに落とし穴があります。

くり返し読むと、文章はなめらかに処理できるようになります。この「スラスラ感」を、私たちは「理解できた」と取り違えやすい。

目の前の文章をなめらかに読めることと、あとで何も見ずに思い出せることは、別ものでした。

この取り違えは、勉強のやり方にそのまま出ます。

カーピキらが2009年に、大学生177人へ「どんな勉強法を使うか」を尋ねました。

いちばん多かったのは「くり返し読む(再読)」で、84%。一方、思い出す練習(自己テスト)を挙げた人は11%でした。

再読を「1番の勉強法」に選んだ人も、55%にのぼります。

大学生177人が自由回答で挙げた勉強法の割合を比べた棒グラフ。くり返し読む再読を挙げた人は84%で最も多いのに、記憶に効く思い出す練習(自己テスト)を挙げた人はわずか11%だった。人気の高い勉強法ほど、あとの記憶には残りにくいことを示している
図1: 人気の勉強法ほど、記憶に残りにくかった(当サイト作成)

多くの人が集まるのは、スラスラ読めて手応えのある再読です。記憶に効く自己テストは、ほとんど選ばれていません。

別の実験では、このズレが数字ではっきり出ています。

学生に外国語の単語を覚えてもらい、「1週間後に何割思い出せるか」を予想させました。

予想はどのやり方でもほぼ同じ、約50%。ところが実際は、思い出す練習をくり返した人が約80%、一度思い出して終えた人は約35%でした。

自分ではどちらも同じくらいの手応えなのに、結果は倍以上ちがう。手応えは、あてになりませんでした。

資格試験も仕事の勉強も、同じワナにはまる

資格の勉強、仕事で使う知識のインプット、学生のテスト対策。

どれも「テキストを何度も読む」が中心になりがちです。

読み返すほどページは見慣れて、進んだ気がする。マーカーで色がついた箇所は、なおさら「もう大丈夫」に見えます。

でも、色や見慣れた感じは、思い出せることを保証しません。

手応えがいちばん出るやり方が、記憶にはいちばん効かない。ここが、この話のやっかいなところです。

再読やマーカーが「思ったより効かない」理由は、マーカー・読み返しは効果が薄いでも比べています。

手応えを、記憶に変える手順

やることは1つ。「読む」時間の一部を、「本を閉じて思い出す」時間に回すだけです。

  1. ひと区切り読んだら、本を閉じる。 そのまま白紙に、思い出せる限り書き出します(3〜5分)。
  2. 書き終えてから、本を開く。 抜けていた所だけ確認し、赤で書き足します。
  3. 同じ範囲を、数日おいてもう一度。 間隔をあけて思い出すと、定着が進みます。
  4. マーカーは、後で自分への問題にする。 引いた所を隠して、答えられるか試します。
  5. 「もう覚えた」と感じたら、そこで一度テストする。 その手応えこそ、確かめどきです。

「思い出す」を軸にした勉強法は、本を閉じて思い出す勉強法にまとめました。数日おきに復習する間隔のあけ方は、間隔をあけた復習が参考になります。

まずは今日、テキストをひと区切り読んだところで本を閉じてみてください。

何も見ずに、たった今読んだ内容を口に出す。出てこない所が、まだ覚えていない所です。

その一手間が、「わかったつもり」を「思い出せる」に変えていきます。

学び方そのものを鍛える発想は、学びの柱でも扱っています。

Try Today今日からやるチェックリスト

  1. ひと区切り読んだら本を閉じ、白紙に思い出せる限り書き出す(3〜5分)
  2. 書き終えてから本を開き、抜けていた所だけ赤で書き足す
  3. 同じ範囲を数日おいて、もう一度何も見ずに思い出す
  4. マーカーを引いた所は隠して、後で自分への問題にする
  5. 「もう覚えた」と感じたら、そこで止めず一度テストする

出典・参考

  1. Koriat, A., & Bjork, R. A. (2005) Illusions of Competence in Monitoring One's Knowledge During Study. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 31(2), 187-194.bjorklab.psych.ucla.edu
  2. Karpicke, J. D., Butler, A. C., & Roediger, H. L. (2009) Metacognitive strategies in student learning: Do students practise retrieval when they study on their own? Memory, 17(4), 471-479.learninglab.psych.purdue.edu

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。