学習スタイルに合わせて学ぶ説に裏づけはない——「見て覚える型」の思い込みを手放す
「自分は目で見て覚えるタイプだから」と、勉強法を選んでいませんか。でも、好みのやり方に合わせて学んでも成績は変わらなかった、という研究が続いています。タイプ探しに時間を使う前に、多くの人に効くと分かっている学び方へ切り替える手順をまとめました。
「自分は目で見て覚えるタイプだから」。
そう決めて、参考書は図の多いものを選び、音声教材は後回しにする。そんな勉強法の選び方をしていませんか。
でも、好みのやり方に合わせて学んでも成績は変わらなかった、という研究が続いています。
タイプ探しは、実は遠回りかもしれません。
好みに合わせて教えても、成績は変わらなかった
まず、はっきりした実験から見ます。
Rogowskyらは2015年、大学を卒業した成人121人に協力してもらいました。年齢は25〜40歳、平均30.6歳です。
最初に、一人ひとりの学習スタイルの好みを標準化された検査で測りました。音声で聞くのが得意な聴覚型か、文字を読むのが得意な視覚型かです。
そのうえで、好みと教え方を合わせる効果を試す部分では、61人を無作為に2つの群に分けました。片方はオーディオブック(音声)、もう片方は電子テキスト(文字)で、同じ1冊の内容を学びます。
学び終えたあと、直後と2週間後に、同じ筆記テストで理解度を測りました。
結果はこうです。学習スタイルの好みと教え方(音声か文字か)の間に、統計的に意味のある関係は出ませんでした。直後のテストでも、2週間後でも同じでした。
「聴覚型の人を音声で教える」ことに、成績を押し上げる力は見えなかったのです。
ただし条件は限られます。大学卒の成人・1冊のノンフィクション・音声と文字の2形式に絞った実験です。ここから「あらゆる学びに当てはまる」とまでは言えません。
この結果を飲み込むには、通説を分けて見るのが早いです。下の図が、その分け方です。
見てのとおり、あやしいのは通説の一部だけです。好みや得意の差は本当。ないのは「合わせると伸びる」の証拠です。
「好み」はある。ないのは「合わせると伸びる」証拠
なぜ、1つの実験からここまで言えるのか。背景に大きな総説があります。
4人の認知心理学者(Pashlerら)が2008年、学習スタイルに沿った指導が科学的な根拠で支えられるかを検討しました。掲載誌は Psychological Science in the Public Interest です。
彼らはまず、2つのことを認めています。人は「どう教わりたいか」の好みを持つこと。そして、得意な情報の種類に個人差があること。
問題はその先です。
「好みに合わせて教えたときだけ成績が上がる」という関係を、きちんと検証できた研究はごくわずかでした。しかも、適切に調べたうちのいくつかは、通説に反する結果でした。
そこで総説はこう結論します。学習スタイルの評価を一般の教育に組み込むだけの、十分な証拠はない、と。限られた時間やお金は、強い根拠のある方法へ振り向けるほうがよい、とも述べています。
大事なのはここです。「証拠がない」は「うそだと証明された」とは違います。著者自身、すべての説が検証され尽くしたわけではない、とも断っています。
いま言えるのは1つ。タイプ分けにかける手間に、見返りはまだ確認されていない、ということです。
では、その時間を何に使うか
タイプ探しをやめた分の時間は、効くと分かっている方法に回せます。
一つは、本を閉じて思い出す練習です。読み返すより、思い出した回数が記憶を決めます(思い出す練習)。
もう一つは、復習の間隔をあけること。一度に詰め込むより、日を分けたほうが残ります(分散学習)。
そして、方法は「自分のタイプ」より「学ぶ内容」で選ぶこと。地図は図で、手順は声に出して。言葉に図を添えると理解が上がる話は二重符号化にまとめました。
どれも、タイプに関係なく多くの人に効く土台です。ほかの効く・効かない学習法は効果的な学習法に一覧があります。
今日からできる、タイプ探しの手放し方
やめることと、始めることを1つずつ。
- 「自分は◯◯型」を前提に教材を選ぶのを、いったんやめる。 好みで避けていた形式も候補に戻す
- 教材を閉じて、思い出せるか自分にテストする。 白紙に要点を書き出すだけ
- 復習は日を分ける。 同じ30分でも、3日に分けると残りやすい
- 内容に合う形を選ぶ。 手順は声に出す、図や地図は絵のまま覚える
まずは次に机に向かうとき、「何型か」を考えるのをやめてみてください。その5秒を、思い出す練習の1問目に使うほうが確かです。
学び方を仕組みで選ぶ考え方は学び方の歩き方にまとめています。
Try Today今日からやるチェックリスト
- 「自分は◯◯型」を前提に教材や勉強法を選ぶのを、いったんやめる
- 教材を閉じて、思い出せるか自分にテストする(白紙に要点を書き出す)
- 復習は一度にまとめず、日を分けて間隔をあける
- 方法は自分のタイプより、学ぶ内容に合わせて選ぶ(手順は声に、図は絵で)
出典・参考
- Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2008) Learning Styles: Concepts and Evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105-119.bjorklab.psych.ucla.edu
- Rogowsky, B. A., Calhoun, B. M., & Tallal, P. (2015) Matching Learning Style to Instructional Method: Effects on Comprehension. Journal of Educational Psychology, 107(1), 64-78.apa.org
この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。