音読すると覚えやすい——声に出した項目だけ、あとで思い出せた
資格試験の用語や英単語を、黙って何度も読んでも本番で出てこない。同じ内容でも、声に出して読んだ項目のほうがあとで思い出しやすいという記憶研究があります。8つの実験と、声を出す効果を分解した研究をもとに、単語帳や音読での覚え方を手順にまとめました。
資格試験の用語や、英単語。テキストを黙って、何度も目でなぞる。
ページの見た目は、もう頭にあります。なのに本番になると、その言葉が出てこない。
足りないのは、読んだ回数ではないのかもしれません。
同じ内容でも、声に出して読んだ項目のほうが、あとで思い出しやすい。これを産出効果(プロダクション効果)と呼びます。
声に出した項目だけ、よく思い出せた
産出効果とは、勉強中に声に出して読んだ項目が、黙って読んだ項目より思い出しやすくなる現象です。
これをくわしく調べたのが、マクラウドらの研究です(2010年、記憶の専門誌に発表)。
同じ人の中で、リストの一部の単語だけを声に出し、残りは黙って読んでもらう。この形で、8つの実験を重ねました。
結果は、声に出した単語のほうがよく覚えていた、というものです。あとで「見たかどうか」を答えるテストで、はっきり差が出ました。
面白いのは、効果が出た条件です。同じリストの中で、一部だけを声に出したときに強く出ました。
全部を声に出すと、どれも横並びになり、差は生まれにくい。周りが黙読だからこそ、声に出した項目が浮き上がります。
ただし、これは実験室で単語を使った課題です。長い文章や、覚える内容の種類によっては、同じように効くとは限りません。
下の図が、勉強中とテストでの、その差です。
見てのとおり、声に出した項目だけが、周りから浮き上がって記憶に残っています。
自分の声で読むと、なぜ効くのか
手がかりが、同じ研究チームの別の実験にあります。
フォリンとマクラウドは2018年、声を出す効果を4つの条件に分けて比べました。
自分で声に出して読む。黙って読む。人が読むのを聞く。そして、前もって録音した自分の声を聞く。この4つです。
思い出せた量は、きれいな坂道になりました。いちばん多いのは、自分で声に出したとき。自分の声を聞くのは、その次でした。
ここから見えるのは、声に出す効果が2つの部分でできていることです。口を動かすこと。そして、自分だけの声を自分の耳で聞くことです。
黙読には、どちらもありません。だから記憶の中で、目印が付きにくいのです。
ただし、これは1つの実験での結果です。ここも「そういう傾向がある」と受け取るのが妥当です。
英単語や資格の用語で試す
使いどころは、名前や用語を覚える場面です。
学生なら、単語帳の英単語。社会人なら、資格試験の専門用語。黙読で何度も回すより、大事な項目を選んで声に出します。
コツは、全部を音読しないこと。全部だと、どれも同じで浮き上がりません。覚えにくいものだけ声に出し、他は黙読のままにします。
似た勉強法と、混同しないでください。答えの一部を自分でひねり出す自分で作ると覚える学び方とは別ものです。あちらは自分で答えを作る。こちらは答えを声に出す。動かすのは頭ではなく口です。
本を閉じて丸ごと思い出す本を閉じて思い出す勉強法や、書いて覚える手で書くと記憶に残るも、同じ「産み出して覚える」仲間です。
今日から試す「声に出す一手」
道具はいりません。いつもの教材のまま、読み方を変えるだけです。
- 覚えたい項目のうち、大事なものを2〜3個選ぶ
- その項目だけ、声に出して読む(小声や口の動きだけでもよい)
- 残りの項目は、いつもどおり黙って読む
- 自分の声を、自分の耳で聞くことを意識する
- 数日おいて、同じ項目をまた声に出して読み直す
1項目は数秒で足ります。電車やカフェなら、口をそっと動かすだけでも入口になります。
学び方そのものを育てる話は、学びの柱でもまとめています。
まずは今日覚えたい数項目を、声に出して読んでみてください。周りの黙読の中で、そこだけが記憶に残りやすくなります。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 覚えたい項目のうち、大事なものを2〜3個選ぶ
- 選んだ項目だけ声に出して読む(小声や口の動きだけでもよい)
- 残りの項目は、いつもどおり黙って読む
- 自分の声を自分の耳で聞くことを意識する
- 数日おいて、同じ項目をまた声に出して読み直す
出典・参考
- MacLeod, C. M., Gopie, N., Hourihan, K. L., Neary, K. R., & Ozubko, J. D. (2010) The production effect: Delineation of a phenomenon. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 36(3), 671-685.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Forrin, N. D., & MacLeod, C. M. (2018) This time it's personal: the memory benefit of hearing oneself. Memory, 26(4), 574-579.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。